外出先から「打合せが終わりましたので、ただいま帰路につきました」などと、会社に連絡をすることはありませんか? 今回取り上げる「帰路につく」という言葉、日常会話ではあまりなじみがないかもしれませんが、上司への“ホウレンソウ(報告・連絡・相談)”では使える言葉です。正しい意味や使い方をおさらいしましょう。
【目次】
【「帰路につく」の「正しい意味」や「漢字」をおさらい】
■読み方
「帰路につく」で「きろにつく」と読みます。「帰路」という漢字は「かえりみち」とも読めますが、一般的には「きろ」と読みます。
■意味
「帰路につく」は「帰り始める」ということ。また「帰る途中」を表現する際にも使われます。
「帰路」とは、「帰る途中の道」「帰る道」をいう名詞。帰るときに通る道を指す言葉ですが、例えば「国道246号線を表参道の交差点で原宿駅方向へ右折して…」などと具体的な経路をいうのではありません。
■漢字
「帰路につく」の「つく」の漢字には「就く」が用いられます。「就く」には「みずからある動作を始める」「それまでとは異なる新たな状態に身を置く」という意味があり、「帰路に就く」は「帰り始める」「帰る、という行動をとり始める」という意味なので「着く」や「付く」は間違いです。「就く」を用いる言葉で間違えやすいものとして、このほかには「眠りに就く」があります。
【「帰路につく」のシーン別「例文」8選】
■1:「予定より会議が長引きましたが、これから帰路につきます」
■2:「ただいま帰路につきましたので、30分ほどで戻れると思います」
■3:「部長は10分前に帰路につかれました」
■4:「先ほどは駅までお送りいただきありがとうございました。無事に予約していた列車に乗車でき、帰路につくことができました」
■5:「帰路の車窓から眺めた田園風景に、1日の疲れが癒やされた」
■6:「帰路の途中で気になるカフェを見つけました」
■7:「結果を早く報告すべく、帰路を急いだ」
■8:「出張からの帰路、渋滞に巻き込まれた」
1と2は出先からの帰社を報告する際の例文です。いずれも相手に「あとどれくらいで戻れるか」を予測させことができますね。3は上司に対する敬語を用いた表現。6や7のように、「帰路」は「~の途中」や「~を急ぐ」といった使い方もできます。
【「帰路」と「帰途」はどう違う? 「類似」に「言い換え」も!】
「帰路につく」と同じ意味で使えるフレーズに「帰途につく」があります。「帰路」と「帰途」は同義語ですが、前述したように「帰路」は「~につく」「の途中」「を急ぐ」などバリエーションがあるのに対し、「帰途」は単体で使用するほかは「帰途につく」に限定されます。
では、「帰路」の類似語や「帰路につく」の言い換えを確認しましょう。
■「帰路」の類似語
・家路(いえじ) ・帰り道 ・復路(ふくろ)
■「帰路」の対義語
・往路(おうろ)
■「帰路につく」の言い換え
・帰社する ・帰宅する ・家路につく ・戻る ・帰る
【「帰路につく」の敬語表現もマスターしよう】
「帰路につく」という言い方は、「帰る」や「戻る」よりも丁寧で大人っぽい印象ですが、敬語というわけではありません。上司への報告や、取引先など目上の人とのコミュニケーションで使うなら、敬語表現もしっかり覚えておきたいものですね。
「帰路につく」というフレーズを敬語として使用するシーンは、(1)目上の相手に「自分が帰路につく」ことを報告する、(2)「目上の人が帰路につく」ことを伝える、というふたつのケースが主となります。それぞれ例文を確認してください。
(1)の場合:丁寧語の「です」や「ます」を付けます。例)「帰路につきます」「帰路につきました」「帰路の途中です」
(2)の場合:「つく」の尊敬語「つかれる」を用います。例)「帰路につかれました」
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意味はわかっているつもりでも、使い慣れない単語やフレーズは、いざとなると「この使い方、正しい?」と不安になるものです。そんな言葉もこの連載で目にすることで、あなたの語彙力に蓄積されるはず! 今日もひとつ、明日もひとつ、コツコツと“語彙力貯金”を貯めていきましょう。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社) :