ディーゼルエンジン搭載の「V220d」には、メルセデス・ベンツの考える快適性と高級感、そして走りの流儀があった。パッセンジャーだけでなくドライバーまでもがエレガントに過ごせる大きな移動空間の、魅力を探ってみた。

サルーンを得意とするブランドの作るミニバンとは

全幅と全高共に1,930mmと、まさに真四角のボックススタイル。見切りの良さがドライバーのストレスを減らしてくれる。
全幅と全高共に1,930mmと、まさに真四角のボックススタイル。見切りの良さがドライバーのストレスを減らしてくれる。
大柄で頑丈そうなボディは箱形ということもあって押し出し感の強い迫力あるエクステリア。
大柄で頑丈そうなボディは箱形ということもあって押し出し感の強い迫力あるエクステリア。
フロントに対し、ボクシィなリアはスッキリとしたデザイン。見るからに実用性の高さが伝わるエクステリア。
フロントに対し、ボクシィなリアはスッキリとしたデザイン。見るからに実用性の高さが伝わるエクステリア。

「脇道にそれる」。話題や方針が、本来の趣旨や目的とは違ったものに逸れることであり、、いい意味として使われることは、ほぼない。しかし以前、ある紀行文の中に「旅の醍醐味は脇道にこそあり」という一文を目にした。以来、知らない町でのドライブや散策では、まずはメインロードを楽しみ、その後にじっくりとサイドロードへと忍び込み、表向きの顔にはない、素顔ならではの息吹や空気感を感じ取ることを楽しみにしている。ときには脇道のみ、などというイレギュラーもあり、それもまた一興、とも思う。

実はメルセデス初のマルチパーパス・ビークル(MPV/ミニバンやSUVなどの多目的車)として初代Vクラスが登場し、1998年に日本へと導入された際に試したとき、この脇道独特の印象を抱いたことがある。そして現在もその感覚は継続し、同時にこの脇道がメルセデス本来の魅力を、彩り豊かな物にしていることも分かってきた。

メルセデスにとって本流と言えばサルーンであろう。快適な走りや使い勝手の良さ、そして機動性の高さや極上の居住性など、バランスの取れた高い総合力は、メルセデスのサルーンを選択する最大の理由になる。そのサルーンというメインロードを知った上で、脇を固めるSUVやミニバンとして分類されるVクラスに乗ってみる。すると、さらにメルセデスの奥深さや魅力に気が付くのである。

バス感覚のクルマなのに運転が楽しい!

メルセデスの先進的な安全装備や本革シートが標準装備される。安定感あるサルーン感覚でのドライブが可能だ。WLTCモード燃費は11.4km/lと良好。
メルセデスの先進的な安全装備や本革シートが標準装備される。安定感あるサルーン感覚でのドライブが可能だ。WLTCモード燃費は11.4km/lと良好。
セパレートタイプの2列目シート。電動リクライニングやヒーター、ベンチレーション機能が備わるモダンでエレガントな空間が出現。
セパレートタイプの2列目シート。電動リクライニングやヒーター、ベンチレーション機能が備わるモダンでエレガントな空間が出現。
3列目シートは折りたたみ式の3分割3人掛けシート。2列目シートを取り外し、前方に移動すると簡易ベッドとしても使えるなど、多彩なシートレイアウト。
3列目シートは折りたたみ式の3分割3人掛けシート。2列目シートを取り外し、前方に移動すると簡易ベッドとしても使えるなど、多彩なシートレイアウト。

なかでも“多人数乗車・大量積載”を得意とするVクラスは、適材適所的な使い方では光り輝く。ボクシィなボディによってデッドスペースの少ない居住空間や荷室を確保して実現した実用性において他をリードしている。とくに全長が4905mmのノーマルボディよりも245mm長い、ロングボディモデル(ホイールベースは同じ)は、現状においてトップ・オブ・ザ・ミニバンと評価していいだろう。実はVクラスには他に、全長とホイールベースともに230mm長い「エクストラロング」もあるが、注文生産となる。

さらに7人乗りの3列シートが装備されたキャビンに乗り込んでみれば、メルセデスがサルーンで培ってきた上質感を十分に感じ取ることが出来る。とくにセパレートタイプの2列目シートには電動リクライニングやヒーター、ベンチレーション機能が備わり、豊潤ともいえる移動空間を実現している。このようにVクラスの主役はドライバー以外の乗員問いといえるのだが、実はドライバーにとっても有利なことがある。

まず、大柄なボディでありながら、小回り性能に優れていること。メルセデスの得意技である切れ角の大きな前輪によって最小回転半径が5.6mと、FRレイアウトによる利点でもあるが、大きな見た目にもかかわらず思いのほか扱いが楽であることは、走り出してすぐに理解できる。市街地から高速へと乗り入れれば、メルセデス流の安定感とフラット感を全身で感じることが出来る。目線が高く、バス感覚のクルマで“運転が楽しい”と素直に思えるレベルであり、驚くのだ。

確かにメルセデスの王道ではないかもしれないが、すべての点でメルセデスのスタンダードを確保している。ひょっとするとこんな1台があるとメインロードから、躊躇なくサイドロードへと、全方位で味わい尽くすことが出来るのではないだろうか。

【メルセデス・ベンツ V220dアバンギャルドロング】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:5,150×1,930×1,930mm
車両重量:2,420kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:9速AT
エンジン:4気筒DOHCディーゼルターボ1,949cc
最高出力:120kw(163PS)/3,800~4,400rpm
最大トルク:380Nm/1,600~2,400rpm
車両本体価格:¥8,660,000

問い合わせ先

メルセデス・ベンツ

TEL:0120-190-560

この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
PHOTO :
尾形和美
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