ものづくり大国日本が誇る、優れたブランドは、まだまだ多く存在している。北海道の馬具から発展したレザーアイテム、東北の手縫いニットや70年の歴史があるコート、あるいは、世界に発信する大阪のスーツ……。これらのブランドに共通している点は、上質な素材の吟味、日本的な風合いの追求、積み重ねる巧みな職人技、控えめなディテールに込められた粋、美しさにこだわる仕上げの妙などが挙げられる。たとえば下の写真の黒靴をご覧いただきたい。日本人の足に完璧にフィットさせるために、詳細なデータを分析した木型から、はき心地のよさを突き詰めた靴をつくり出すだけではなく、日本がまだ手づくり靴が盛んだった頃の、「ヤハズ」という伝統の仕上げ技を生かす。靴底を少しでも薄く、華奢に見せようとする日本特有の繊細な美意識が、その技に表れているのである。

こんなにある素晴らしい日本ブランド

三陽山長の革靴

¥120,000(三陽山長 銀座店)

小ぶりなヒールカップと土踏まずの部分を絞り込むことで、抜群のフィット感を実現したモデル『友二郎』。極上のベビーカーフを甲革に使い、通常よりも細かい縫製で、よりエレガントなスタイルをつくり出す。浅草の靴職人の技と手間をかけた逸品だ。

ソメスサドルのクラッチバッグとダレスバッグ

左/しぼり製法を使ったスリムなクラッチバッグ。サイズ(cm)/縦24.5×横34×マチ2。¥34,000(ソメスサドル青山店〈ソメスサドル× HTレーベル〉)右/人気の高いダレスバッグ。重厚なレザーを使っているため、経年変化も楽しめる。サイズ(cm)/縦34×横42×マチ17。¥250,000(ソメスサドル青山店〈ソメスサドル〉)

1964年、北海道に創業し、馬具づくりを発祥とするソメスサドル。道内から熟練した職人たちが集まり、’70年代半ばまでは欧米やオーストラリアを中心に、馬具を100%輸出していた。国内需要にシフトしてからは、レザーアイテムの製作にも発展。2003年、伊勢丹新宿店メンズ館オープンと同時の出店が、ブレイクのきっかけとなった。ソメスサドルの強みは、馬具づくりで重要となる、つくりの精度や強度をレザーアイテムに受け継いでいること。人が馬に乗るためには、人間の体になじむ曲線を硬いレザーで実現しなければならない。その難しい技術をバッグや革小物づくりに応用しているのだ。

代表的な商品は、まずダレスバッグ。ハンドルや本体の縁に力強い手縫いを施した、堅牢なスタイルが自慢。注目すべきは、クラッチバッグ。しぼりという革の型押し製法を使った、ステッチが目立たないデザインは、他に類を見ない。

北海道の大地から生まれる、力強さと素朴さを兼ね備えたレザーアイテムがソメスサドルの神髄だ。

気仙沼ニッティングの手編みのニット

左/気仙沼の海の色を表した春の海というライトブルーが爽やかなニット『エチュード』。¥70,000(気仙沼ニッティング)右/ファーストモデルのカーディガン『MM01』。¥140,000/オーダー価格(気仙沼ニッティング) 問い合わせは共にウェブサイトで。http://www.knitting.co.jp

2011年、未曽有の震災に見舞われた宮城県気仙沼市。東北復興のため、翌年気仙沼ニッティングが立ち上がった。編み物作家として知られる、三國万里子氏が商品開発に加わり、最高級のカーディガンを一からつくるための取り組みが始まった。遠洋漁業が盛んな気仙沼には、漁に出た夫や家族のために、家にいる者がセーターを編む習慣が古くから続いていた。そんな編み手を招集して、ニット製作の基礎を築いたのである。上の写真のニットは、立体的に隆起したヴォリュームのある編み柄から、一瞬にして手編みだと伝わる。ニットづくりの根本となる原糸は、3種類のウール糸をブレンドして、ふくらみのある編み糸をつくる。それによって、カーディガンの身頃に編み込まれた、アラン島に由来する、伝統的なケーブル模様が浮き立つのである。

気仙沼ニッティングのカーディガンやセーターは、本場アラン島のニットに並ぶ、編み目の詰まったやわらかな風合いに温もりがある。

ハバーザックのジャケットとパンツ

ジャケット¥66,000・シャツ¥23,000・パンツ¥21,000・チーフ¥14,000(クラウドナイン〈ハバーザックアタイア〉)

ハバーザックは、日本を代表するファッションブランドとして、今や世界の有名セレクトショップが、最も買い付けをしたい服のひとつとなっている。ブランド誕生以来、ミリタリー、ユニフォーム、テーラードといった男の服が持つ普遍的な要素を、タイムレスなデザインで具現化するブランドとして人気だ。

