誰もが知ってる「つもり」の基本的な敬語ほど、正しい理解と適切な使い方が求められます。今回のテーマは「伺う」。深く理解するための知識と「使い方」を、一緒に学びましょう!

【目次】

「行く」の謙譲語としての使用が多い言葉です
「行く」の謙譲語としての使用が多い言葉です。

【「伺う」を深く知るための「基礎知識」】

■「読み方」    

「伺う」は「うかがう」と読みますね!

■「意味」

「伺う」は動作の対象(行為が向かう先)を敬う謙譲語です。主な動作としては、3つ。

1.「聞く」の謙譲語。
2.「尋ねる・問う」の謙譲語。
3.「訪れる・訪問する(=行く)」の謙譲語。

ただし、最近では「伺う」の使用は、主に3.の「行く」という意味のみとなりつつあり、「聞く」や「尋ねる」としての使用は少なくなっているようです。

■「窺う」との違い

「窺(うかが)う」にはいくつか意味がありますが、よく使われるのは「隙間などから、ひそかにのぞいて見る」あるいは「ひそかに様子を探り調べる」、「状況を察する」といった意味でしょう。「伺う」とは違う意味の言葉ですから、PCでの変換間違いなどに気をつけましょう。

ただし、実は「窺う」と「伺う」は同語源の言葉です。目上の人の様子を「窺(うかが)いみる」意から、その動作の相手を敬う謙譲語「うかが(伺)う」となったそうです。


【ビジネスでの「使い方」がわかる「例文」6選】

■「聞く」の謙譲語として

・「その件でしたら、○○さんより伺っております」
・「もう少々詳しいお話を伺ってもよろしいですか?」

■「尋ねる・問う」の謙譲語として

・「ひとつお伺いしてもよろしいですか?」
・「今日はお伺いしたい件がございます」

■「訪問する・行く」の謙譲語として

・「明日、御社に伺います」
・「今日、これからそちらに伺ってもよろしいでしょうか」


【「お伺いします」「伺います」どちらが正しい?】

ひとつの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」といいます。「二重敬語」は一般に適切ではないとされていますが、習慣 として定着しているものもあります。

「お伺いする」は厳密には二重敬語なのですが、現在、習慣として定着しているもののひとつです。これをOKとするならば、「敬意の強さ」は「お伺いします」のほうが高いと言えます。


【同じ意味で使える「類語」「言い換え」表現】

「伺う」の「類語」「言い変え」表現を、『敬語マニュアル』を参考に、丁寧度の高い順にご紹介します。

■「聞く」の謙譲語として

拝聴する>承る>伺う>お聞きする

■「尋ねる・問う」の謙譲語として

お伺いする>おたずねする>ご質問する

■「行く」の謙譲語として

参上する>参る=伺う>行かせていただく=訪問させていただく


【「参る」との「使い分け」できてますか?】

「伺う」と同じように、「行く」を意味する「参る」は、同じ謙譲語ですが、分類が少々異なります。

現在、文化審議会答申「敬語の指針」では、謙譲語は「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ」に分けられています。「謙譲語Ⅰ」は「動作の対象(行為が向かう先)を敬う」謙譲語。「謙譲語Ⅱ」は「話を聞いている相手を敬う」謙譲語です。

「伺う」は「謙譲語Ⅰ」、「参る」は「謙譲語Ⅱ」。その使い方の違いを例文で説明しましょう。

■OK 1:「明日、御社に伺います」

■OK 2:「明日、御社に参ります」

■OK 3:「明日、妹のところに参ります」

■OK 4:「明日、海に参ります」

■NG 1:「明日、妹のところに伺います」

■NG 2:「明日、海に伺います」

「謙譲語 I」である「伺う」は「動作の対象(行為が向かう先)を敬う」ため、「妹」や「海」など、対象が(文法上)敬うにふさわしくない対象の場合は使えません。
一方、「謙譲語 II」である「参る」は、「話の聞き手」に対する敬語なので、「行為の向かう先」が「海」でも「妹」でも使うことができます。

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「伺う」には主に3つの意味がありますので、特にメールなどの文章では相手に誤解を与えないような表現とすることが大切です。最近では使用頻度が減っている「聞く」「尋ねる」という意味であれば、「お聞きする」「ご質問する」のように言い換え表現をつかったほうがわかりやすいケースもありそうですね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) /『とっさに使える 敬語手帳』(新星出版社) :