「承る」は「承りました」という接客や電話対応での定番フレーズとして使うケースが多いですよね。今回はこの「承る」がもつ4つの意味について、例文とともにご紹介します。また「(お話は確かに)うかがいいました」「承諾いたしました」というニュアンスの違いについても解説します。参考になさなってくださいね。

【目次】

「承る」には4つの意味があります。
「承る」には4つの意味があります。

【「承る」は敬語?「読み方」「意味」など「基礎知識」】

■読み方

「承る」は「うけたまわる」と読みます。

■意味は?敬語なの?

「承る」の語源は、上位者から命令などを「受け」て「いただく」の意の「受け賜る」です。そして、「承る」には以下の4つの意味があります。

・物や命令などを受ける
・聞く
・伝え聞く
・引き受ける

「承る」は上記4つの意味の謙譲語。つまり敬語です。

■ビジネスでよく使われる「承りました」の意味は?

ビジネスシーンでは、電話対応や、敬意を示すべき方からの依頼を受けた際に、「承りました」と応えることが多いですね。「(お話は確かに)うかがいました」「承諾いたしました」といった意味で使われますが、このふたつのニュアンスの違いについては例文で確認していきましょう。


【「承る」の「使い方」がわかる「例文」7選】

■1:「このたび、大役を承りました○○と申します」

「受ける」の謙譲語としての例文です。

■2:「ご要望、確かに承りました。社内にて調整ののち、改めてご連絡申し上げます」

■3:「ご意見、ありがたく承りました」

「承る」が「聞く」の謙譲語として使われた場合、「お話は確かにうかがいましたが、お返事は保留として、いったん(社に)持ち帰ります」といった意味でも使われます。

■4:「日程変更の件、承りました。では明日、どうぞよろしくお願いいたします」

この場合の「承りました」は「承諾いたしました」の意味で用いられています。

■5:「その件につきましては、担当の○○が承ります」

「聞く」の謙譲語としての「承る」の例文です。

■6:「私が承るところによりますと、○○部長は大変ご立腹とのことです」

「伝え聞く」という意味で「承る」が使われています。

■7:「ご予約、確かに承りました」

この場合の「承る」は「引き受けました」という意味になります。


【「承る」と「賜る」との違いは?】

まずは「賜る(たまわる」の意味を確認しましょう。物を与えたりもらったりすることを「授受」といいます。「賜る」は「授受」、つまり「もらう」と「与える」の両方を表す言葉です。「もらう」という意味を示す際には謙譲語「与える」という意味では尊敬語として使われます。謙譲語としての「賜る」は、目上の人からものをいただくこと。尊敬語の「賜る」は、目上の人が目下の人にものを与える、という意味です。つまり前者は「いただく」、後者は「くださる」という言葉に置き換えることができますが、「賜る」には「恐れ多い」というニュアンスが込められ、より丁寧な表現です。

では、「承る」と「賜る」はどう違うのでしょうか。「賜る」は物品の授受に使える言葉です。対して「承る」は相手から、助言や厚意など、なんらかのアクションを受けた際に使われる表現です。つまり、「承る」は「賜る」のように、物品の授受には使用できません。「金一封を承りました」といった文章は誤用ですから注意しましょう。また、「恩恵を賜る」とも言いません。


【 「承る」の「類語」「言い換え」表現】

「(物や命令などを)受ける」という意味なら

・謹んでお受けする

■「聞く」という意味なら

・うかがう ・拝聴する 

■「引き受ける」という意味なら

・かしこまる ・承諾する

「かしこまりました」は漢字で書くと「畏まりました」。「畏まる」には「命令・依頼などを謹んで承る意を表す」という意味がありますので、「承りました」とほぼ同じ意味で使えます。


【「承る」を英語で言うと?】

英語には「承る」のようにさまざまな意味をもつ言葉はありませんので、言い回しで謙譲のニュアンスを伝えることになります。

■「(物や命令などを)受ける」の謙譲表現にするには

・May I help you?(ご用命を承ります)

・What can I do for you?(ご用命を承ります)

■「聞く」「伝え聞く」の謙譲表現にするには

「聞く」の意味としては[hear]を使って敬語表現にします。

・I'd like to hear your opinion.(ご意見を承りたい)

・I hear that your child is sick.(お子さんがご病気だと承りました)

■「引き受ける」の謙譲表現にするには

・We will certainly comply with your request.(ご依頼の件、確かに承りました)

・I am willing to agree to your request.(ご要望、承りました)

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「わかりました」と伝える際、「了解しました」と言ってしまうこと、ありますよね。「了解しました」は、敬語表現のひとつである丁寧語にあたりますので、日本語としては正しいのですが、「それでいいですよ」というニュアンスを感じさせるため、一般的に目上の方に対しての使用は控えるべきとされています。目上の方に対する言葉使いとしては、「承りました」が正解です。相手との関係性も考慮しながら、適切で美しい言葉遣いを心掛けましょう。

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『敬語マニュアル』(南雲堂) /『これ1冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』(中経の文庫) /『角川類語新辞典』(角川書店) :