「この商品を見てキミのクオリアを聞かせてほしい」「僕のクオリアがこのキャッチコピーはピンとこないと言ってるよ」ーーなんのことかわかりますか? 今回はこの「クオリア」について解説します。「昔そんな名前の商品があったような…」と記憶の片隅に「クオリア」がある人も、ビジネスシーンで困らないようにしっかり把握しましょう。
【目次】
【「クオリア」の「意味」や「由来」は? 基礎知識編】
■簡単にいうと「〇〇な感じ」のこと
「クオリア」とは、意識に現れる「感覚的な質」のこと。「主観的経験」や「感じ」と説明されることもあります。
例えば赤いリンゴを見たときに感じるものーー「真っ赤だな」「ツヤツヤしていてきれいだ」「アップルパイをつくろうかな」など、意識に現れる感覚です。「アップルパイをつくりたくなるリンゴ」、その“個人的な感じ”が「クオリア」。リンゴが目の前にあれば香ってくるかもしれませんし、手に持ったら意外に重いとか、ひんやりしているとか、嗅覚や触覚などの五感を通して「〇〇な感じ」がわいてきますよね。そういった物事を経験したときの理論的には捉えられない「主観的なフィーリング」が「クオリア」なのです。
■そもそもどういうカタカナ語?
英語の「クオリア[qualia]」からきているカタカナ語です。語源はラテン語の[qualis(単数形はquale)]で、個々が主観的に感じたり経験したりする「質」のことを指します。
■「クオリア」はあの脳科学者が広めた!
1997年に刊行された『脳とクオリア なぜ脳に心が生まれるのか』を書いたのは、脳科学者の茂木健一郎氏。ソニーコンピュータサイエンス研究所のシニアリサーチャーだった茂木氏のこの著書と、2003年にソニーから発売された高級AV機器ブランド「QUALIA(クオリア)」によって、「クオリア」というワードが人々に知られるようになりました。
■どんなビジネスで使われる?
ビジネスとはさまざまなことを共有して成り立つもの。他人とは共有できない主観的な感覚を指す「クオリア」は、ビジネス用語としては向かない? そんなことはありません。科学や哲学分野のほか、感性を重んじる広告や出版、デザイン、アートなどのビジネスの現場で活用されます。
【ビジネスでも使える「クオリア」の「例文」】
■1:「どんな色に見えるかは個人のクオリアによる、そこが広告の難しさだ」
■2:「あのデザイナーのクオリアを理解することは難しい」
■3:「焼きたてのパンの香りや、風にそよぐ笹の葉音、猫の肉球の触感などには、多くの人が共感できるクオリアがあるかもしれない」
【「クオリア」の言い換えに使える「類似語」】
「クオリア」自体が言葉で表現しにくいものなのに加え、ピンとくる人が多いとは限りません。状況によっては「クオリア」ではなく、より伝わりやすい「類似語」を用いるのも、ビジネススキルのひとつですね。
■イメージ ■フィーリング ■感じ
【「クオリア」と「意識」の違い】
「クオリア(〇〇と感じること)」と「意識」とは、同じような気もしますが、解説しましょう。
「意識」とは、心が覚醒している状態をいいます。周囲の環境や自分が置かれている状況、そこでどんなことが起こっているのかを認識することが「意識がある」という状態です。
「クオリア」は五感を通して個人的に感じることなので、「意識の一部ではあるが、意識そのものではない」といえます。
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今回の講座は、解釈も説明も難しい「クオリア」でした。「これって私の仕事には無関係…」と思わずに、「そういう概念があるんだな」ということを知っておくことも、社会人としては大切なことですね。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『現代用語の基礎知識』(自由国民社)/『情報・知識imdas』(集英社)/『ビジネス用語図鑑』(WAVE出版)/『現代ビジネス用語事典』(日本文芸社)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫)/『あの新語もわかる カタカナ語 すぐに役立つ辞典』(河出書房新社)/ :