「養生してください」は、相手をいたわり、休息を促すフレーズです。会話でよく使われる「ゆっくりお休みください」といった言い回しと比べると、少し改まった印象になります。日常生活ではあまりなじみのない言葉かもしれません。今回はどんなシーンで「養生してください」を使うのがふさわしいのか、解説します。

【目次】

相手を思いやるフレーズ「養生して下さい」を正しく使おう
相手を思いやるフレーズ「養生して下さい」を正しく使おう

【「養生してください」の「養生」とは?まずは基礎知識を押さえよう】

■「読み方」と「意味」

「養生」は「ようじょう」と読みます。

「養生してください」の「養生」には、【生活に留意して健康の増進を図ること。摂生(せっせい)】や【病気の回復につとめること。保養】といった意味があるほか、【家具の運搬や塗装作業などの際に、運搬物や周囲の汚損を防ぐために布や板などで保護すること】などという意味があります。

日常で一般的に使われる「養生してください」は、体調を崩している人や病気などの治療をしている人に対して、摂生や回復を願う気持ちを込めて「心身をいたわって、お大事にしてくださいね」と、相手を思いやる気持ちを表したフレーズです。


【自分にも、目上の人にも…「養生してください」の「使い方」】

■メールなどでの「基本」の使い方

メール本文の結びに、「ご自愛ください」や「お体を大事に」などの決まり文句を添えることは多いですよね。この代わりに使われるのが、「養生してください」です。

■「目上の人」に対する使い方

「養生してください」の「〜ください」は、懇願や依頼の意味で使われる補助動詞「くださる」の命令形「くだされ」が変化したものです。「養生してください」は丁寧語ではありますが、尊敬や謙譲の意味はなく、相手にアクションを促すニュアンスを含みます。そのため、「養生してください」と声がけする対象は、親しい関係と覚えておくのがよいでしょう。

「目上の方」に対して使うのであれば、「養生して」の「して(「する」の連用形)」を尊敬語である「なさって(「なさる」の連用形)」に置き換え、「養生なさってください」と使いましょう。「養生なさってくださいませ」とすれば、いっそう丁寧な表現となります。「ませ」とは、丁寧の助動詞「ます」の命令形で、「お帰りなさいませ」、「ごめんくださいませ」などのように使われます。

また、「養生」に相手への敬意を表現する接頭語の「ご」を付けて、「ご養生ください」と表現しても、目上の方への敬語表現として使用できます。

ただし、「ご養生なさってください」は二重敬語です。二重敬語とは、ひとつの言葉に同じ種類の敬語を重ねて使用してしまうこと。注意しましょう。

■「自分」に対するときの使い方

自分が怪我をしたり病気をしたりして、欠勤が続いたり、周囲に迷惑をかけたりしたときにも、「養生」という言葉は使えます。

例1:「この度は、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。一日も早く復帰できるよう、養生に努めます」

例2:「お気遣いいただきありがとうございます。できるだけ早く職場に戻れるよう養生いたします。」


【「言い換え」の表現として使える「類語」】

「養生してください」の言い換え表現は複数あります。場面に合わせて使い分けてください。

■「ご自愛ください」 ■「お大事になさってください」

■「ゆっくりお休みください」 ■「おいたわりください」

■「どうぞご無理をなさいませんよう…」 ■「ご静養くださいませ」

■「こちらのことは心配なさらずに療養されてください」


【メールでも会話でも。ビジネスでそのまま使える「返答例文」3選】

自分が体調を崩したときに、誰かに「養生してくださいね」と言われたら、なんと返事をすればよいのでしょうか。ポイントは、相手の思いやりに対して、感謝の言葉を返すこと。

■1:「お気遣いありがとうございます。回復(療養)に努めます」

■2:「不在時にはご迷惑をおかけいたしますが、なにとぞよろしくお願いいたします」

■3:「ありがとうございます。養生させていただきます」

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体調を崩して欠勤が続く上司や取引先にやむなく連絡を取る際や、目上の方のお見舞いへ行った際など、「養生なさってください」は相手を思いやる言葉としてふさわしいフレーズです。「心身共に早く回復しますように」という気持ちが込められています。普段の会話ではあまり使われない言葉だけに、改めて「あなたを大切に思っています。早くよくなってください」という気持ちが伝わるのでは。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『とっさに使える敬語手帳』(新星出版社) :