「お察しします」は、身内のご不幸や仕事上のトラブルなど、好ましくない状況にある相手の心情を察し、言外に気遣いを滲ませたフレーズです。具体的なことには触れず、相手の気持ちに寄り添うニュアンスは、日本語ならではの繊細な表現といっていいでしょう。とはいえ使い方には注意点もあります。せっかくの気遣いの言葉から誤解を生じさせないためにも、「お察しします」の正確な意味と使い方をマスターしましょう!
【目次】
- 「お察しします」を使いこなすための「基礎知識」
- 上司や目上の方などに使える、より丁寧な「敬語」表現は?
- そのまま使える「例文」4選
- 「お察しします」の「類語」「言い換え」表現は?
- 「お察しします」を「英語」にすると?
【「お察しします」を使いこなすための「基礎知識」】
■読み方
「お察しします」は「おさっしします」と読みます。
■意味は?
「察する」には「物事の事情などを推し量ってそれと知る。推察する」「他人の気持ちを推し量って同情する。思いやる」といった意味があります。謙譲の接頭語「お」で相手を立て、丁寧語の助動詞「ます」で構成された「お察しします」は、目上の方が置かれた“好ましくない”状況を理解し、思いやる気持ちを伝えるフレーズです。
■「お察しします」を使う際の注意点
「お察しします」は目上の方にも使える言葉ではありますが、相手との関係性や状況次第では「お察しします」という言葉に不遜なニュアンスを感じ、「あなたに私の何がわかるの?」と不快に思う人もいるようです。特に独りよがりな憶測をもとにこの言葉を使うのは厳禁です。充分に気をつけてくださいね。また、「お察しします」は身内のご不幸や何らかのトラブルに見舞われた方に対して使う言葉であり、慶事には使えませんのでこちらも注意が必要です。
【上司や目上の方などに使える、より丁寧な「敬語」表現は?】
「お察しします」は謙譲の接頭語を使って相手を立てた敬語表現ですが、さらに丁重度を高めた表現をご紹介します。
■「お察しいたします」
■「お察し申し上げます」
【そのまま使える「例文」4選】
「お察しします」は相手の状況や気持ちにはあえて触れずに、自分も同じ気持ちであることを示す婉曲な表現です。「余計な詮索はしません」という気持ちの表明でもあります。そのため、相手の状況や気持ちに関する具体的な表現はあえて避け、「ご心中」「ご不安」「ご心配」「胸中」などの言葉を使うとよいでしょう。
■1:「ここまでの道のりにどれ程のご苦労があったのかと、お察しいたします」
■2:「皆さまのご不安な気持ち、お察し申し上げます」
■3:「さぞご心配なさっていることでしょう。胸中お察しいたします」
■4:「ご家族様のご心労はいかばかりかとお察しいたします」
【「お察しします」の「類語」「言い換え」表現は?】
■わかります
■拝察します
「お察しします」を意訳すると「わかります」ですが、カジュアルな表現ですから目上の方に対しては使えません。「拝察」は推察することをへりくだっていう言葉。さらに丁重度を高めるなら「拝察いたします」となります。
【「お察しします」と言われたときの「返事」は?】
■「お気遣いをありがとうございます」
相手の思いやりに対し感謝の言葉を述べる「お気遣いをありがとうございます」は、目上の方はもちろん、誰に対しても使える無難な返答です。
■「恐れ入ります」
「恐れ入る」は心から申しわけなく思うという意味の言葉ですが、相手に感謝を伝える際にも「ありがとうございます」の意味で使われます。
■「痛みいります」
「痛みいる」でひとつの言葉で、相手から受けた好意や親切に対して「自分にはもったいないほどありがたい」と謙遜しつつ感謝の気持ちを表現した言葉です。「お察しします」への返答に使えますが、基本的には目上の方に対して使う言葉です。いずれにせよ、大きな悲しみに包まれた場面で「お察しします」と声をかけられたら、言葉を取り繕ったり飾る必要はありません。無言でお辞儀を返すだけでも充分に気持ちは伝わるはずです。
【「お察しします」を「英語」にすると?】
■I sympathize with you very much.(ご心中をお察しいたします)
■I feel for you very deeply.(ご心中をお察しいたします)
■I can just imagine how deeply hurt she must be.(彼女の苦しい心の中は察するに余りある)
■I know how terrible you feel.(お気持ちはわかります)
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本当に辛いときには、具体的なアドバイスや慰めの言葉をかけられるよりも、ひと言の「お察しします…」が心に響くこともあります。あえて言語化しない「察する文化」は日本独特の繊細な感覚とも言えますが、一方でちょっとした勘違いから誤解を招く危険性も! あなたが「察した」と思うことは、もしかすると推測に過ぎないのではありませんか? 単なる噂なのかもしれません。独りよがりな憶測で「お察しします」を使った場合、相手を不快な気持ちにするばかりか、傷つけてしまうことも。充分に気をつけましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館)/プログレッシブ和英中辞典(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『心が通じる 手紙の美しい言葉づかい ひとこと文例集』(池田書店) :