「鼓舞」は気持ちを奮い立たせたり励ましたりすることを意味する言葉です。イメージとしてはスポーツ世界との親和性が高そうな言葉ですが、実はそのルーツは戦場にありました。今回は「鼓舞」にまつわる由来と共に、正確な意味や使い方を解説します。

【目次】

あなたにとっての「太鼓」は何でしょう?
あなたにとっての「太鼓」はなんでしょう?

【「鼓舞」を深く理解するための「基礎知識」】

■「読み方」

「鼓舞」は「こぶ」と読みます。

■「意味」をわかりやすく!

「鼓舞」は、「人の気持ちを奮い立たせること」「勢いづかせること」「大いに励ますこと」という意味です。

■「語源・由来」 を知れば理解が深まる!

「鼓」は太鼓やつづみなど、打楽器を意味する言葉で、打楽器を「鳴らす」「音を立てる」のほか、「励ます」「力づける」という意味をもっています。そして「舞」も、「音楽や歌に合わせて踊ること」のほか、「励ます」「もてあそぶ、からかう」といった意味をもつ語なのです。

「鼓舞」は、打楽器を打ち鳴らし踊ることで気持ちが高揚することから、同じような意味をもつふたつの言葉を重ね、「奮い立たせる」「励ます」といった意味を強調する言葉として使われるようになったと考えられます。

戦場で、軍勢の進退の合図に打ち鳴らす太鼓のことを「陣太鼓」といいます。古来より日本では、太鼓を打ち鳴らすことで士気を上げ、戦へ出陣する兵士の気持ちを高めていました。

「鼓舞」という言葉は単体で用いられることはほとんどなく、「鼓舞する」「鼓舞される」として用いられています。精神的な疲弊や疲労感、マイナス思考に陥った人を、後ろから後押しして奮い立たせる言葉として使われています。

■「鼓舞激励」とは?

「鼓舞」と似た言葉として「激励」が挙げられます。

「激励」は「げきれい」と読み、「励まして奮い立たせること」という意味。「鼓舞」と「激励」はほとんど同じ意味をもった同義語だということができますが、「激励」は「激励の言葉をかける」のように使うことができます。「鼓舞の言葉をかける」とは言いませんね。

このふたつを使った四字熟語「鼓舞激励」も、「人の心を励まし元気づけ、奮い立たせること」という意味の言葉で、「鼓舞」よりもさらに強い励ましの言葉であるといえます。


【「鼓舞」の「使い方」がよくわかる「例文」5選】

「鼓舞」は精神的に疲弊した人を後ろから後押しして奮い立たせる言葉であり、誰かを励ますときはもちろん、自分のやる気を奮い立たせるようなときにも使うことができます。スポーツの現場にもよく似合う言葉ですね。

■1:「敵の猛攻を前にコーチはタイムを要求し、前向きな言葉で選手たちを鼓舞した」

■2:「上司として部下を鼓舞することも、プロジェクト成功の要因のひとつだ」

■3:「試合前、その選手はいつも同じ曲を聴いて自分を鼓舞することを習慣としていた」

■4:「彼女のひたむきな言葉に鼓舞され、再び前を向いていこうと思えた」

■5:「彼女とは昔から互いを鼓舞し合う好敵手の関係だった」


【「鼓舞」と同じ意味で使われる「類語」「言い換え」表現】

「励ます」「気持ちを奮い立たせる」という意味をもつ言葉は、「鼓舞」のほかにも多数あります。「類語」「言い換え表現」をご紹介しましょう。

■鼓吹  ■激励  ■鞭撻  ■声援

「鼓吹」は「こすい」と読み、「鼓(つづみ)を打ったり笛を吹いたりすること」で相手を「励ます」「奮い立たせる」「勇気を与える」という意味になります。「鞭撻」は「べんたつ」。こちらは「むちで打ってこらしめること」の意から、「努力するように励ますこと」を表す言葉になりました。

■励ます  ■力づける  ■元気づける  
■発破(はっぱ)をかける  ■活(かつ)を入れる

「発破をかける」の「発破」は「爆薬」を意味し、ここから「強い言葉で激励したり、気合いを入れたりする」ことを意味します。

***

「鼓舞」とは、かつて戦場で太鼓を打ち鳴らすことで士気を上げ、出陣する兵士の気持ちを高めていたことに由来する言葉です。気持ちが落ち込み、やる気が出ないときは誰にもあるものですが、そんなときこそ自分を「鼓舞」する言葉、自分にとっての太鼓をもっていることが大切ですね!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /新選漢和辞典Web版(小学館) :