仕事の現場でもメールでも、あるいは日常生活のなかでも、「確認させていただきます」というフレーズは頻繁に使われています。相手に対しての“ことわりフレーズ”であったり、要求されたことに対する“とりあえず的な返答フレーズ”にと重宝しますが、実は失礼にあたったり、不快な思いをさせてしまうケースも少なくありません。本来はどんな状況で使用すべきなのか、しっかり確認していきましょう。

【目次】

「ご確認させていただきます」のほうがより好印象?
「ご確認させていただきます」のほうがより好印象?

【自信をもって「確認させていただきます」を使うための基礎知識】

■意味

「確認」は漢字が表すように、「はっきり認めること。また、そうであることをはっきり確かめること」という意味があります。単純に「見る」のではなく、「はっきり認める」というところがポイントです。

「させていただきます」は、「させてもらう」の謙譲語「させていただく」の敬体表現。「させていただく」は、相手の許可が必要なシーンで、その行為によってなんらかの恩恵を受ける場合に、許しを請いながら遠慮がちに動作を行う際に使う言葉です。

■誤用?正しい?

「確認させていただきます」というフレーズ自体は正しい日本語ですが、使用する状況によっては「誤用」にもなりえるので注意が必要です。

例えば、コンサートホールなどの入り口で「手荷物を確認させていただきますので、鞄の中を拝見してもよろしいですか?」と言われるのはどうでしょう。あまりに一般的なので気にならないかもしれませんが、本来、危険物や禁止されている物品の持ち込みの有無を確認するのに、相手(観客)の許可は必要ありません。この場合、許可を得るべきは鞄の中を見る行為なので、「手荷物を確認しますので、鞄の中を拝見してもよろしいですか?」でいいはずです。

へりくだることで相手を高める謙譲語「させていただく」を使えば、丁寧で品のいい尊敬表現なのだという風潮もあるようですが、なんでもかんでも「させていただく」を使用するのは“大人の語彙力”としては失格です。

■「ご確認させていただきます」はより丁寧な言い回し?

「確認」に謙譲表現の接頭語である「ご」を用い、「させていただきます」という謙譲語をつなげたため「これは二重敬語では?」という疑問をもつかもしれませんね。「二重敬語」はひとつの語に同じ種類の敬語を複数使うことなので、「ご確認」+「させていただきます」とふたつの語からなるこの場合は二重敬語ではありません。しかし、敬語表現は複数使うほどバカ丁寧な言い回しだと受け取られる危険性や、回りくどくて真意が伝わりにくくなる場合も。

敬語はできるだけシンプルに用いるのが“大人の語彙力”です。「ご確認させていただきます」に違和感を覚えたら、丁寧語の「確認します」や、謙譲語「確認いたします」を用いればOK!


【ビジネスシーンで「~させていただきます」はNG?】

「~させていただきます」というフレーズを正しく使用するには、「相手の許可を得なくてはならないシチュエーション」と「そのことによって恩恵を受ける場合」という、ふたつの条件が必要です。実は、通常のビジネスシーンではこの条件を満たすケースは多くありません。「こんなに、させていただきますという言葉があふれているのに?」と感じるかもしれませんね。注意が必要な例を挙げてみましょう。

■誤用例:「修正案を頂戴しましたら、すぐに確認させていただきます」

修正案の提出も、その内容を精査するのも、相手の許可は必要ありません。この場合は「確認いたします」や「確認します」で。

■注意例:「本日の進行役を務めさせていただきます〇〇社の△△です」

△△さんが進行役を務めるのに、その場の出席者に許可を得る必要はありません。この場合は「進行役を務めます」や「進行役の」で十分です。


【「確認させていただきます」の「言い換え例文」3選】

「~させていただきます」の乱用はNGということがわかりました。今回のテーマ「確認させていただきます」の言い換え表現を紹介しますので、特にメールなどの文章では適切に使用してみてください。

■言い換え例文1:「請求書をお送りいただきありがとうございました。確認いたします」

「請求書をお送りいただきありがとうございました。確認させていただきます」を言い換えた例文。

■言い換え例文2:「頂戴しました企画書、さっそく拝見いたします」

「頂戴しました企画書、さっそく確認させていただきます」の言い換え例。

■言い換え例文3:「事前に資料をご用意いただきありがたく存じます。次の会議までに拝読しておきます」

「事前に資料をご用意いただきありがたく存じます。次の会議までに確認させていただきます」の言い換えです。

このように、今まで「確認させていただきます」を使っていたところを「拝見します」や「拝読します」に言い換えたほうが、敬語表現としてもすっきりとしていて好印象を与えるはずです。

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「~させていただきます」という表現があふれかえっている今だからこそ、正しく、感じよく使うべき。頻発されている「確認させていただきます」も十分注意しながら、言い換え表現も含め、適切に使用してください。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(角川新書)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社)/『すぐに使えて、きちんと伝わる 敬語サクッとノート』(永岡書店) :