今回取り上げる「不甲斐ない」という言葉に、どんなイメージをもっているでしょうか? 「謝罪やぼやきなどで使われるから、よくないイメージ?」と思ったあなた、正解です。ビジネスシーンでも使われるこの「不甲斐ない」について、どんなふうに使うのが正しいか、言い換えワードも含めて解説します。
【目次】
【「不甲斐ない」の基礎知識】
■読み方
「不甲斐ない」で「ふがいない」と読みます。
■意味
「情けないほど意気地がない」「まったくだらしがない」「気力がない」など。
■使い方
「期待どおりの行動ができず、役に立たない」という意味もあり、ビジネスシーンではこちらの意味で使われることが多いでしょう。「力を尽くしたが結果が伴わなかった」という際に使用します。
■語源
「不甲斐ない」は「腑甲斐ない」と書くことも。「腑」という漢字には、「はらわた」「肝(きも)」「心底」という意味があります。「腑抜け」のように「腑」は心や心根の様子を表すので、「不甲斐ない」の語源は「腑甲斐ない」にあるという説も。現在では「不甲斐ない」とするのが一般的です。
■「情けない」との違い
似た言葉の「情けない」を『デジタル大辞泉』で引いてみると、「思いやりがない。無情である。すげない」「同情の余地がない。嘆かわしい」「みじめである。見るにしのびない」「無風流である。風情がない」と、さまざまな意味をもつことがわかります。
「不甲斐ない」は、期待に応えられないことに対する残念な気持ち、「情けない」はみじめな様子を表す言葉とすると、ビジネスでは「不甲斐ない」のほうが使用頻度が高そうですね。
【ビジネスでの「使い方」がわかる「例文」3選】
では、ビジネスシーンでどのように「不甲斐ない」が使われるのか、例文で見ていきましょう。
■1:「このたびはご期待に応えられず、大変申し訳ございませんでした。力不足に不甲斐ない気持ちでいっぱいでおります」
■2:「不甲斐なさを嘆いているだけでなく、しっかり見直して改善点を見つけることが重要だ」
■3:「多大なご迷惑をおかけしましたこと、心からお詫び申し上げます。不注意に気づけなかった自分を大変不甲斐なく感じ、反省しております」
■1と3は、詫び状やメールで使える謝罪文。次に、同じような状況で使える「言い換え」も確認しておきましょう。
【「不甲斐ない」と似た言葉による「言い換え謝罪」】
■お恥ずかしい限り ■不徳の致すところ ■意を尽くせず
・「十分な確認を重ねていれば避けられたミスを犯してしまい、お恥ずかしい限りです」
・「私共の不徳の致すところにより多大なご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます」
・「このたびは意を尽くせず、大変申し訳なく残念な気持ちでおります」
【「不甲斐ない」を使用する際の「注意点」】
謝罪では、(1)小さなミスでも事態を重要ととらえる、(2)親しい相手でも普段より重々しい表現を用いる、この2点がとても大切です。普段の会話ではあまり聞かない「不甲斐ない」などの表現を用い、誠意を伝えましょう。
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ミスをしたり、よい結果が得られないなど、ネガティブな状況では人間性があらわになるもの。そんな場合こそ“大人の語彙力”の発揮のしどころです。ピンチのときこそ、シンプルな表現で気持ちを伝えましょう。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『心理学的に正しい! 人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :