真夏のテーブルを凛と涼やかに…『作家もの』のガラスの器
異素材とも相性がよく食卓がこなれた印象に
冷たい水を飲む。サラダやフルーツを盛るーー。ガラスの器の佇まいは日常に軽やかに溶け込みながらも、存在感があります。ガラスを通る光は料理のおいしさをより引き立て、程よい抜け感はエレガントな印象と洗練をさりげなく与えてくれるもの。陶磁器や木のカッティングボードなど異素材のアイテムとも相性がよく、テーブルに落ちる影の揺らぎも印象的です。
ガラス作家が手づくりする器は、シンプルななかにも豊かな表情があり、ひとつあると、料理もテーブルもこなれた印象に。食卓に新しい景色を見せてくれる作家の器。ガラスだからと考えすぎず、自由に楽しんでみてください。
夏の食卓を彩るガラス作家の器
光を通すもの、受け止めるもの、多彩な色…。吹きガラスでつくられる作家の器には、柔らかな温もりが感じられます。料理を盛るのが楽しくなる逸品ばかりです。
1:Glass Artist 林 亜希子|たどり着く、美しきシンプル
薄いガラスの器には、むだを削ぎ落としたストイックさがありながら、柔らかな揺らぎがある。手にしたとき、何気なく置いたときの「なんかいい感じ」を追求し、林さんは岐阜の工房「qualia-glassworks」でガラスウエアをより美しく進化させてきた。
レンズをイメージした浅鉢は曲線を美しく保つため、底をフラットにしすぎずに成形。完成度が高く、研ぎ澄まされた器には料理があるべきところにすっと収まり、洗練という静かな説得力がある。うっすらとまとうグリーンも食材と心地よくなじむ。「料理やほかの食器との調和」を大切にする器は、どんなライフスタイルにも寄り添う。
【Information】
[主な取り扱い店]ピープル(オンライン)Instagram:@people_jp
[個展]2023年にギャラリークロッシング(岐阜)にて開催予定。
2:Glass Artist 小宮 崇|マット×艶の清楚と洗練
一見、白磁のようで、実はガラス。富山で制作する小宮さんの「白のうつわ」シリーズは、その意外性と清涼感ある仕立てで器好きからも注目を集める。
白のガラス粉を溶着させ、フロスト加工を施した外側はマットな質感、内側はつるりとなめらかというコントラストも贅沢。夏の雲のような、シャリシャリのソルベのような質感はどこか人懐こくもあり、料理も心地よさそう。脚付きのデザートカップにアイスを盛れば、そのちょっとした特別感に喜びも広がる。
「生活に溶け込みながらも、気分が上がるものを」という思いから生まれる白の景色は、インテリアにも気持ちよくなじむ。
【Information】
[Instagram]@takashikomiya
[主な取り扱い店]うつわ楓(東京)Instagram: @utsuwakaede
ミートディッシュ(大阪)Instagram: @meetdish
[個展]玄道具店(大阪)で8月27日〜9月3日に開催予定。
3:Glass Artist 谷口 嘉|料理をエレガントに彩る金のトリミング
自作のコンクリート型を用い、型吹きの技法でつくられる谷口さんの器。ありそうでない多角形の端正な佇まいは、テーブルに心地よい品と彩りをもたらし、薄い氷のような繊細なつくりも涼やか。
縁にあしらったマットな金彩が、美しい額縁のように主役の料理を縁どる。和洋を問わず使える美しい器は、誰かをもてなす日にも、黄昏時のアペロにも。
【Information】
[Instagram]@taniguchi_yoshimi
[主な取り扱い店]銀座日々(東京/個展も定期開催)Instagram: @ginzanichinichi
パノラマ(オンライン)Instagram: @panoramaindex
[個展]ドワネル(東京)にて8月19〜30日にグループ展、夏椿(神奈川)にて8月27日〜9月11日に個展開催予定。
4:Glass Artist 饗庭三七子|雨や雲。美しい瞬間を器に留める
ガラスとはこんなにも表情豊かなのだと思い知らされる。饗庭さんがモチーフにするのは、天気などの自然現象や時の流れ。その一瞬一瞬を映した器はアートピースのようでありながら、料理をおおらかに受け止める。
見過ごしがちな日々の輝きを作家が大事に感じているからこそ生まれる質感や柄を、食材やソースの延長として盛り付けるのも楽しい。
【Information】
[Instagram]@aiba.minako
[主な取り扱い店]うつわ屋まほろ(神奈川)Instagram: @maholo__
宙 SORA(東京)Instagram: @sorasora1101
[個展]12月にノード(愛知)にて企画展参加予定。
5:Glass Artist 黒川登紀子|美しい色ガラスのときめきと寛容
クリアでのびやかな色。艶やかな乳白色。まるでジュエリーを見ているかのような色彩にハッとさせられる。香川に工房「glass bee studio」を構える黒川さんは、美術講師を経て、社会人になってからガラス制作を学んだ。
子育てで12年のブランクを経て生まれたのが、美しい色ガラス。器はスタンダートな形が中心で、ぽてりとした厚みは持ちやすく、重ねやすい。「緊張せずに使える」フォルムを彩るのは、作家の人柄を映したような、柔らかなニュアンスカラー。量産品にはない中間色は、食材の自然な色ともなじみがいい。
器で表現する色は、朝、ベッドから降りたときなど、日々のふとした瞬間に浮かんだもの。色は感情を動かす。黒川さんの美しい色ガラスが、日常をときめかせてくれる。
【情報】
[Instagram]@k5trk
[主な取り扱い店]ドワネル(東京)Instagram: @doinel_shop
サニークラウディーレイニー(東京)Instagram: @sunny_cloudy_rainy_
[個展]うつわ萬器 北千住店(東京)にて8月6〜18日に開催予定。
※作家の器は個展での販売が中心です。取り扱い店舗では不定期入荷のため、在庫がない場合もあります。
※器は手づくりのため、色や形、サイズに個体差があります。
- PHOTO :
- 神林 環
- STYLIST :
- 西崎弥沙
- EDIT&WRITING :
- 松田亜子、佐藤友貴絵(Precious)
- 料理 :
- 小堀紀代美