お礼やお祝い、お悔やみやお見舞いのシーンでよく使われる「心ばかりですが…」というフレーズ。失礼のないように用いるには、どんな敬語表現にしたらいいのでしょうか? また、「心ばかりってどれくらい?」という問いに答えられない人も多いのでは? それらの不安、今日は一気に解消しましょう!

【目次】

ぽち袋に三千円は「心ばかり」?
ぽち袋に三千円は「心ばかり」?

【「心ばかり」の意味や金額<基礎知識編>】

■そもそも「心ばかり」とは…

まずは「心ばかり」という単語の意味から見ていきましょう。『デジタル大辞泉』には【わずかに心の一部を表したものであること。贈り物をするときなどに謙遜していう語。副詞的にも用いる】とあります。品物や金額に目がいきがちですが、もとの意味は「心の一部」であり、謙遜した表現です。

「心ばかり」は「心許り」とも書きます。「許り」とは、「~だけ」「~のみ」「~くらい」「~程度」と、範囲や分量、程度を表す言葉。ですから「心ばかり」は「ほんの気持ちだけ」という意味になるのです。

■「心ばかり」っていくら?

では、「心ばかり」とは具体的にどれくらいのことを指すのでしょうか。いちばん知りたいポイントだと思いますが、なかなか数字ではっきり示せません。「ほんの気持ち」といっても相手との関係性や状況によってその都度変わるので、差し上げても大きな負担にならない品や金額、と心得て。立場を逆転して考えてみるとわかりやすいでしょう。

社会人になって10年以上という人なら、1万円を超すお祝いには不向き、3千円の仏花代なら使用可、くらいが目安ではないでしょうか?

■どんなときにどう使う?

慶弔のお祝いやお悔やみ、お礼やお詫びに品物や金封を手渡す際や、金品を送ったことを知らせる手紙やメール文章で「心ばかりの…」は使います。また、お土産など、ライトな贈り物にも使用可能。

■使えるのは目上の人に対してだけ!

「心ばかり」という言葉自体に謙遜の意味があるので、使えるのは目上の人に対してだけ、という点にご注意を。部下や後輩、年下の友人などには、表書きなら「寸志」や「薄謝」を、口頭やメールなどでは「ちょっとしたものを」や「ほんの気持ちばかりですが」などが相当します。


【活用したい「心ばかり」の「例文」5選】

では、「心ばかり」を用いた例文を見てみましょう。

■1:「心ばかりの品ですが、どうぞお受け取りください」

■2:「心ばかりですが、お礼にとお持ちしました」

■3:「心ばかりのお食事を用意させていただきました」

■4:「心ばかりですが、ご霊前(ご仏前)にお供えください」

■5:「心ばかりのお花をお送りいたしますので、お供えくださいますと幸いです」

「心ばかり」を用いた文章にもうひと言付け加えると、相手を敬い思いやる気持ちがより伝わりやすくなります。例えば、食品を贈る際に「お口に合うとうれしいのですが」、お花なら「季節を感じてお元気になっていただきたくて」といった具合です。また、より謙遜度を高めたい相手には、「大したものではないので笑ってお納めください」という意味の「ご笑納ください」を用いても(「笑納」は初対面の人、お詫び、弔事には使用不可)。


【目上の人以外には「類語」「言い換え」表現で】

「心ばかり」は謙遜して使う単語なので、使用は目上の人に対してに限られるというお話をしました。目下の人には、「心ばかり」と同義語として用いることができる下記の言葉を選んで使いましょう。

目上の人へ使用する際の言い換え表現としても参考にしてください。

・寸志

・薄謝

・ささやかではございますが

・つまらないものですが

・ほんの気持ちばかりで恐縮ですが

・ちょっとした(軽食など)ですが


【恥をかかないための「注意点まとめ」】

最後に使用上の注意をまとめます。慶弔時は特に注意して使いましょう。

(1)相手からの行為には使わない

相手の行為に使ってしまうと、「大したものではない品をありがとう」と言っているも同然! 頂いた金品に対して「心ばかりの品をありがとうございました」とは使いません。

(2)高額すぎるものには使わない

負担が大きくなる高額な金品に対して「心ばかり」を使っては、嫌味にとられかねません。それなりの金額を包む水引き付きの金封に「心ばかり」はNGです。 

(3)お詫びの場合はまず謝罪

直接会って金品を渡す場合に迷うのがそのタイミングですが、「心ばかり」と申し上げる際に渡すのがスマートです。「心ばかりの品ですが…」と口火を切ることにも使えます。

ただしお詫びの場合は、とにかくまずは謝罪すること。言葉を尽くして心から詫びたあとに、「心ばかりですが…」と差し出しましょう。

敬語は「相手を敬い慮る」気持ちを表すもの。迷ったり不安になったら、立場を逆転して考えることが大切ですね。

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本日は「心ばかり」についてご紹介しました。ビジネス上の付き合いでも、「心ばかり」を用いるシーンは多いもの。上手に使いこなして“敬語美人”と呼ばれるようになりましょう。

この記事の執筆者
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