ビジネスシーンで「先んじて」という言葉を聞くことがあると思います。「他社に先んじて」や「先んじてご報告いたします」といったように使いますが、この「先んじて」の意味って? 今回は、スピーチや案内文書などでも「先んじて」を躊躇(ちゅうちょ)なく正しく使うために、しっかり確認していきましょう。
【目次】
- 「先んじて」とはどんな言葉?「読み方」「意味」など基本を確認
- ビジネスシーンの参考になる「すぐに使える例文」6選
- 語彙力アップのための「類語」「言い換え」表現
- 「先んじて」と「先だって」は同じ?違う?
【「先んじて」とはどんな言葉?「読み方」「意味」など基本を確認】
まずは「先んじて」という言葉の基礎知識をしっかり把握しましょう。
■読み方
「先んじて」と書いて「さきんじて」と読みます。「先日」は「せんじつ」と読みますが、「先んじて」を「せんじて」と読むのは間違いです。
■意味
「先んじて」は、「先んずる(さきんずる)/先んじる(さきんじる)」という動詞に助詞の「て」が付いたもの。ほかの人より先に進むことや、先に何かをすることを表します。
■由来
そもそも「先んずる/先んじる」は、「先にする」の音が変化したもの。それをしっかり理解しておけば、「~に先んじて」や「先んじて~」の意味を間違えることはないでしょう。
■敬語
「先んじて」という言葉自体に敬語の要素はありませんが、「~より先に」や「~より前に」という言い回しよりかしこまったニュアンスがあるので、敬語と一緒に使われることが多いです。また、使用に上下関係は問いません。
【ビジネスシーンの参考になる「すぐに使える例文」6選】
■1:「この技術の精度では、他社に先んじていると自負しております」
■2:「クライアントの視察に先んじて、現地確認が欠かせません」
■3:「製品のご案内に先んじて、開発意図をご説明させていただきます」
■4:「社内人事異動により来月から御社担当が変わりますこと、先んじてご報告申し上げます」
■5:「先んじて事を進められるよう尽力してまいります」
■6:「出張に先んじて、出張経費の仮払いを申請してください」
【語彙力アップのための「類語」「言い換え」表現】
・先駆けて ・先行して ・前もって ・予め(あらかじめ) ・先に ・先制して ・先手を打って
・機先(きせん)を制して ・早々と
これらが「先んじて」の類語や言い換え表現です。相手や状況に合わせてふさわしい言葉を選びましょう。
【「先んじて」と「先だって」は同じ?違う?】
実は「先んじて」の類語には「先だって」という言葉もあります。こちらは「さきだって」とも「せんだって」とも読んでOK! 「先だって(さきだって)」は「先んじて」と同じ意味です。ただし「先だって(せんだって)」のほうは、「先だってはお世話になりました」のように過去のことも表すことができる言葉。過去といっても昔のことではなく、「先だってご案内した件ですが」と言われてすぐにわかる程度の「少し前」「数日前」程度のことに使います。とはいえ、午前中のミーティングのことに関して当日中に「先だってのミーティングの」と使うのは不適切。直前のことに関しては「先ほどの」がよいでしょう。
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「先んじて」は敬語ではありませんが、かしこまったニュアンスを含む言葉でした。自分が使うだけでなく、部下や後輩があなたとの会話で使っていたら、その人“デキる語彙力”の持ち主ですね!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『使い方のわかる 類語例解辞典』(小学館)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社) :