「厚顔無恥」は中国の古典に由来する四字熟語です。「厚かましく恥知らず」という意味で、使用される際には非難のニュアンスが込められることが多い言葉ですから、間違った使い方をしないように気をつけましょう。例文では、どんな人が「厚顔無恥」なのかも解説します。

【目次】

非難のニュアンスを込めて使われることが多い言葉です。
非難のニュアンスを込めて使われることが多い言葉です。

【「厚顔無恥」を理解するための「基礎知識」】

■読み方

「厚顔無恥」は「こうがんむち」と読みます。

■意味

「厚顔」は「こうがん」と読み、「面の皮が厚いこと。恥知らずでずうずうしいこと」を意味します。「無恥」は「恥を恥と思わないこと」。このふたつを重ねた四字熟語である「厚顔無恥」は、同じような意味の熟語をふたつ重ねることで、意味合いを強調した表現となっています。「ずうずうしく恥知らずなこと」「あつかましく、恥を恥とも思わないこと」という意味です。

■厚顔無知は誤用

「むち」の字に「無知」をあてた「厚顔無知」は誤用です。「無知」とは「知恵や知識がないこと」。四字熟語として成立しませんので、注意してくださいね。

■由来は?

「厚顔」の由来は、中国の古典『書経』、あるいは『詩経』であるとされています。『書経・五子之歌(ごしのうた)』には、「鬱陶乎予心、顔厚有忸怩(悲しみにふさがれた私の心よ。 面の皮の厚い私も恥かしく思う)」と書かれています。


【具体的にどんな人のこと?「特徴」がわかる「例文」5選】

「厚顔無恥」は、「厚顔無恥も甚(はなは)だしい」などと、主によくない意味で人を形容する際に使われる言葉です。具体的な特徴としては、「他人の迷惑を顧みず、自分勝手な行動を取る人」や、「拒絶されても意に介さない人」など、「極めてずうずうしい人」が「恥じ入る様子を見せない」ことを指して、非難のニュアンスを込めて使われます。

■1:「お世話になった先生の前で不遜な態度を取るとは、厚顔無恥も甚だしい」

■2:「あれだけの失敗を笑って済ませようとするとは、厚顔無恥にも程がある」

■3:「世渡りがうまくて早く出世するのは、善人よりむしろ厚顔無恥なタイプのほうが多いかもしれない」

■4:「何度注意を受けてもへらへらと遅刻を続けるとは、なんて厚顔無恥な新人なのだろう」

■5:「『厚顔無恥になりたい』と、ポジティブに使われることもあるそうだ」

「厚顔無恥」は本来、「周囲の迷惑を顧みず、ずうずうしい人」を表す言葉でしたが、最近では「周囲の目を気にせず、のびのび好きなことをやったほうが気が楽だ」という意味合いを込めて、「厚顔無恥になりたい」というフレーズが使用されているようです。言葉は時代と共に新たな使い方や意味合いが加わり、変わっていくものです。新しい使い方も楽しみつつ、本来どのように使われてきたのかについてもしっかり押さえておきたいものですね。


【「厚顔無恥の恥知らず」とは?】

「厚顔無恥」という言葉にも「恥知らず」という意味がありますから、「厚顔無恥の恥知らず」は「重言(じゅうげん)」、つまり「同じ意味の言葉が重なった表現」です。「馬から落馬する」と同じようなもので、なんとなく変ですね。


【「厚顔無恥」の「類語」「言い換え」表現】

■無恥厚顔

■傍若無人

■鉄面皮

■ずうずうしい

■厚かましい

■恥知らず

「傍若無人」は「人のことなどまるで気にかけず、自分勝手に振る舞うこと」。「厚顔無恥」と似た言葉ですが、「厚かましい」というニュアンスはありません。「鉄面皮」とは、鉄でできた面(つら)の皮の意から、「恥知らずで、厚かましいこと」を意味する言葉です。

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「厚顔無恥」は「厚顔」と「無恥」、同じような意味の言葉を重ねた四字熟語です。「極めてずうずうしく恥知らずなこと」を意味し、多くの場合強い非難のニュアンスを込めて使われます。とはいえ、今は「厚顔無恥になりたい」人もいるそうですから、つくづく言葉とは生きものであり、おもしろいものだと思いますね。

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社)) :