【目次】
【「良心の呵責に苛まれる」の「呵責」とは?「読み方」「意味」など「基礎知識」】
■読み方
「呵責」は「かしゃく」もしくは「かせき」と読みますが、「良心の呵責に苛まれる」という場合は「かしゃく」です。
■意味
「良心の呵責に苛まれる」の意味を、文章を分解して見ていきましょう。
「良心」とは「善悪・正邪を判断し、正しく行動しようとする心のはたらき」です。私たちは、何か気が咎(とが)めることをしてしまったり、他人を傷つけてしまったとき、罪悪感を抱いたり、うしろめたく感じてしまうものです。これを「良心が痛む」と言いますね。悪を退け、倫理的に正しい行いをせよと命じる心の声、これが良心です。
そして、「呵責」。「呵責」の「呵」は「責める・咎める」という意味があり、「責」には「当然果たすべき務め。責任」の意味のほか「呵責。厳しく咎めて叱ること」という意味もあります。
つまり「呵責」は同じ意味の言葉をふたつ重ねることで、非常に強い叱責を表した言葉なのです。良心に従って行動するのは理想とされてはいますが、いけないこととは知りながら「倫理に反する行いをしてしまった自分を、厳しく咎めること」を「良心の呵責」と表現するのです。
そして、「苛まれる」は、「苛む」の受け身形です。「苛む」には、「𠮟ったり、責め立てたりする」「苦しめる。いじめる」という意味がありますので、「苛まれる」は「責め立てられる。苦しみ悩まされる」という意味になります。
以上のことから、「良心の呵責に苛まれる」は「倫理に反する自分の行為を厳しく咎め苦しむこと」。つまり、いけないこととは知りながら、ついやってしまった自分の行為に対し、強い罪悪感を抱いて苦しむ状態を表現したフレーズと言えるでしょう。
■英語
「良心の呵責」を英語で表現してみましょう。
「良心」に相当する英単語は、「良心、道徳心」や「意識」を意味する[conscience]が使われます。苦痛や心痛などを意味する[pang]や、気の咎めを意味する[qualm]を一緒に用いた「a pangs(qualms) of conscience」は「良心の呵責」に近い言葉と言えます。
・He felt a pangs [qualms] of conscience.(彼は良心の呵責を感じた)
・He was so conscience-stricken,and he confessed (to) his crime.(彼は良心の呵責に耐えかねて罪を自白した)
【「良心の呵責」の「使い方」がわかる「例文」10選】
「良心の呵責」というフレーズが使われるのは、
・「悪いこととは知っていながら」
・「悪い結果を招くと予想できていたにも関わらず」
・「つい弾みで」
・「悪意はなかったが結果的に」「悪いことをしてしまった」場面です。
■1:「あれほどよくしてくれていた人たちを裏切って、彼は良心の呵責を感じないのだろうか」
■2:「仕方がないとはいえ、彼女の期待に応えられず、良心の呵責に苛まれた」
■3:「あなたに落ち度はなかったのだから、良心の呵責を感じる必要はないと思うよ」
■4:「ついカッとなり強い言葉で叱責してしまい、良心の呵責に苛まれる」
■5:「駅で困っている人を見て見ぬふりをしてしまったことが忘れられず、良心の呵責に苛まされた」
■6:「同僚の不正に気付いたにも関わらず、見て見ぬふりをしたことが、良心の呵責となっています」
■7:「社内調査で事実を隠したことが、いまとなって良心の呵責として重くのしかかっています」
■8:「顧客からのクレームに正直に対応しなかったことに、良心の呵責を抱えています」
■9:「部下の失敗を自分の責任としてかばえなかったことに、良心の呵責を感じています」
■10:「自分の昇進のために同僚を出し抜いたことが、今でも良心の呵責として残っています」
【「良心の呵責に苛まれる」の「言い換え」「類語」表現】
■「良心」の類語は
「心」「内面」「精神」などがあります。ただしいずれも「善悪を判断する働き」という意味は含まれていません。
■「呵責」の類語は
・問責(もんせき) ・面責(めんせき)
「呵責」と「問責」「面責」は、「過失や悪い点について叱り、責め咎めること」という共通した意味をもつ言葉です。違いとしては、「問責」は、責任を問い詰めることであり、「面責」は、面と向かって、責任、原因などについて責めたてることです。一方で「呵責」は心の中で自分の行為について叱り、責め苛むことです。
■「良心の呵責に苛まれる」の言い換え表現は?
・うしろめたさを感じる ・罪悪感に苦しむ ・罪の意識を感じる ・自責の念に駆られる 、悔やんでも悔やみきれない ・良心が咎める ・心にひっかかっている
「自責の念に駆られる」とは、「自分で自分の過ちを責め咎めること」です。
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「良心の呵責に苛まれる」は、「悪いことをしてしまった自分を強く責めて苦しむ様子」を意味します。人から言われて、のことではなく、あくまで自分自身の心の声として胸が痛む状況であるのがポイントです。「良心の呵責」を感じるシーンを経験したら、次は同じ過ちを繰り返さないよう、心の戒め、糧としたいものです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) :