今後とも叱咤激励のほど、よろしくお願いいたします――あれ、何かおかしい? 挨拶でよく聞く気がする「叱咤激励」という単語、その正しい意味を知っていますか? 実は、職場でも学校でも時代錯誤なNGワードになりつつある「叱咤激励」、今回はその対策をしっかりチェックしていきましょう。
【目次】
- 「叱咤激励」の「意味」は?「読み方」や「語源」もまとめてチェック!
- 要注意ワード「叱咤激励」の正しい使い方と「言い換え」
- 「叱咤激励」を使った「例文」5選
- 「叱咤激励」と同じように使える「言い換え表現による例文」
- ビジネスシーンでの注意点まとめ
【「叱咤激励」の「意味」は?「読み方」や「語源」もまとめてチェック!】
■読み方
「しったげきれい」と読みます。
■意味
大きな声で励まし、元気づけること。「監督が選手を叱咤激励する」などと使います。
■語源
大声をあげて叱るという意味の「叱咤(しった)」と、励まして奮い立たせるという「激励(げきれい)」を用いた四字熟語で、思いやりをもって相手を鼓舞する際に使われます。ビジネスシーンでは実際に大声を出すのではなく、「大声で励ますつもり」で元気や勇気を与える、という意味でとらえて正解です。
ところが、「叱咤」という単語が示す「大声で叱る」という行為は時代にそぐわない…という風潮もあり、いまや「叱咤激励」は使用シーンや相手を選ぶ要注意ワードに!
【要注意ワード「叱咤激励」の正しい使い方と「言い換え」】
「叱咤激励」の意味を理解したところで、誰に、どんなシーンで使えるかを解説しましょう。
■誰に?
「叱咤激励」は、目下、もしくは同等の相手に使います。「𠮟咤」も「激励」も、自分より目上の人に対しての行為を示す単語ではありません。前章で説明したように「叱咤」はやや時代錯誤な単語で、音感も字面もキツイ印象をもたれがち。文章やスピーチで「叱咤激励」を使用する際には注意が必要なのです。
目上の人には、「ご指導のほど、よろしくお願いいたします」「ご指導ご鞭撻を賜りたいと存じます」といった使い方をします。
■どんなシーンで?
「叱咤激励」という行為自体は、相手を元気づけたり鼓舞したいシーンで行うもの。1対1のシーンや、プロジェクトメンバー全員を叱咤激励するならOKですが、複数人いるところでひとりに対して「叱咤激励」するのはNGと心得て。
■目上の相手には?
目上の人を励ましたいときは、「叱咤激励」ではなく「応援」を使うといいでしょう。
■「叱咤激励」してもらいたいとき
冒頭で出てきた「今後とも叱咤激励のほど、よろしくお願いいたします」というフレーズ、やはり正しい日本語ではありません。自分が元気づけてほしいときや鼓舞してほしいときに「叱咤激励してください」はふさわしくないからです。この場合は「ご指導」や「ご鞭撻(べんたつ)」を用いるのが正解。
【「叱咤激励」を使った「例文」5選】
■1:「部下の士気を上げるためとはいえ、叱咤激励するのは難しい時代だ」
■2:「部長の叱咤激励が、チーム全員のやる気を奮い立たせた」
■3:「家族の叱咤激励がなければ、苦しい練習を続けることはできなかった」
■4:「営業成績が上がらず同期の仲間が落ち込んでいたので、一緒に頑張ろうと叱咤激励した」
■5:「皆様からの叱咤激励のお言葉、ありがたく拝聴しました」
「今後とも叱咤激励のほど、よろしくお願いいたします」を正しく言い換えるなら「今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」。また、間違った例のひとつに「叱咤激励を頂戴できますでしょうか」が挙げられますが、これは「お言葉を賜りたく存じます」や「激励のお言葉をいただけますでしょうか」が正解です。
【「叱咤激励」と同じように使える「言い換え表現による例文」】
・「部長の鼓舞激励のおかげで、厳しい状況もなんとか乗り切れました」
・「先輩が担当しているプロジェクトが成功するよう、応援しています」
・「皆様からいただいたエールが力になり、目標を達成することができました」
「叱咤激励」を使える相手やシーンでも、今の時代は「鼓舞激励」を用いたほうが安心。“ほめて伸ばす時代”というわけです。
【ビジネスシーンでの注意点まとめ】
■目上の人には使わない、「応援」と言い換える
■叱咤激励してほしいときは「ご指導ご鞭撻」と言い換える
■「叱咤激励のほど」は誤り
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聞き慣れた言葉でも、しっかり確認してみると誤用だった…ということは珍しくありません。ビジネスシーンでは、正しく感じのいい日本語を使うよう日頃から心がけたいものですね。今回の「叱咤激励」も、使う際には注意が必要な四字熟語でした。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『新明解四字熟語辞典』三省堂/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :