「人を呪わば穴二つ」ということわざをご存知ですか? なんだか物騒な文言ですが、実は自分を戒める際にも使います。今回はビジネストークでも意外と使える「人を呪わば穴二つ」について学びましょう。

【目次】

「送付させていただきます」より「送付いたします」が正解?
「人を呪わば墓二つ」という誤用に気を付けて!

【「人を呪わば穴二つ」の「意味」は?基礎知識】

■読み方

「ひとをのろわばあなふたつ」と読みます。

■意味

『デジタル大辞泉』(小学館)によれば、「他人を呪って殺そうとすれば、自分もその報いで殺されることになるので、墓穴がふたつ必要になる。つまり、「人を陥れようとすれば自分にも悪いことが起こるというたとえ」です。

■語源・由来

このことわざは平安時代に活躍した陰陽師(おんみょうじ)に由来します。陰陽師とは、中国発祥の陰陽道という特殊な占いを用い、吉凶災福に対応する呪術を行う宗教家のこと。安倍晴明(あべのせいめい)はよく知られた陰陽師ですね。官職のひとつで、権力者の依頼で敵対する者を呪術で呪い殺すことも仕事でしたが、その際には呪い返しも覚悟していたのだとか。「穴二つ」というのは、呪い殺す相手と自分用に墓穴をふたつ用意すること。それが「人を呪わば穴二つ」ということわざになりました。

■使い方

誰かを陥れるような行動をしたり、憎むような発言をする人を注意する際などに使うことわざです。自分を戒める場合に使うこともあるでしょう。他人を恨んだり憎んだりしても何も解決しない、結局は自分に返ってくるのだからやめるように、ということを表しています。


【「人を呪わば穴二つ」はビジネスでも使える?「例文」3選】

■1:「うまくいかなかったことを誰かのせいにしても解決しないよ。人を呪わば穴二つというじゃないか、今は対応策に注力しよう」

■2:「人を呪わば穴二つ、嫌な上司はできるだけスルーしたいところだね」

■3:「憎しみに囚われていても意味がない。人を呪わば穴二つ、さっさと忘れて前進するのみ!」


【「人を呪わば穴二つ」の「類語」「言い換え」表現

■類語

・因果応報 ・身から出た錆 ・自業自得 ・自分で蒔いた種 

・自爆 ・墓穴を掘る ・天に唾する

■言い換え表現

・人を祟(たた)らば穴二つ ・人を呪えば身を呪う ・人を憎むは身を憎む 

・人を謀(たばか)れば人に謀らる ・剣を使う者は剣で死ぬ


【「人を呪わば穴二つ」の「対義語」】

「人を呪わば穴二つ」は人を陥れようとすることを戒めることわざですが、この反対の意味とはどういうことでしょうか。

例えば「目には目を、歯には歯を」ということわざがありますね。これは紀元前の『ハンムラビ法典』に由来するもので、「(嫌な目に合っても)相手に危害を与えてはいけない」と示す「人を呪わば穴二つ」とは対義になります。一方で、「目には目を、歯には歯を」は、「自分が受けた害以上の危害を与えてはならない」という意味もあります。

「肉を切らせて骨を断つ」ということわざを聞いたことはありますか? こちらは、「与えられた以上の痛手を相手に負わせる」こと。剣道で強敵を倒すための極意として使われたのが始まりのようです。「自分自身も傷つく覚悟のうえで相手により大きな打撃を与える」ということなので、これも「人を呪わば穴二つ」の対義になります。


【英語で「人を呪わば穴二つ」を言うと…】

One's chickens come home to roost.

〔roost〕には「鳥のねぐら」や「鳥がねぐらに帰る」という意味が。「放し飼いにしているニワトリも、日が暮れれば小屋に戻る」ということ。「結局は自分に返ってくる」ことを表すので、「人を呪わば穴二つ」と同じような意味で使えます。

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今回ご紹介した「人を呪わば穴二つ」は、「人に対して行ったことは自分に返ってくる」ということでした。このことわざは人への悪意を戒める際に使うものですが、良い言動も自分に返ってくるもの。心して日々を送りたいものですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『世界大百科事典』平凡社/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『プログレッシブ英和中辞典』小学館 :