「拠(よ)り所」や「手がかり」を意味する「よすが」という言葉。日常使うことはほとんどありませんが、懐かしい響きを感じる言葉です。この記事では「よすが」の意味や語源をはじめ、使い方がよくわかる例文をご紹介します。

【目次】

「拠り所」や「手がかり」を表す言葉です。
「拠り所」や「手がかり」を表す言葉です。

【「よすが」を理解するための「基礎知識」】

■「意味」

「よすが」は「身や心の拠(よ)り所、頼りとすること」という意味のほか、「身寄り、血縁者」「手がかり、方法」といった意味をもちます。縁でつながった、自分にとって大切なものを表す言葉です。

■漢字で書くと?

かな表記が一般的ですが、漢字では「縁」「因」「便」と書きます。

■「語源」は?

「よすが」は小説や俳句などで、書き言葉として使われることがほとんどです。古くは 「寄す処」と書いて「よすか」と読みました。「寄」という漢字の「うかんむり」は家を意味し、「奇」には「よりかかる」という意味があります。つまり「寄」は「家の中に身をよせること」を表しています。多くの人にとって、家は頼りになる心身の置き所ですね。いつの時代に「よすか」が「よすが」と音を変えたのかは不明ですが、実は「よすが」同様、「拠り所」という言葉も「寄す処」が語源となっていると言われています。


【「よすが」の「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「人は誰しも生きるよすがを求めるものだ」

「よすが」を「心のよりどころ」という意味で用いた例文です。対象となるのは、人やモノ、ペットなどだけでなく、「趣味」や「仕事」など、実体のないものも「よすが」になります。

■2:「高校卒業を目前に両親を亡くし、遠い親戚をよすがに上京した」

「頼りになる人」「身を寄せる人」という意味で「よすが」を使っています。

■3:「亡くなる直前、彼からもらったこの本を彼を偲ぶよすがとしよう」

■4:「残されたわずかな証拠物件が、事件解決のよすがとなった」

3と4では、「手がかり」「方法」として「よすが」が使われています。

【「類語」「言い換え」表現】

■拠り所

「よすが」と同じ語源をもつ「拠り所」。どちらも「頼みとするところ」「支えてくれるもの」という意味ですが、「拠り所」は「心の拠り所」のように精神的な支えを表す際に用いられることが多い言葉です。会話で使うのであれば、「よすが」よりも意図が伝わりやすいですね。

■手がかり

■足がかり

「よすが」「手がかり」「足がかり」の3つに共通する意味は「物事の新たな展開の助けとなるもの」という意味。「手がかり」は、手をかける所の意で、「次に起こす行動のための具体的なよりどころ」となるものを指します。「足がかり」は、足をかける所、足場の意から転じて、「物事を始めるときに大きな助けとなるもの」。どちらも日常の会話で使われるのに対して、「よすが」は主に書き言葉として使われます。


【「よすが」と「よるべ」の違い】

■「よるべ」の意味

「よるべ」は「寄る辺」と書きます。「よすが」の語源である「寄す処」と同じ「寄」が使われていることからもわかるように、「よるべ」も「頼りにして身を寄せる人や場所」のほか「頼みとする配偶者」を表します。

■「よるべない」とは

「よるべない人」のように用いられた場合は、「身を寄せる人や場所をもたない」という意味だけではなく、心から頼れる人をもたず、孤独で不安な心情も表しています。

■「よすが」と「よるべ」どう違う?

「よるべ」は「手がかり」や「足がかり」、「方法」という意味で使われることはありません。

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「よすが」は日常ほとんど耳にすることがないため理解するのが難しい言葉ですが、語源である「寄す処」の漢字を知ると、なんとなくイメージしやすいのでは? 意味がわからなくてとっさに困ることがないよう、意味や使い方を覚えておくといいですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)/『新選漢和辞典Web版』(小学館) :