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【「確認させていただきます」は誤用?正しい?「基礎知識」】

仕事の現場でもメールでも、あるいは日常生活のなかでも、「確認させていただきます」というフレーズは頻繁に使われています。今回は改めて、本来はどんな状況で使用すべきなのか、しっかり確認していきましょう。

「確認させていただきます」の「意味」

「確認」は漢字が表すように、「はっきり認めること。また、そうであることをはっきり確かめること」という意味があります。単純に「見る」のではなく、「はっきり認める」というところがポイントです。

「させていただきます」は、「させてもらう」の謙譲語「させていただく」と丁寧な断定の助動詞「ます」から成る敬語表現です。ここで改めて、「させていただく」の意味を確認してみましょう。
もともと「させていただく」は、4つの意味で使われていました(『敬語マニュアル』より)。

1.相手の許可を得て〜する    (例文)「お言葉に甘えて休ませていただきます」
2.相手のおかげで〜できた    (例文)「いい勉強をさせていただきました」
3.自分の行為を丁寧に言う    (例文)「ひと言、お祝いを述べさせていただきます」
4.相手の意志に関係なく〜する  (例文)「頭が痛いので帰らせていただきます」
本来、3.の用法は最も丁寧な謙譲語として、祝辞などフォーマルな場面で使われてきましたが、現在では日常的なシーンで乱用される傾向にあり、「させていただく」は「うっとうしい」「わずらわしい」という意見が出ています。

 基本的に「させていただく」は、(1)の「相手側や第三者の許可を受けての行動」であり、(2)の「そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合」に使用されるのが適切です。では「確認させていただきます」については、どうでしょうか。

「確認させていただきます」は「誤用」?それとも「正しい」?

「確認させていただきます」というフレーズ自体は、正しい日本語です。ただし、使用する状況によっては「うっとうしい」「わずらわしい」と感じさせるフレーズでもあります。例をあげてみましょう。

△:「資料のご送付をありがとうございました。確認させていただいた後、改めてご連絡させていただきます」
○:「不審者情報が寄せられています。お手数ですが身分証を確認させていただきます」

△の例では、本来、送付された資料の確認に許可は不要なはず。丁寧な表現のつもりで「させていただきます」を使っているのでしょうが、連発していることもあり、煩わしく感じられますね。このように、フレーズ自体は正しい日本語であっても、使われる状況次第では、「誤用」とまでは言えないまでも、「過剰」な敬語と受け止められてしまうのです。さらに具体例をみてみましょう。


【「させていただきます」の誤用のケース】

「させていただく」を相手に「わずらわしいフレーズ」と感じさせないためには、「相手側や第三者の許可を受けての行動」に限定すると、敬語はかなりすっきりします。誤用の例を挙げてみましょう。

■誤用例1:「資料のご送付をありがとうございました。確認させていただいた後、改めてご連絡させていただきます」

■誤用例2:「本日の司会進行を務めさせていただきます、△△です」

■誤用例3:「私は昨年、○○大学を卒業させていただきました」

■誤用例4:「このたび、結婚させていただきますことをご報告いたします」

■誤用例5:「素晴らしい試合に、感動させていただきました!」

上記のような例文に違和感をもつのは、相手の許可がいらない行為に「させていただく」をつけているからです。


【混乱を避けるために使える「言い換え」表現は?「例文」】

「させていただきます」は「相手の許可が必要な行為」や「相手に直接働きかけない行為」には使用しないと覚えておくと、すっきりとした文章になります。誤用例としてあげた5つの文章を言い変えてみましょう。

■1:「資料のご送付をありがとうございました。確認後、改めてご連絡いたします」

■2:「本日の司会進行を務めます、△△です」

■3:「私は昨年、○○大学を卒業いたしました」

■4:「このたび、結婚することをご報告いたします」

■5:「素晴らしい試合に、感動しました!」

「(確認)させていただきます」は「(確認)いたします」にするとすっきりします。さらに、今まで「確認させていただきます」を使っていたところを「拝見します」や「拝読します」に言い換えると、敬語表現としてさらにすっきりとして、好印象を与えるはずです。

■1:「資料のご送付をありがとうございました。拝読したのち、改めてご連絡いたします」

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敬語はできるだけシンプルに用いるのが“大人の語彙力”です。「させていただく」の使用は、「相手の許可を受けての行動」に限定すると、すっきりした表現になります。実はほとんどの場合、丁寧語の「確認します」や、謙譲語「確認いたします」を用いれば、充分。もしも、さらなる敬意を伝えたいのであれば、「拝見します」や「拝読します」と言い変えて。洗練された言いまわしで、敬語美人を目指しましょう!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(角川新書)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社)/『すぐに使えて、きちんと伝わる 敬語サクッとノート』(永岡書店)/『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書) :