旅先では日常の喧騒を離れて、静かなおこもり時間を過ごしたい。そんな人におすすめなのは秘湯の宿です。自然のなかにひっそりと佇む湯宿は、大地からの贈り物である温泉の恩恵をダイレクトに浴びられるスポット。それに加えて、息を呑むような日本の原風景、地元の食材を生かした心づくしの料理など、秘湯の宿はアクセスの不便さを補ってあまりまる魅力にあふれています。
行けば必ず感動する。わざわざ足を運びたくなる。そんな名宿を温泉ジャーナリストの植竹深雪さんにピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、福島市にある「旅館ひげの家」です。
公式サイト
硫黄が香るクリーミーな温泉で秘湯気分を満喫
JR福島駅からバスで45分ほど。福島・山形両県にまたがる吾妻連峰の中腹にある高湯温泉は、奥州三高湯のひとつ。400年以上の歴史を有し、日本屈指の硫黄成分濃度の湯をかけ流しで楽しめるスポットとして人気を博しています。
「高湯温泉はどの湯宿もはずれなしといっても過言ではないのですが、なかでも私のイチ推しは『旅館ひげの家』。オンライン予約は『日本秘湯を守る会』の公式サイトからしかできず、あとは基本的に電話予約のみという、まさに知る人ぞ知る…といいますか、本当は教えたくない名宿です。
お風呂は男女別の内湯と露天が1つずつ。それから貸切露天が1つ。客室数がわずか10のこぢんまりしたお宿なので、混みあうことなくゆったりと秘湯感を満喫することができます。泉質は、酸性-含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩泉。硫黄の香りが際立つ成分豊富なにごり湯がたまりません」(植竹さん)
「ここの湯の特徴を一言で表すとマルチビタミンのような欲張りな湯です。酸性泉のピーリング効果で古い角質を優しく溶かしながら、保湿、美白成分をたっぷりチャージでき、翌日、鏡で自分の顔を見たときにトーンアップをはっきりと実感できました」(植竹さん)
「また、先客がいなければいつでも利用できる貸切露天風呂の雰囲気が最高。特に夜間は、降り注ぐような満天の星の下での湯浴みが叶います。心身が浄化されるような美しさは、まさしく秘湯の醍醐味です」(植竹さん)
自然と向き合える空間美や繊細な会席料理にも大満足
「旅館ひげの家」は、温泉だけでなくトータルでの満足度が高いと植竹さん。
「こちらの宿の創業は1960年。“ひげの家”というインパクトのある宿名は、立派なひげをたくわえて“ひげさん”の愛称で親しまれた創業者にちなんだものだそう。もともと湯のよさに定評がありましたが、2016年のリニューアルで、露天風呂付きの客室の新設などブラッシュアップされ、温泉通だけでなくハイクラスな宿を好む層や女性客にもより支持されるようになった感があります」(植竹さん)
「ロビーラウンジはアジアンテイストの家具を配したおしゃれな空間。随所に生花が飾られるなど、さりげない演出も心に響きます。テラスからの眺めもよく、インテリアと自然美の調和が見事。私が訪問したときにはタイミングが合わなかったのですが、季節によっては眼下に雲海が広がるのが見えるそうです」(植竹さん)
「料理は旬の素材を使った会席料理。先附、前菜、お造り、炊合、メインの魚、肉料理、デザートに至るまで、どれも丁寧に作られたものばかりで、器や盛り付けにもこだわりが感じられます。なかでも印象に残っている料理は宿オリジナルの伝宝焼き。穴子、蟹、ネギ、豆腐などを秘伝の味噌で焼いたグラタン風の料理はやみつきになる味わいです。それから、料理人が京都で修業された方だそうで、賀茂茄子の揚げ出しが絶品でした」(植竹さん)
以上、高湯温泉の「旅館ひげの家」をご紹介しました。日本有数の白濁の名湯に癒されたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?
※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。
問い合わせ先
- 旅館ひげの家
- 住所/福島県福島市町庭坂字高湯15-1
客室数/全10室
料金/1名 ¥16,500~(税込) - TEL:024-591-1027
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- WRITING :
- 中田綾美
- EDIT :
- 谷 花生