「昨今の日本では」や「昨今の若者は」など、ビジネスシーンだけでなくテレビや新聞などでよく使われる「昨今」という言葉。時間や期間を表しているのはわかっても、本当のところ「いつのこと?」と、不安に思っている人もいるでしょう。今回はこの「昨今」のハテナについてスッキリ解消しましょう。

【目次】

「昨今」に「現在」は含まれる?
「昨今」に「現在」は含まれる?

「昨今」とは?「読み方」「意味」「使い方」】

■読み方

「さっこん」と読みます。

「昨日(さくじつ)」や「昨年(さくねん)」のように「さくこん」と読むのは間違い。これは、「作(さく)」と「今(こん)」というふたつの語が結びついてひとつになる際に、発音しやすく「促音化(そくおんか)」して「さっこん」となるからです。「楽器」が「がくき」ではなく「がっき」に、「食器」が「しょくき」ではなく「しょっき」と読むのと同じです。

■意味

 『日本国語大辞典』や『デジタル大辞泉』によると、「昨今」が示すのは「昨日、今日」「今日このごろ」「近ごろ」「現在に近い過去から現在までを含めて漠然という」と、若干漠然としています。要するに「何日前から今まで」という明確な定義はない、ということ。「昨今はお忙しくしていらっしゃるとうかがいました」の場合は、1か月、あるいは数か月から現在まで、という印象でしょうか。しかし「アジアにおける昨今の国際情勢は」と言ったら、ここ数年のことを指していると思われます。「2~3日前から現在まで」では、ちょっと短すぎる気もします。「昨今」を用いたフレーズや文章では、“大人の読み取り力”が試されるということなのです。

■使い方

「昨今」が示す期間は曖昧です。受け取り手が“なんとなくこのくらいかな”という想像でかまわない内容なら使用OKですが、期間を重視する場合の使用は不適切。どんな場合に使用できるのか、次に例文を見てみましょう。


【手紙やメール、スピーチでそのまま使える「例文」6選】

■1:「ご無沙汰しております。昨今はいかがお過ごしですか」

■2:「昨今はお目にかかる機会もなく、残念に思っております」

■3:「地球温暖化による昨今の異常気象は、想定外の被害をもたらしています」

■4:「昨今の金融情勢を踏まえ、サイバーセキュリティーの強化が急務です」

■5:「昨今のコロナ禍においては、人出が従来の半分以下となった」

■6:「昨今と20年前では、転職時に求められるスキルが大きく異なります」

この例文からもわかるように、「昨今」は日常会話ではほとんど使われません。かしこまったシーンで用いるもの、と解釈してよさそうですね。


【「昨今」「近頃」「最近」…類語をどう使う?

「昨今」と同じように期間や時間を示す単語はたくさんありますね。それぞれの違いなど、確認してみましょう。

■「昨今」にいちばん近いのは…

「今日」を「こんにち」と読ませる場合は、「昨今」同様、近い過去から現在までのことを表します。「今日(こんにち)の情勢を鑑みて」は「昨今の情勢を鑑みて」と同じだといえるでしょう。

■「昨今」とニュアンスが近いのは…

「近ごろ」や「最近」は、長くてもここ数か月のことでしょう。1年以上前からなのに「最近寝つきが悪くて」とは言いませんよね。一方「近年」は少くても1年以上前からのこと。「昨今」は、数か月前からも数年前からも受け入れる許容範囲の広い言葉だからこそ、使うシーンには気を配りたいですね。


【「昨今」の曖昧さを英語では何という?】

「昨今」を英語で表わすと、[these days]、[nowadays][recently][lately]などに。日本語と同じように期間は曖昧ですね。日本語でも英語でも、期間が重要な内容なら、「1か月前から」や「先週から」など、はっきり示すことが大切です。

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「昨今」も「最近」も、“曖昧”や“やんわり”といった表現を好む日本人らしい言葉です。話し言葉ではありませんが、メールや手紙、発表の場などで使ってみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社)/『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :