「ご了承ください」は、相手から了承や理解、許可を得るために、ビジネスのシーンでよく使われる言葉です。一見、丁寧で使いやすい言葉のようですが、実は目上の方に対して使うものとしてはふさわしくない「要注意ワード」の1つです。本来の意味を正しく理解し、適切な言葉遣いを身につけましょう。
【目次】
- 押さえておきたい「ご了承ください」の基礎知識
- 「ご了承ください」を丁寧な印象に・・・便利な「例文」5選
- よく似た「ご承知おきください」との違いは?
- 「ご了承ください」と同じ意味で使えるそのほかの「言い換え表現」
押さえておきたい「ご了承ください」の基礎知識
■「ご了承ください」の意味は?
『日本国語大辞典』によれば、「了承」は、【事情をくんで納得すること。事情をくんで承知すること。のみこむこと。承諾】とあります。
「ご了承ください」は、「了承」に丁寧語の「ご」、相手に何かを要望・懇願する意を表す丁寧語の「ください」を組み合わせた言葉です。
つまり「ご了承ください」は、これからはじまる案件や申し出に対して、「事情をくんで理解・納得してください」という意味を表す、丁寧なフレーズということになります。
■失礼に当たるケースはある? 「ご了承ください」使用上の注意点
上記の通り、「ご了承ください」は、丁寧な言い回しではありますが、同時に、これからはじまる要件・提案について、「相手に選択肢を与えることなく」、「納得してもらうことを確認する」ためのフレーズだという点が、今回の注目ポイントです。
「すでに決まった方針や案件」を、一方的に「受け入れてくださいね」と、目上の方に申し出るのは、とても失礼な行為。上司や取引先の方に使うのも控えましょう。
どうしても「事前にご理解ください」という意志を伝えたい際には、後述する「例文」のような言い回しか、「ご了承いただけますか?」といった「依頼」のかたちで使用するのがよいでしょう。ただし、よく目にする「ご了承いただけますでしょうか」は、「ます」と「です」が重複する二重敬語のため、誤りです。
「ご了承ください」を丁寧な印象に・・・便利な「例文」5選
目上の人に対し、こちらからの報告や希望、提案をする場合には、尊敬語や謙譲語を交えることで、相手への敬意を表することができます。
「〜いただきますよう」は、応用が利くうえに、やわらかな印象を与えられる便利な言い回しです。ぜひ覚えておきましょう。
■1:「どうぞご了承くださいますようお願いいたします」
■2:「ご了承いただければ幸いでございます」
■3:「ご理解ご了承を賜りますようお願い申し上げます」
■4:「ご了承の上、ご検討くださいませ」
■5:「確約はできかねますことご了承くださいませ」
いかがですか? 相手に「検討の余地」や「選択肢」を提示するニュアンスになっていることがポイントです。
よく似た「ご承知おきください」との違いは?
「ご承知おきください」は、「前もって事情を知っておいてください」という意味を表す言葉です。「了承」が「事情をくんで納得すること」であるのに対し、「承知」は「承って知ること」。「納得」までは求めていないという、微妙なニュアンスの違いがあります。
また、「承知」という言葉は本来、謙譲語としての意味がありますので、「ご承知おきください」も、目上の人に対しては使えません。
「ご了承ください」と同じ意味で使えるそのほかの「言い換え表現」
■1:「ご承諾ください」
■2:「ご容赦ください」
■3:「ご理解ください」
■1の「ご承諾ください」は、自分の要求を受け入れてもらいたい場合に使われる言葉です。こちらも目上の人に使う際は、上記の「例文」のように、「ご承諾くださいますようお願い申し上げます」や「ご承諾いただけましたら幸いです」などと使うのが適切です。
■2の「ご容赦ください」は、自分の非を認め、相手に対する謝罪の意味を込めて、許しを乞う気持ちを表す際に使われる言葉です。
また、■3の「ご理解ください」は、相手の理解を求めるときに使う言葉で、「ご了承ください」とほとんど同じ意味になります。代用表現として活用できますが、やはり目上の人に対して利用するのは控えましょう。
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いかがでしたか? 日常、よく使われる「ご了承ください」は、これからはじまる要件・提案について、「相手に選択肢を与えることなく」、「納得してもらうことを確認する」ためのフレーズだということがわかりました。目上の方に使えないのも納得ですね! 丁寧な言い回しとして、 「ご了承いただきますようお願い申し上げます」という表現を、ぜひ覚えておきましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館) :