雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は小児科医、「ジャパンハート」理事長 吉岡春菜さんの活動をご紹介します。

吉岡 春菜さん
小児科医、「ジャパンハート」理事長
'03年に医学部を卒業し、'04年に設立された国際医療NGO「ジャパンハート」発足時の基盤づくりに奔走。団体の最高顧問を務める夫の吉岡秀人と結婚後は、育児をしながら医療の届かない場所で支援活動を行う。

診察室の外でも患者と向き合い、医療が届かない場所に医療を届ける

ミャンマーやカンボジア、ラオスなど途上国で医療を受けられない子供に無償で治療を行ったり、国内の災害地や離島に医療者を派遣するなど“医療の届かないところに医療を届ける”を理念に活動を続けている国際医療NGO団体(※)「ジャパンハート」。吉岡さんは、創立後すぐに小児科医として、長期ボランティアでミャンマーに渡ったり、東日本大震災の現場支援を行うなど国内外でさまざまな社会貢献活動に携わってきた。

特に現在、自身が中心となり活動している国内でのプロジェクト「スマイルスマイルプロジェクト」では、小児がん患者とその家族のサポートを行っている。

「重い病気と闘う子供は、医療従事者の付き添いがないと外出ができないなど、日常生活を諦めざるを得ないこともあります。私たちが病院と提携し、本人や家族の行きたい場所に同行しています。

彼らの願いは、家族皆で行ったあの場所をもう一度旅したい、お兄ちゃんの試合を見に行きたい、親が時間の制限なく一日中抱っこしていたいなど、さまざま。わずかな時間でも病院の外で“日常”を生きたり、治療を頑張ったら外でこれをしようねと“約束”を果たす手助けをしています」

休日にボランティアで手伝ってくれる看護師も、彼らに付き添いながら点滴の交換などを行う。

「診察室を出て、外で患者さんやその家族と接して彼らの本音と向き合えることには、大きな学びがあります。その経験は、医療者メンバーがそれぞれ勤務する病院でも必ず生かされるはず。『ジャパンハート』という場が、関わる人すべてにとって、幸せが広がるハブのような存在になれたら」

【SDGsの現場から】

●病院の外で、小児がん患者と家族をサポート

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長時間共に過ごすと短い診察ではわからない、本音や本人の強さに触れられると吉岡さん。

●途上国で病気と闘う子供に無償医療提供を18年間行うNGO

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現地の医療者育成にも注力。カンボジアでは奨学金制度を構築した。(2012年撮影)

※国際医療NGO​​とは​…非政府組織(民間)であり、人種や思想などの壁を超え、貧困や災害、飢餓など世界各地で医療から疎外された人々の支援を行う団体。

PHOTO :
望月みちか
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材・文 :
大庭典子