雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回はNGO「Pick up China」代表 ワン・ズーレンさんの活動をご紹介します。

ワン・ズーレンさん
NGO「Pick up China」代表
山東省煙台市出身。南京大学で歴史学を専攻。卒業後、複数の会社で人事として働き、’10年に上海へ。ボランティア団体の職員としてゴミ問題に関わる。’14年にゴミ拾い活動を実施するNGO「Pick up China」を立ち上げる。

山、海、川を楽しみながら、深刻なゴミ問題にアプローチ

中国初のアウトドア系ゴミ拾いプロジェクト「ピックアップチャイナ」を主宰するワンさん。主な活動は「コントロールできないゴミを減らす」こと。清掃員や収集システムがない場所、具体的には山やビーチ、河川敷のゴミを拾い、分類・分析して回収している。

「ウォーキングや山歩きを楽しむ目的でも参加できます。子供たちは宝探し気分で楽しんでいますね。公園などでのクリーンゲームや、最近中国でも人気のプロギング(スウェーデン発祥のゴミ拾いジョギング)など、競技性のあるイベントを開催することも」

きっかけは、自身の故郷の姿。

「私は、山東省の、すごく田舎の農村で育ちました。2000年代に入って徐々に生活が豊かになり始めましたが、発展のスピードにゴミ収集のインフラが追いつかなくて。集積所のゴミが大雨で流されてもそのまま。そんな状況に危機感はありましたが、どうしようもないと思っていました。

しかし、大学卒業後、’10年に上海に来て、所属したボランティア団体で住宅地のゴミ分別プロジェクトに携わり、実感したんです。私にもできることがある、と」

中国全土でボランティア募集中のゴミ拾いイベントに申し込める、SNS内のアプリ『撿拾地図』(※)など、ハードルを下げることも重要だ。また、スポンサー企業が主宰するヨガイベントなどにも参加し、活動を広めている。

「大学生にももっと参加してほしい。今の学生は、根強いエリート志向に悩んでいる人も多い。でも、環境のことを考えると、もうひとつ別の窓が開くと思うんです。ひとりひとりに価値があることがわかるから。そのことをゴミ拾い活動を通して伝えていけたら」

【SDGsの現場から】

●美しいはずの大自然の中にも大量のゴミが

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月に1〜3回は近郊の山へ清掃に行く。毎回、想像を絶するほどの量のゴミが回収される。

●ゴミ問題への知識を深めるワークショップも

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ゴミの分別方法や有害ゴミ、海洋や土壌の汚染状況など、ゴミに関する知識を深め、共有。

※撿拾地図とは…微信(日本のLINEに相当するSNS)内のアプリ内アプリ。拾ったゴミの重さや活動量でレベルが上がったり、ポイントをためたりも。

WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
萩原晶子
写真提供 :
「Pick up China」