眠りの問題は年をとるほど増えていき、睡眠の量・質・効率が低下していく。思春期が終わり、20代の前半になると深いノンレム睡眠が安定するのだが、その時期はあっという間で、20代の終わりごろからはすでに減少が始まる。
そして40代になるとノンレム睡眠の量も質も低下し、深い睡眠の脳波も小さくなり、40代の後半になると10代のころと比べて深い眠りが60〜70%も減少する。しかし、大部分の中年男性は、睡眠の質が低下することに気がついていないのが現状だ。
睡眠不足が細胞の美しさを蝕む
■1:睡眠不足は血管の老化を早める
人は血管から老化する。人の体の血管系の全長は9万km(地球を2周と1/4の長さ)にも達するといわれている。そして血液は脳、心臓、筋肉など、人体の各臓器の発育や活動に必要な栄養分を運ぶことであらゆる身体発育と活動の源となっており、肌も例外ではない。
これまで臨床のなかで、外傷や慢性潰瘍などの皮膚のダメージ&修復を専門に診療してきたが、女性に比べて男性の方が血管の老化に伴う皮膚のダメージが深刻な場合が多かった。
実際、45歳以上で睡眠時間が6時間未満の人は、7〜8時間寝ている人に比べて、心臓発作か脳卒中を生涯で起こすリスクが200%上昇するとの報告もある。
■2:睡眠不足は食欲を増し、代謝を低下させることで肥満の原因となる
「睡眠時間が短くなると体重が増えた」ことを実感する男性も少なくはないはずだ。
実はこれには理由がある。睡眠不足は食欲増加と代謝低下のダブルパンチで体重増加を招く。その鍵を握るのは、食欲を抑制する「レプチン」と、食欲を刺激する「グレリン」と呼ばれる2つのホルモンだ。睡眠不足は「レプチン」を減少させ、「グレリン」を増加せるのである。睡眠時間を5時間に制限した実験では、ホルモンと食欲のバランスが完全にくずれてしまうというデータも。さらに睡眠不足の体は基礎代謝の低下により、摂取したカロリーを効率よく代謝できないのだ。
逆を言えば、睡眠はダイエットの強い味方になる。ひと晩ぐっすり眠るだけでも、脳内を回復させ、異常な食欲を正常に戻すことができる。ダイエットする場合も、睡眠時間が短い群(5時間半)に比べて、睡眠時間が長い群(8時間半)の方が、脂肪が落ちやすいという臨床研究もある。
また、質のよい十分な睡眠は、腸内環境を整えるうえでも不可欠だ。
男性が睡眠不足に陥る2大原因は?
現代男性の眠りに影響を与えているのが、就寝前のスマートフォンの使用とアルコールの摂取であることを覚えておいてほしい。
■1:体内時計を狂わせるスマートフォン
スマホをはじめとするブルーライトには脳内の体内時計を狂わせる働きがある。特に寝る前に2時間使うと、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が23%も抑えられてしまうというデータも。
電子機器で読書をする人が増えているが、電子機器での読書は紙の読書に比べて、メラトニンの分泌量が20%以上も減ってしまうことがわかっている。就寝前は電子機器を使うのを避け、遮光カーテンなどを用いて寝ている間は寝室を真っ暗にすることが大切だ。
■2:アルコールはレム睡眠を抑制
アルコールの鎮静作用は覚醒の状態を奪うが、それは自然な眠りとは異なり、軽い麻酔にかけられている状態に近い。アルコールの分解により生じる「アセトアルデヒド」はレム睡眠を障害し、睡眠のバランスが壊してしまう。思い当たる人は、アルコールとの付き合い方を見直すべきだろう。
健康で美しい身体を維持するために睡眠がいかに大切か、ご理解いただけただろうか。
睡眠はお金がかからず、誰もが簡単に手に入れることのできるアンチエイジングの魔法の薬と言える。ぜひこれをきっかけに、今一度自分の睡眠習慣を見直してほしい。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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