服を着慣れると、このジャケットにはアレ、あのコートにはコレ、ブランドで選ぶならソレと、自分流の「ベーシック」を構築しがちである。確かに長年の経験から生み出したノウハウは大事だが、一方で、そこに安住していいのか、という疑念も生まれる。そこで、その進化を試みるのが本特集だ。お洒落の可能性を開く、その一助となれば幸いである。
ネイビージャケットを味方にし、スタイルの変化を楽しむ
定義されたフォーマットにさえ則れば、シルエットや素材の大きな変化やディテールの小さな変化を受け止めてくれる。それがネイビージャケットだ。普通のスタイリングでも様になるが、時には冒険する心も必要だ。
■1:着て、見て、この紺ジャケットが長く愛される理由がわかる
「食わず嫌い」こそ、最大の悪である。プリーツでお馴染みのブランドだが、着て納得とはこのこと。ビジュアルのためのデザインではないことがよくわかる。ポリエステルの編み生地がもたらすストレッチ性と軽量感が心地よく、プリーツと相まって自然と美しいシルエットを形成。ブランドの定番と聞くが、なるほど、長く愛されている理由がわかる。
■2:端正な佇まいのダブルブレステッド
日本人のもつ奥深くて、はかり知れない美を追求する、2019年にローンチした「ユーゲン」による一着。デザイナー小山雅人氏が佇まいを大事にし、豊富なドレス知識を武器に日本人に似合うよう素材・パターン・縫製にこだわる。数奇者たちが集う名店「レショップ」別注というダブルブレストのジャケットは、ボタンを留めても外してもキマる絶妙なさじ加減のシルエット。今ならボタンを外して、ばさっと羽織るような感覚で着こなしたい。
■3:袖を通すと実感する細部のアップデート
定番として語られることの多いイタリアンブランドも進化を繰り返している。「ラルディーニ」のジャケットは、季節素材のシアサッカーを1色使いにして、遠目に無地、近づくとシボの凹凸がわかる奥ゆかしい仕立て。パッドや副資材、見返しの構成も簡略化している。カーゴパンツとシルクスカーフを投入し、嫌味のない色気を演出。
■4:トラッドの王道こそ進化を繰り返す
メジャーブランドの小さな変化もまた、進化への一歩だ。アメリカントラッドの代名詞的存在である「ブルックス ブラザーズ」の、ブランドを象徴するボクシーな3Bというプロトコルはそのままに、パッドや副資材を薄くした非構築的なモデル「ブルックスクラウド」の仕立て。また、オーストラリア産の上質ウール、ミラクルクリンプにより軽やかさが増幅。ブルーグラデがいっそう爽やかに見える。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2022年春夏号より
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- PHOTO :
- 金谷章平
- STYLIST :
- 菊池陽之介
- HAIR MAKE :
- 竹井 温(&'s management)
- MODEL :
- Calvin城、Soche
- WRITING :
- 髙村将司
- EDIT :
- 安部 毅(MEN'S Precious)