デビューから3年を迎えたところで、走りの本質的な楽しさをさらに高いレベルまで磨き上げたルノーのハイパフォーマンスモデル「メガーヌルノースポール」。今回のマイナーチェンジによってエンジンを始め、パワーアップしたしなやかなパフォーマンスの魅力とは、どんな味わいだろうか?
気が付くと別世界の楽しさと共にいる。
フランス車を走らせるたびに感じることといえば「すべてに動きがしなやか」なこと。説明の必要は無いかもしれないが、しなやかさと柔らかさは違う感覚である。単にソフトと言うことではなく、縮んだ分だけ、心地よくスパッと元に戻り、回した分だけ、キッチリとした反力を感じさせながら、元の位置に戻ってくる。すべての操作に対して、キレとしなやかさを伴いながら反応してくれるのだ。そこにはガチガチの硬さというか、力任せに押さえ込もうと言った感覚がほとんどないのである。
デビューから3年目を迎え、マイナーチェンジを実行されたことによって、切れ味を増した「メガーヌRS」のステアリングを握ったときにも、色んな部分でこの味を感じたのである。そして「なぜ、こんなに優しく速さを表現できるのだろう」と、いつもながらの疑問にぶつかるのである。
最高出力が従来の279PSから300PSに引き上げられたという。このパワーアップは当然、速さのためだろう。だが、これまでも十分なのに、さらになぜ? 決して凶暴になることなく、アクセルを踏んで走り出すと、その理由をクルマがちゃんと答えてくれた。良く出来たターボエンジンらしく、高回転までどこまでも伸びやかに、そして強烈に回っていく。その気持ち良さと実質的な速さが、まったくズレることなく表現されるから、どんどん楽しくなっていく。ただ単に数値的な向上ではなく、ちゃんとドライバーが、どう感じるかを考えながら、じっくりと考察した上で、速くなっていたのだ。
強烈に刺激的な速さに潜む、優しさと極上のしなやかさ
さらに少々硬くなった足回りにも驚きがあった。がっしりとした、緩さなど微塵も感じさせないほどのボディ剛性はスポーツモデルとして当然の仕上げである。そこにモータースポーツで培われた技術によって綿密にセッティングされたサスが取り付けられている。当初はこれが硬く感じた。硬さ=ハードさというロジックの延長にあるのかと思った。だが少し走ると、その極上のオンザレール感が、心地よさと楽しさに変化されるのにそれほどの時間を要しなかった。硬さで押さえ込んだコーナリングの走りではなく、極上のしなやかさを活かした、切れ味のいい楽しさだった。
確かに数値的にも十分すぎるほどに速いホットハッチである。それにも関わらず「速く走れよ!」という、押しつけがましさはなく、どこかのんびりしたのどかさをも感じさせてくれる。ひょっとしたらドライバーの体調やメンタルにまで気を遣ってくれるような思いやりのような物を感じる。そして「なぜ、こうした仕上げにしたのか」を、ゆったりと走っているときに、ちゃんとかみ砕くように理解させてくれる。気が付くと超一流のパフォーマンスを備えながらも、ほどよい距離感を保ちながら、とても心地のいい友達となっていたのだ。
もはや分かってはいるのだが、こうした魅力たっぷりのエンジン車に乗るとルノー、日産、三菱のアライアンスによる早急なるEVシフトが、恨めしくさえ感じる。今を逃すと、この素敵な友人との逢瀬は二度と無いかもしれない。
【ルノーメガーヌR.S.】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,410×1,875×1,465mm
車両重量:1,480kg
駆動方式:FF
トランスミッション:6速AT
エンジン排気量:1,798cc
最高出力:221kw(300PS)/6,000rpm
最大トルク:420Nm/3,200rpm
価格:¥4,640,000
問い合わせ先
- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター
- PHOTO :
- 篠原晃一