極上の湯に浸かり体はポカポカ温まりながら、目の前に広がる白銀の世界に見惚れる。このコントラストこそ冬の温泉旅の醍醐味ではないでしょうか。1年のうちの限られた時期、雪深い土地でしか叶えられない非日常体験は、日頃の心身の疲れをきっと癒してくれるはずです。

そこで、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんに、日本全国に数ある温泉旅館のなかから、冬ならではの絶景に感動する湯宿をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、長野県・上林温泉にある「上林ホテル 仙壽閣」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の2500スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

大正浪漫を彷彿させる空間で雪景色に見惚れる

仙壽閣の外観
仙壽閣の外観

日本屈指のスノーリゾート、長野県・志賀高原の麓に広がる上林温泉。古くから文人墨客に愛された温泉街で瀟洒な湯宿が点在するなか、ひときわ格式の高さを感じさせるのが「上林ホテル 仙壽閣」です。創業は1929年(昭和4年)。数寄屋や寄せ棟などの伝統的な建築に、アール・ヌーボー、アール・デコといった技法を組み込んだ和洋折衷の建物は凛とした佇まい。そして、その館内からは丹念に手入れされた日本庭園を望むことができます。

ラグジュアリーな雰囲気の仙壽閣のロビー
ラグジュアリーな雰囲気の仙壽閣のロビー

「仙壽閣は皇室にもゆかりのある由緒あるお宿。建物に入った瞬間から、優雅な旅時間が始まります。天井が高く、床は磨き上げられた大理石のロビーは、明治から大正にかけての貴重な書画や古美術が展示された洗練された空間。大きな窓越しに水墨画のように雪化粧した庭園が広がり、思わず目を奪われます」(植竹さん)

雪化粧した庭園
雪化粧した庭園

「ロビーだけでなく、通路の途中にも窓に面してソファが設置されたスペースがあり、そこからの眺めも眼福。庭園は時間帯ごとにさまざまな表情を見せてくれるのですが、特に印象に残っているは日没あたりです。薄暮のブルーに雪帽子の白い木々が映えて実に感動的でした」(植竹さん)

ブルーと白のコントラストが美しい
ブルーと白のコントラストが美しい
夜間にはまた別の趣がある
夜間にはまた別の趣がある

源泉ドバドバで大迫力!湯量豊富な露天風呂で雪見を満喫

自然と一体化できる露天風呂
自然と一体化できる露天風呂

「上林ホテル 仙壽閣」は、建物や庭園だけでなく、温泉も一級品だと植竹さん。

「こちらの温泉は、源泉かけ流しですが、特筆すべきはその湯量。毎分720リットル、1日1,036トンという驚異的な湯量で、長野県下でも最大級の湧出量を誇ります。露天風呂は巨岩から源泉が滝のように流れ落ち野趣ある造りで迫力満点。そこから眺める雪景色は忘れられません」(植竹さん)

壁一面から源泉が流れ落ちてくる内湯
壁一面から源泉が流れ落ちてくる内湯

「内湯も源泉ドバドバで、洗い場まで洪水状態。あまりの湯量でミストサウナのように湯気がもうもうと立ち込めて窓が曇り、私が入ったときには内湯から外の雪景色を眺めることはできませんでしたが、温泉好きとしては壁全体から源泉が流れ落ちてくるダイナミックなシーンに大満足です。

泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉。硫酸塩泉はいわゆる美肌の湯の一種で、お肌のハリ・弾力アップや保湿効果が期待できるとされています。また、塩化物の作用で体がポカポカに温まり、入ってほどなく額からじんわり汗が。露天風呂や内湯を出たり入ったり、その合間には通路のソファで寛ぎ庭園を眺めたりして、心が満たされる時間を過ごすことができました」(植竹さん)

庭園を眺めながら寛ぐ
庭園を眺めながら寛ぐ
露天風呂付きの特別室。もちろん源泉かけ流し!
露天風呂付きの特別室。もちろん源泉かけ流し!

目撃できるのは冬だけ!湯浴みする「スノーモンキー」に癒される

温泉で身を寄せ合うスノーモンキー
温泉で身を寄せ合うスノーモンキー

「雪の季節の仙壽閣では、スノーモンキーも見どころ。野生のニホンザルの自然な暮らしぶりを間近で見られるとして有名な地獄谷野猿公苑は仙壽閣の徒歩圏内にあり、国内だけでなく海外からもこれを目的に訪れる人が多いようです。ここではおサルさんたちのさまざまな生態を観察できますが、温泉に入るスノーモンキーに会えるのは冬ならでは。雪が降るなか、人間さながらに気持ちよさそうに湯浴みする姿は本当にほっこりさせられますよ」(植竹さん)


以上、「上林ホテル 仙壽閣」をご紹介しました。湯量豊富な源泉かけ流し露天風呂で雪景色に癒されたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?

※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

問い合わせ先

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生