今回取り上げるのは「いたわる」という言葉です。パソコンやスマホでは「労わる」も「労る」も予測変換されますが、どちらが正解なのでしょうか。 ビジネス文書で使用するなら? 言葉としての基礎をしっかり確認しながら、 正しく使うための例文などを見ていきましょう。
【目次】
【「いたわる」は「労る」「労わる」どっちが正解?…基礎知識】
■意味
「いたわる」を小学館『デジタル大辞泉』でひいてみましょう。まずは、「弱い立場にある人などに同情の気持ちをもって親切に接する」「気を配って大切に世話をする」とあります。例えば「お年寄りをいたわる」といったふうに使いますね。
次に、「労をねぎらう」「慰労する」。例えば「選手をいたわる」といったら、「選手の苦労や功績をねぎらう」という意味です。また、「手当てを加える」「養生する」という意味もあり、「体をいたわる」といったりします。実は、「いたわる」には「苦労する」「骨を折る」「病気になる」「わずらう」といった意味もあるのですが、現代では一般的ではありません。
■漢字
「いたわる」を漢字で表記する場合は、「労わる」あるいは「労る」となります。「わ」は送っても送らなくても正解。けれど、「労る」という文字を見たときに、とっさに「いたわる」と読めるでしょうか? 「労わる」のほうがすんなり読めるのでは? どちらも正しい場合は、読みやすいほうを選んで使うのが“大人の語彙力”というもの。ビジネスでの使用なら「労わる」をおすすめします。
■「労わる」と「労う」の違い
同じ「労」の漢字を使用する言葉に「労う(ねぎらう)」があります。「労わる」はあらゆる人、自分にも使うことができますが、「労う」を使用するのは自分より弱い立場の人に限定されます。整理してみましょう。
OK:「上司を労わる」「部下を労わる」「部下を労う」
NG:「上司を労う」
【「労わる」の使い方をチェック!「例文」5選】
■1:「残業続きで頑張っている部下を労わるため、声掛けや差し入れは欠かせない」
■2:「気分が落ち込んでいる同僚を労わる良い方法はないだろうか」
■3:「他者を気遣うのと同じように、自分を労わらなくてはいけない」
■4:「高齢者や病人だけでなく、乳幼児を連れた親を労われる社会であるべきだ」
■5:「若い人に労わりの言葉をかけてもらう年齢になった」
【同じ意味で使える「類語」「言い換え表現」】
「労わる」と同じ文脈で使える「類語」や「言い換え表現」には、下記などがあります。
■慰労
■慰める
■力づける
■大事にする
■優しくする
■思いやる
「慰労」や「慰める」はそのまま言い換えてOK! 場合によっては「力づける」や「大事にする」「優しくする」「思いやる」なども使えます。
例)「気分が落ち込んでいる同僚を力づける良い方法はないだろうか」
例)「他者を気遣うのと同じように、自分を大事にしなくてはいけない」
例)「高齢者や病人だけでなく、乳幼児を連れた親に優しい社会であるべきだ」
例)「若い人に思いやりの言葉をかけてもらう年齢になった」
【英語で「労わる」を使用した例文も!】
・病人を労わる=care for a sick person
・高齢者を労わる=be kind to elderly people
・お体を労わってください=Take good care of yourself
・彼女は怪我した足を労わりながら歩いた=She walked slowly,favoring her injured leg
***
社会は、さまざまな人間関係が複雑に絡み合って成り立っているもの。少しでもストレスなく仕事や生活ができるよう、みんなが労わり合えるといいですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :