案内状や挨拶メール、あるいはスピーチの冒頭で「ご清祥のこととお慶び申し上げます」などというように使われる「ご清祥」。おめでたい事を指しているのだろうとは理解できても、正しい意味を知っている人は意外と少ないかもしれません。実は使える相手やシーンを間違えると、非常に失礼にあたることも。そんな失敗を犯さないために、ビジネスで使える例文や類語、言い換え表現などを見ながら正しい使い方を確認していきましょう。

【目次】

「ご清祥」と「ご清栄」は同じ意味?
「ご清祥」と「ご清栄」は同じ意味?

【「ご清祥」を正しく理解するための「基礎知識」】

「ご清祥」という言葉は、「清祥」に接頭語「ご」を付けた丁寧な言い回しです。読み方は「ごせいしょう」。まずは「清祥」の意味から見ていきます。

■「清祥」の「正しい意味」

「清祥」は、相手が健康で幸せに暮らしていることを喜ぶ“挨拶語”です。「清」には「清い」「潔い」といった意味があり、「祥」は「吉祥」という言葉でもわかるように「めでたい」「喜ばしい」といった意味が。「ご清祥」は、「健やかでなによりです」といった気持ちを表すフレーズなのです。

■「ご清祥」の言い回し

・ご清祥のことと  ・ご清祥の由  ・ご清祥の段

これらに「存じます」や「お慶び申し上げます」をつなげて使います。 

■「ご清祥」と「ご清栄」の違い

「ご清祥」同様、メールや手紙、スピーチなどでも使われる「ご清栄」。ほとんど同じ意味のように思いますが、明確な違いがあります。「清栄」は、主に経済的な繁栄や無事を意味するので、一般的には企業や団体などに向けられる言葉。「清祥」は、ひとりでも複数でも対象は個人であると覚えておきましょう。


【挨拶文やスピーチで「そのまま使える例文」】 

それでは、具体的な使い方を例文で確認しましょう。こういったフレーズはオリジナリティを出すより、正しく使うことが肝心です。

■1:「時下、ますますご清祥のことと存じます」

メールや手紙、案内状などの冒頭の挨拶に用いられる「時下」は、「この頃」や「当節」「目下(もっか)」を意味します。

■2:「変わらずご清祥とうかがい、慶賀に堪えません」  

「お元気でお過ごしとうかがい、うれしく思っています」をかしこまって言った例。「慶賀に耐えない」は「喜ばずにはいられない」という意味で、硬い表現ですが「ご清祥」に釣り合った言い回しです。

■3:「久しくお目にかかる機会がございませんが、皆さまご清祥にお過ごしでしょうか」

相手の様子がわからない場合のメールや手紙文で使える、気遣いの例文です。前半を「長引くコロナ禍の折」などに言い換えても。

■4:「〇〇様(貴殿)におかれましては、コロナ禍であってもますますご清祥のこととお慶び申し上げます」

「コロナ禍であっても」の部分を時々の状況に言い換えたり、そっくり削除しても。


【いろいろあるけれど微妙に違う「類語」表現6選】

言い換え表現として、「ご清祥」同様、相手のよい状況を示す言葉をご紹介しましょう。「ご清祥」以外にも、相手の健康や繁栄を喜ぶ言葉や表現があります。少しの差異であっても使用前にしっかり確認し、適切な言葉を選びたいものです。■1の「ご健勝」は、とくに「ご清祥」に近い対語です。

■1:「ご健勝」  健康で元気な相手に。
■2:「ご発展」  よりよい状態になっている相手に。
■3:「ご活躍」  目覚ましく活動している相手に。
■4:「ご盛栄」  事業や商売が盛んな相手に。
■5:「ご隆盛」  勢いがある相手に。
■6:「ご隆昌(りゅうしょう)」  勢いが盛んな相手に。


【こんな場合は不適切! 「使用NG集」】

相手のよい状態をたたえて喜ぶ「ご清祥」は、ビジネスシーンではいわば“つかみ”のようなもの。言い換え表現なども含め大変便利な言葉ですが、実はNGも多いのです。最後に、大人のビジネスマナーとして注意したい点を挙げておきます。

■注意1:「結び」には使わない

メール、手紙、案内状やスピーチ…どのような場合でも、「ご清祥は冒頭で使用」が鉄則。
時候の挨拶の直後に使います。

■注意2:「不幸があったり入院中の相手」には使わない

文脈を考えればわかることですが、いつもの調子でうっかり使用しないように。挨拶状や案内状のように、多くの人に同じものを送る場合には目をつむってもらえる範囲ですが、明らかに個人に向けたものの場合は絶対NG! 

■注意3:「日常会話や通常業務」では使用しない

「ご清祥」というかしこまった言い回しは、日常使いにふさわしくありません。プライベートでもビジネスでも互いに相手を敬うことは大切ですが、敬語や丁寧な表現と、かしこまった表現は別のものと捉えるべきです。

 

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取引先へのメールの書き出しに、案内状などの冒頭に、あるいはスピーチの第一声に…。キャリアを重ねるほど「かしこまった言い回し」を使用するシーンも増えてきます。そんなときに「ますますのご清祥、心よりお慶び申し上げます」などとさらりと使えたら素敵ですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館) :