【目次】

【「お見えになる」の「意味」など基礎知識】

■意味

「お見えになる」とは、誰かが来訪したことを表す尊敬語で、動詞「来る」の敬語表現です。尊敬語は敬語の五分類のひとつで、「いらっしゃる・おっしゃる型」にあたり、相手の行動や存在に敬意を込めて用います。

主語として使えるのは以下の3つです。

・相手本人

・相手の身内

・敬意を払いたい第三者

たとえば上司に「部長、〇〇社の△△さまがお見えになりました」と伝える場合、「お見えになる」という尊敬語は△△さまに対しての敬語であり、「~ました」という丁寧語は部長に対する敬語になります。つまり、同じ文のなかで二方向に敬意を示しているのです。

■二重敬語ではありません

「お見えになる」は二重敬語ではなく、正しい敬語表現です。にもかかわらず「二重敬語では?」と不安に思われがちなのは、「お見えになられる」という誤った表現と混同されるためです。

「お見えになられる」「ご覧になられる」「お話になられる」「おっしゃられる」などは、尊敬語にさらに「~られる」を重ねた二重敬語。丁寧にしようとしても、かえって不自然で回りくどくなり、場合によっては慇懃無礼な印象を与えかねません。

正しくは以下の通りです。

○:お見えになる、ご覧になる、お話になる、おっしゃる

×:お見えになられる、ご覧になられる、お話になられる、おっしゃられる

否定形も同様で、「お見えになられていません」は誤り。「お見えになっていません」が正しい表現です。

■まとめると、「お見えになる」は正しい尊敬語であり、二重敬語ではありません。誤って「~なられる」を重ねないよう注意することが大切です。


【そのまま使える「例文」7選】

■1:「課長、〇〇様が受付にお見えになりましたので、応接室へご案内いたしました」

■2:「本日は〇〇さまがお見えになるまでに、資料の準備を整えてください」

■3:「〇〇さまがお見えになるのは、午後2時ごろと伺っております」

■4:「〇〇さまがお見えになるのは△時ごろと伺っております」

■5:「明日の会議には、関連会社の代表者がお見えになる予定です」

■6:「多くのお客さまがお見えになることが予想されますので、受付体制を強化いたしました」

■7:「来週は海外からのお客さまがお見えになる予定です」


【「お見えになる」の「類似フレーズ」と「使い分け」】

「来る」の尊敬語は「お見えになる」だけではありません。「いらっしゃる」「お越しになる」「おいでになる」も同様に「来る」の尊敬語として使えます。ただし、それぞれニュアンスや使用場面が微妙に異なります。

■いらっしゃる

「いらっしゃる」は「お見えになる」とほぼ同じ意味で使えますが、「いらっしゃる」の方がややカジュアルな響きがあります。
前章の例文をそのまま「いらっしゃる」に置き換えても違和感はありませんが、直属の上司や日常的に接する目上の人に対して用いられることが多いでしょう。

また、「明日は部長が先方へいらっしゃいます」のように、「行く」の尊敬語としても使えるのが特徴です。

■お越しになる

「お越しになる」は「お見えになる」と同じく「来る」の尊敬語ですが、「わざわざ足を運んでくださった」というニュアンスを含みます。
そのため、訪問への感謝の気持ちを込めたいときにふさわしい表現です。

例:「本日はご多忙のところ、お越しくださり誠にありがとうございます」

■おいでになる

「来る」だけでなく、「行く」「いる」にも使える尊敬語です。
すでにその場にいることを表す場合にも使えます。

例:「〇〇さまが受付においでです」=すでに受付にいらっしゃる、という意味。

【「お見えになる」と類似フレーズのニュアンス比較】

敬語表現 主な意味 ニュアンス・使い方のポイント
お見えになる 来る(尊敬語) 最もオーソドックスで丁寧。改まった場面に適する。
いらっしゃる 来る・行く・いる(尊敬語) やや柔らかい印象。上司など日常的に接する目上の人向き。
お越しになる 来る(尊敬語) 「わざわざ来てくださった」感謝や敬意を強調できる。
おいでになる 来る・行く・いる(尊敬語) 幅広く使える。特に「すでにその場にいる」ことを表すときにも使える。

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今回取り上げた「お見えになる」という表現は、受付や秘書業務など、人と人をつなぐ場面で日常的に使われる大切な敬語です。特に、目上の方に対して来訪者の到着を伝えるときには出番が多いでしょう。
ただし、正しい敬語である一方で「二重敬語」に陥りやすい表現でもあります。丁寧にしようとするあまり誤用してしまうと、かえって不自然に響いてしまうことも…。
相手に敬意を示しつつ、自然で美しい日本語を使えるよう、ぜひ今回のポイントを心に留めてみてくださいね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『使い方のわかる 類語例解辞典』小学館/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社)/『大人の語彙力大全』(KADOKAWA) :