ふたつのラインを擁するハバーザック。そのひとつが、上の写真の、イギリスのクラシックなデザインやディテールを盛り込んだライン『アタイア』だ。ドレスを中心に、着飾るスタイルを提案する。ゴージラインが低いシアサッカーのダブルジャケットに、ミリタリーウエアから派生したグルカパンツの合わせは、まさに今季注目のスタイルだ。ハバーザックのデザイナーである乗秀幸次氏の服づくりのコンセプトは、流行にとらわれることなく、サイズのバランスを変化させて、自身がいちばん気になるデザインに仕上げること。それは乗秀氏による、日本的なミックス感を表現した服である。随所に見られる細部のつくり込みに類い稀なる個性が潜んでいる。

ラクア アンド シーのチェックシャツ

長年の研究によって生み出された日本人のパターンによって、後ろ身頃はダーツを取らずに細身のシルエットを表現。¥19,000(ラクア アンド シー東京店〈ラクア アンド シー〉)

コモリの白シャツ

コットン生地のふくらみを感じる、ゆったりとしたラインが絶妙。小さな襟と胸ポケット、薄い貝ボタンがバランスのいいデザインを生む。¥22,000(アルファ PR〈コモリ〉)

「日本の気候に合う、日本人の体形に合ったシンプルな日常着」をコンセプトに、2012年、デザイナーの小森啓二郎氏がコモリを立ち上げた。ゆったりとした風合いのシャツは、ブランドを代表するアイテムのひとつになっている。コモリのシャツは、まず生地が独特。低速織機でコットンの生地を織り、生地の仕上げ加工を省くことで、わずかにコットンの節などを残す。少し不均一な織りの組織が、むしろ自然でふんわりとした質感を生み出す。そんな生地を基にして、力の抜けたイメージの白シャツが誕生するのである。

そのシンプルさと軽やかさは、ボタンの選びにも表れる。限りなく薄い貝ボタンが、より爽やかなデザインに導いている。

素肌にシャツを着用するのが爽快な季節、くつろいだ雰囲気を徹底的に味わうなら、コモリのシャツは、今、間違いのない選択だ。

ココマイスターの革財布

上質なコードバンによる、しっかりとした財布は、育てていくような感覚も同時に楽しめる。長財布¥40,000・二つ折り財布¥34,000(COCOMEISTER オンライン サポート)

2009年に誕生したココマイスター。設立されてから年月が浅いものの、熟練した職人の技を生かし、コードバンなど、上質なレザーを使ったレザーアイテムが評判だ。ココマイスターは、重厚なダレスバッグ、ブリーフケースなどを生産する一方で、より多くのデザインのバリエーションと多彩なレザーで表現した小物類も得意とする。とりわけ、繊細な仕事を積み上げた財布は、素材の持ち味と職人の技術が見事に生かされている。

写真の財布は共に、コードバンを素材にする。コードバン特有のしっとりとした質感や、ツヤの魅力を最大限に引き出すため、ごくシンプルなデザインに徹してつくり上げている。財布の周囲に施された精緻なステッチワークからも、熟練した職人技が見て取れる。

スーツの内ポケットに忍ばせる財布なら、上質なコードバンを使った、このふたつのデザインに注目したい。

ファイブウッズのブリーフケース

中はカードケースやファスナー付きのポケットをデザインした一室仕様となる。サイズ(cm)/縦29×横40×マチ8。¥56,000(林五プレスルーム〈ファイブウッズ〉)

ファイブウッズとは、1890年に創業した日本屈指のバッグメーカー、林五の社名を英語で表したブランドである。2014年、これまで展開してきたレザーアイテムのレーベルをファイブウッズに統合し、創業当初から受け継がれてきた巧みな職人技を、堅牢なバッグづくりに生かしているのだ。「微妙な厚みを調整する革すき」「革の風合いをしっかりと残し、強度を高める芯材の仕様」「丁寧で丈夫なステッチワーク」が、ファイブウッズが誇る、卓越した職人技の優れたポイントである。

写真のブリーフケースは、上質なステアハイド(牛革)が持つ張りを見事に成形しながら、レザー特有のツヤを表現。随所に手縫いも加え、しっかりとした縫製が絶妙だ。使い込んでいくうちに、落ち着いた濃色に変化していくのも楽しめる。握りやすいハンドルにも職人技がにじみ出る、逸品である。

以上、日本が世界に誇るブランド8つ紹介しました。ものつくり大国日本にはまだまだ知られていないブランドがあるはず。あなた自身で見つけてみてはいかがだろうか。

※価格はすべて税抜です。※2015年夏号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
BY :
MEN'S Precious2015年夏号 志高き「日本ブランド」を知っているか!?
ヴィットリオ矢部こと本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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撮影/戸田嘉昭・小池紀行、辻郷宗平(パイルドライバー/静物)、篠原宏明(取材)  スタイリスト/武内雅英(code) 文/菅原幸裕  構成・文/矢部克已(UFFIZI MEDIA)