テレビドラマや映画などで、目上の人に改まって「〇〇という所存でございます」や「〇〇の所存でしたが」と言うフレーズを聞いたことはありますよね。とはいえ、かしこまった言い回しに聞こえて自分で使うのはハードルが高いと感じている人も多いのでは? 今日は、さりげなく「所存」を使った“デキるビジネス敬語”について学びましょう。
【目次】
「所存」はかしこまった言い方?
■意外にも身近な「意味」
まずは「所存」という単語の意味を見てみましょう。『日本国語大辞典』には【心に思う所。考え。おもわく。】とある名詞で、意味としては日常的な言葉です。
「思う」や「考える」の謙譲語である「存ずる」と、「~するところ」を意味する「所」によって成り立っている「所存」は、主に自分(や当方)の考えや思いを述べるときに「~だと考えています」という意味で使います。
■誰に対して使える?
「思う」や「考え」よりかしこまった言い方なので、上司や取引先など、目上の人に使います。
■敬語表現は?
「どういったご所存ですか?」と相手の考えを問う際には、接頭語の「ご」つけて丁寧な表現にして使います。当然ながら、自分の考えについて「ご所存」とは言いません。
履歴書や面接、謝罪など「所存です」が「使えるシーン」
ビジネスシーンで自分の考えや思惑を述べる機会はさまざまありますが、「所存」を使うのがふさわしいシーンを見てみましょう。
■1:面接や履歴書に
張り切って自分をアピールすべき面接や履歴書で。「○○したいと思っています」より、「〇〇する所存です」のほうが頼もしく感じられますね。「所存+です」と言い切ったほうが語調が強くなります。
■2:プレゼンテーションに
「所存です」や「所存でございます」と言い切り型で使用すると効果的です。
■3:謝罪に
謝罪に必要なのは、原因の解明と予防・改善策、そして展望の提示です。同様のことを起こさないために…と説明する際に、「所存」を効果的に使いたいものです。
メールでも対面でもOKな「ビジネス例文」
■1:「御社のご期待を裏切らぬよう尽力する所存です」
■2:「今回の実績を糧に、今後も精進してまいる所存でございます」
■3:「〇〇様のあたたかいお言葉を励みに、より成果を上げられるよう努める所存でおります」
■4:「お役に立つ所存でございましたが叶わず、力不足を痛感しております」
■5:「再び同様の事態に陥らないよう、複数人による確認や点検を重ねる所存でございます」
「所存」と似た意味をもつ「類語」表現
「所存」の類語には、「意向」「所懐」「所感」などがあります。それぞれにニュアンスや使い方に違いがありますが、「所存」も含めて適した使い分けをしていきたいものです。
■1:意向(いこう)
「考え」「思惑」「判断」など、心の向かうところを示す名詞。「所存」が主にこちらの考えを指すのに対し、「意向」は相手のそれを差します。
例文:先方は〇〇という意向でいらっしゃいます。
例文:部長のご意向をお聞かせください。
■2:所懐(しょかい)
「心に思っている事柄」や「思うところ」を意味するのが「所懐」。
例文:僭越ながら所懐を述べさせていただきます。
■3:所感(しょかん)
「事に触れて心に感じた事柄」や「感想」という意味ですが、生かし方までを述べる際に使うのが「所感」。
例文:年頭所感は部長にお願いいたします。
例文:本日のミーティングの所感をまとめて提出してください。
ありがちな誤用に注意!
「〇〇と思っています」や「〇〇と考えております」より、ワンランク“デキる感”の高い「所存」ですが、間違った使い方をしている文書を目にすることも。下記の正しい例文を身に付けましょう。
× 〜と思う所存でございます
〇 〜という所存でございます
「所存」には「思う」という意味あるため、「思う所存」では意味が重複するのでNGです。
× これが△△社のご所存です
〇 これが△△社のご意向です
「所存です」は謙譲語(へりくだった言い方で相手を敬う語)なので、相手を主語にすると失礼に当たります。相手の意見などについて述べるときは、「意向です」や「ご意向です」を用いるのが正解。
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日常会話で使われることのない「所存」ですが、ビジネス会話ではさらりと使いこなせるようになりたいもの。仕事のなかで使えそうなシーンを想定して“マイ例文”をつくっておくのも、敬語を正しく身に付けるコツなので試してみてください。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 『敬語マニュアル』(南雲堂)/『デジタル大辞泉』(小学館) :