中村勘九郎さん・七之助さん、春の御園座『陽春花形歌舞伎』登場｜「早替り合戦は、見ておいて損なし」

早替りには、坂東玉三郎さんそしてふたりの父である十八代目中村勘三郎さんの教えが…

名古屋・御園座で4月に開催される「陽春花形歌舞伎」。昼の部の『お染の七役』では、七之助さんが油屋娘お染、丁稚久松のほか、許嫁お光、後家貞昌、奥女中竹川、芸者小糸、土手のお六の7役を、夜の部の『怪談乳房榎』では、勘九郎さんがが菱川重信、下男正助、うわばみ三次の3役をそれぞれ早替りで勤めます。

上演演目について、勘九郎さんは「久しぶりの御園座ということで、どんな演目が良いか相談して、“早替り合戦”にということになりました。『怪談乳房榎』は僕がうちの父から手取り足取り教わった役。お客様に楽しんでいただける作品になると、自信を持っています」と演目への想いを語ります。

七之助さんも『お染の七役』を初役で勤めた2012年に、坂東玉三郎さんに稽古をつけてもらった思い出を「玉三郎のおじさまには、毎日のように稽古していただきました。稽古大好きな父ですら『また稽古するの？』とびっくりしていたぐらいでした（笑）」と振り返り、玉三郎さんからの教えについて「衣裳パレードのようになってはダメ」と教わったと役へのアプローチを明かします。「例えば首の傾け方が違うんです。例えばお染なら首の傾け方でお嬢様なんだなと身体のフォルムでわからせないといけない。声の高さや調子を変えるだけではダメなんです。」とそのコツを語りました。

中村屋のお二人の父である十八代中村勘三郎さんに習ったというルーツが、演目のタイトルにも銘打たれているのが『怪談乳房榎』。“三世實川延若より直伝されたる十八世中村勘三郎から習い覚えし”思い出を披露します。

「父が延若のおじさまから習ったお役で、お稽古から帰ってくると『面白いことを聞いたよ』と嬉しそうにしていました。僕も子供の頃から憧れていて、家でもホテルでも、シャワーで三次の立廻りの真似をしていましたね（笑）」と勘九郎さんは懐かしそうに振り返ります。

今は、勘九郎さんの長男の勘太郎くんが「シャワーで三次の真似をしてくれます。海外旅行でプールにシャワーがあると、すぐに三次をやるんです」なのだとか。中村屋に脈々と受け継がれる『怪談乳房榎』への想いを、微笑ましいエピソードと共に明かしていました。

名古屋は中村座にとっても所縁の地｜御園座は建て替え以来のお目見え

勘九郎さん・七之助さんが御園座に出演するのは約11年ぶり、2018年に同劇場が建て替えされてからは初登場となります。勘九郎さんは「初代中村勘三郎が尾張の出身ということもあり、中村屋はそもそも名古屋に所縁があります。祖父の十七代目中村勘三郎は、東京でなかなかお役がつかなかったとき、名古屋に行くと良い役ができるということで、名古屋に育ててもらったと恩を感じていました。父も名古屋と御園座が大好きでした。僕たちが子供の頃から連れて行ってもらっていたなじみのお店もありますね。今回久しぶりにそこに伺えるのも楽しみです」と陽春の名古屋に思いを馳せます。

「これまで何度も演じている作品ですけど、名古屋で上演するのは初めて。演じていても観ていても楽しい作品ですので、初めて歌舞伎をご覧になる方にもぴったりかと」と意気込みを勘九郎さんが。当日券限定ですが、今回は2階以上の席が半額になる学割も充実。エンターテイメント性の高い初見の方も飽きさせない2演目で、若い世代にも自信を持って中村屋がお届けする『陽春大歌舞伎』。早替りあり、本水（舞台上の本当の水を使った演出）あり…恋も裏切りも悪もお化けも…。歌舞伎ってこんなに面白かったのか…と発見できる演目がラインナップされています。チケットは3月2日（木）10：00より発売。