保奈美さんの愛読書からひも解く“知的好奇心”の源
ものを書くだけではなく、読むことも愛してやまない保奈美さん。今回は、膨大な愛読書のなかから8冊をセレクト。その読みどころについて、保奈美さんご自身に解説していただきました。
「とにかく本屋さんにいるのが大好きで、それが私にとっての至福の時間。フロア中を歩きながら『これおもしろそう!』『最近はこんな本が話題なのね』なんてリサーチしているうち、とっぷり日も暮れて。時間が許せば一日中過ごしていられるかもしれません。そうして気が付けば、カゴの中には大量の本。『これは次にしよう』『今日でなくてもいいよね』など、手放すのにもひと苦労。それでもけっこうな冊数をレジに運び、大切に家まで持ち帰るのです」
もちろんすべて完読できているわけではないし、ベッドサイドに積読になっている本もあるけれど、「活字に触れている」ことは保奈美さんの喜びであり、生活の一部になっているようです。
「ただ仕事柄、台本が来るとそれを読み込む作業に入るので、小説など物語の類いからは少し距離をおくことになります。そんなときに手に取るのは、エッセイや旅行ガイド、また世相や事象を柔らかく教えてくれる解説書など。今回選んだ8冊は、この1年で手に取り、読み込んだ私的ベストセレクション。こう並べてみると、『学びたい』気持ちが反映されている気がします。世の中はまだまだ知らないことだらけ。その知の海に飛び込む瞬間のワクワク感を、たまらなく愛しているのだと思います」
1:『サクッとわかる ビジネス教養 地政学』(新星出版社)|今、世界で起こっていること。その理由を柔らかく解説
「最近『地政学』という言葉をよく耳にしませんか?そこでイラストたっぷりのこの本で学んでみることに。私に為政者の気持ちはわからないけれど、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースに心を痛めるだけでなく、その奥にあるものを少しでも理解できたら。世界を知る助けとなる本です」
『サクッとわかる ビジネス教養 地政学』(新星出版社) 著=奥山真司 ¥1,320
2:『ヘルシンキ 生活の練習』(筑摩書房)|文化の違いに直面した社会学者による生活レポート
「『北欧に行きたいな』なんて軽い気持ちで読み始めたところ、いい意味で期待を裏切られました。フィンランドと日本の国民性の違い、国のシステムの相違…。保育園で、勤務先で、“目からウロコ” の体験をする著者。まさに “生活の練習” の日々が、社会学者の立場から、母親の目線から、熱意をもって語られます」
『ヘルシンキ 生活の練習』(筑摩書房) 著=朴 沙羅 ¥1,980
3:『11人いる!』(小学館文庫)|今なお読み継がれる漫画界の不朽のSF作品
「数ある萩尾望都作品のなかでも、これがいちばん好き。SFをベースに、ラブストーリー、冒険譚としても堪能できます。人種に対する差別意識やジェンダーの問題まで、刊行当時にはかなり早かったであろうテーマも盛り込まれていて興味深いです。大人になって読み直しても楽しめるのだから、漫画って素晴らしい」
『11人いる!』(小学館文庫) 著=萩尾望都 ¥618
4:『着服史』(ワニブックス)|ファッションアディクトの俳優による膨大なスナップ集
「まるで新書のような表紙をめくると、菅田将暉さんご本人のファッションスナップがずらり。この量を撮りためて編集するなんて、並大抵の熱量ではできないこと。ご本人は、ファッションはもちろん、あらゆる分野にアンテナを張るクレバーな方。生真面目な装丁を軽やかに裏切る、ポップでマニアックな内容に脱帽です」
『着服史』(ワニブックス) 著=菅田将暉 ¥1,980
5:『新版 一冊でわかる イラストでわかる 図解 宗教史』(成美堂出版)|宗教の歴史から最新知見までイラストで徹底解剖
「初詣に神社へ行き、墓参りにお寺を訪れ、教会でお祈りもする。そんな一般的な日本人の私にとって、世界の宗教はかなり複雑。ふと疑問が湧いたとき、ニュースを見ていて『どういうこと?』と感じたとき、ページをめくって何度も読み返しています」
『新版 一冊でわかる イラストでわかる 図解 宗教史』(成美堂出版)、監修=塩尻和子、津城寛文、吉永千鶴子 ¥1,650
6:『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』(NHK出版)|土を見る目が一変!バイオサイエンスの話題の本
「理系の分野は苦手なのですが、書店のトップ10の棚に並んでいて、思わず手が伸びた一冊。ただの土を “自ら生きたい土” に変えるために、さて何ができるのか。著者の人間的魅力が、その話し言葉に宿っていて、ぐんぐんと引き込まれてしまいます」
『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』(NHK出版) 著=ゲイブ・ブラウン 訳=服部雄一郎 ¥2,420
7:『ダンナの骨壺 幻の随筆集』(河出書房新社)|大女優にして随筆家。生活を見つめた珠玉の名文集
「友人から『これ、好きだと思うよ』とすすめられたエッセイ集。俳優でありながら、暮らしをしっかり見つめていて、日々の生活がオープンに綴られています。地に足の着いたその生き方、考え方がすごく爽快で、こういうスタンスで生きた人がいたことを知って背中を押される思いがしました」
『ダンナの骨壺 幻の随筆集』(河出書房新社) 著=高峰秀子 ¥1,760
8:『増補改訂版 眠れなくなる宇宙のはなし』(宝島社)|最新の発見まで網羅した宇宙論の決定版ロングセラー
「素敵な装丁に惹かれて手に取りました。読んでみると、私たちが今知っているのはせいぜい3、4次元だけれど、もっともっと多くの次元が存在し、『偶然』や『奇跡』と呼ばれることも、もしかしたら宇宙と関係しているのかも…。壮大な宇宙からちっぽけな自分を思うとき、少し気持ちが軽くなります」
『増補改訂版 眠れなくなる宇宙のはなし』(宝島社) 著=佐藤勝彦 ¥1,540
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- PHOTO :
- 浅井佳代子(人物)、池田 敦(CASK/静物)
- STYLIST :
- 犬走比佐乃
- HAIR MAKE :
- 福沢京子
- MODEL :
- 鈴木保奈美
- EDIT&WRITING :
- 兼信実加子、喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 本庄真穂