江戸時代には屋台で食べるファストフードだったという「天ぷら」。現在では、お座敷や職人さんと対面するカウンターで食べることもある、高級和食のひとつですよね。
お祝い事や接待などのちょっと改まった席で、品格ある大人の女性たるもの、天ぷらだって粋に味わいたいもの。うっかり無作法をして恥をかきたくありませんよね。それに、マナー違反の食べ方では、所作が美しく見えないだけでなく、せっかくの天ぷらの味を損ねてしまうこともあるようです。
というわけで、天ぷらを食べるときのNGマナーを『オトナ女子のための美しい食べ方マナー』の著者でマナースクール「ライビウム」代表の諏内えみさんに挙げていただきました。
■1:カウンター席で「揚げたての天ぷら」になかなか手をつけない
天ぷらは衣の食感を味わうためにも、揚げたてをサッと食べるのが粋。特に、カウンターで一品ずつ注文する場合、おしゃべりや写真撮影に夢中で揚げたてを放置するのは、職人さんに対して失礼にあたるおそれもあります。たとえば、“カウンターのお寿司は3秒で”などといわれますが、天ぷらも提供されてから1分以内にはいただくようにしましょう。
■2:「味の濃いもの」から注文してしまう
味の濃いものから食べると、あとから淡白な素材を食べたときに、繊細な味がわからなくなってしまいます。一品ずつ注文する場合は、白身魚やエビ、アスパラなどを先にして、アナゴやカボチャなど濃厚な味のものは後からオーダーしましょう。
■3:盛り付けを「崩して」食べる
一品ずつ注文するのではなく、盛り付けでいただく場合、自分の好きな素材から食べたい(もしく好物を残しておきたい)からといって、奥のものから取り、山を崩してしまうのは好ましくありません。天ぷらの盛り付けでは、味の薄いものが手前、濃いものが奥に配置されています。
つまり、味の薄いものからおいしく召し上がれますように、というお店側の配慮が込められているのです。自分の食べたい順番にこだわって山を崩すのは、お行儀がよいとは言えません。盛り付けは左手前から順に食べ進めましょう。
■4:天つゆにタネを「浸しすぎる」
天つゆにタネを浸しすぎると、素材の味や衣のサクサク感を損なってしまいます。また、箸先から水分がポタポタ垂れる“涙箸”は、典型的なお箸のNGマナーの一種です。タネをつゆにつける際は、天つゆの器を手に持って、タネをさっとくぐらせる程度にしましょう。
■5:塩にタネを直接つける
衣のサクサク感をより楽しむには塩でいただきますが、塩にタネを直接つけると、部分的につけすぎることに。塩を親指と人差し指で軽くつまみ、タネ全体にパラパラと均一にかけるようにしましょう。
■6:タネの下に「手を添えて」食べる
上品だと勘違いされがちなのですが、料理を口に運ぶ際に、食べ物の下に左手を添える“手皿”は、和食のNGマナー。つゆがこぼれそうな場合は手皿ではなく、小皿か懐紙で受け止めるようにしましょう。
■7:食べかけを器に戻す
天ぷらのタネは大小さまざまなものがありますが、たとえば、エビなど一口で食べきれないものは、食べかけを器に戻さないようにしましょう。食べかけが器の上で見えてしまうのは好ましくありません。器に戻さず、箸で持ったまま2~3口で食べきるようにしましょう。
なお、エビとは違ってイモなどのやわらかい素材の場合、一口に収まらないサイズのものは、箸で小さく切り分けてから口に運びます。
■8:エビの尾など食べ残しを散らかった状態にする
エビの尾やししとうの軸などを食べ残した場合、皿に散らかった状態で残しておくのは、品がよいとは言えません。食べ残しは皿の奥など1箇所に集めて、できれば小さく山折にした懐紙で隠すようにしましょう。
以上、天ぷらをいただく際のNGマナーを8つ、ご紹介しました。これらを押さえておけば、食べ方が優雅に見えるだけでなく、天ぷらをよりおいしく味わうことができそうですよね。美しい所作で、揚げたての天ぷらを堪能しましょう!
『オトナ女子のための美しい食べ方マナー』諏内えみ・著 三笠書房刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美