「申し子」は「サッカーの申し子」や「時代の申し子」のように、「○○の申し子」といった使い方をすることが多く、「○○に関して卓越した才能やセンスに恵まれた人」あるいは「○○の特性を色濃く反映している人」といった意味で使われます。でも、実はこれらの意味は言葉の誤用から生まれたものでした。今回は「申し子」という言葉本来の意味をご紹介しつつ、その使われ方や類語を解説します。一緒に学びましょう!

「【目次】

本来は「神仏に祈願して授かった子供」を意味しました。
本来は「神仏に祈願して授かった子ども」を意味しました。

【「申し子」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「申し子」は「もうしご」と読みます。

■意味

「申し子」とは「霊力を備えたものから生まれた子」のことです。また、「霊力のような不思議な力を備えた子」を表す言葉でもあります。ここから転じて、特殊な社会的背景から生じたもの、時代などの特性を反映したものを「申し子」と呼ぶようになったのです。つまり、「時代の申し子」とは、その人が生きる社会的な背景や世情を色濃く反映した人、という意味になります。また、「(霊力かと思われるほど)素晴らしい才能やセンスに恵まれた人」も「申し子」と言われます。

■語源・由来

実は、前述の「霊力を備えたものから生まれた子」という解釈は、「申し子」の誤用から生まれたものでした。

本来「申し子」とは、神仏への祈願、あるいは霊夢のお告げによって「授かった」と信じられた子どもを指す言葉でした。英雄や高僧の伝記にはこうした伝承が付け加えられているものが多く、昔話の世界の主人公はそのほとんどが「申し子」と呼ばれる子どもです。例えば「一寸法師」や「ものぐさ太郎」、あるいは「桃太郎」などに見られる「異常誕生譚 (たん) 」などもその類で、いずれものちのちは神仏の導きなどで優れた人格に成長するのが特徴です。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「子のない夫婦が神仏に祈願する、いわゆる「申し子信仰」は今でも「子授け祈願」として残っている」

最初にご紹介した例文は、「申し子」が本来の意味である「神仏に祈願して授かった子ども」という意味で使われています。

■2:「鼻の高い人、つまり高慢な人を喩(たと)えて『天狗(てんぐ)の申し子』と言う」

こちらは「霊力を備えたもの(ここでは天狗)から生まれた子」として「申し子」を使っていますね。

■3:「幼稚園児にしてスマホを使いこなす姪は、まさに時代の申し子と言えるだろう」

「時代の申し子」とは、「その人が生きる時代の社会的な背景や世情を色濃く反映した人」という意味になります。

■4:「彼女の流麗なプレイを見ていると、まさにテニスの申し子という言葉が頭に浮かぶ」

最後の例文は、「(霊力かと思われるほど)素晴らしい才能やセンスに恵まれた人」という意味で「申し子」を使っています。


【「申し子」を「英語」で言うと?】

「神仏に祈願して授かった子」という意味での「申し子」に相応する英語表現は[a godsent child]です。[a heaven-sent child]とも表すことができます。

・This boy is a godsent (a heaven-sent) child .(この男の子は天の申し子だ)

「時代の申し子」は[a child(product)of one's generation]という表現が可能です。


【「申し子」と似たような意味をもつ「類語」「言い換え」表現】

■落とし子

「落とし子」と「申し子」は、どちらも意味の誤用から「特異な存在・状況から生み出されたもの」の意としても使われてきた言葉です。「落とし子」は本来、「身分の高い人が正妻でない女性に産ませた子」のことでした。「塾は受験戦争の落とし子だ」のように、意図されたのではなく、ある事に付随して自然に生じた結果の事柄、という意味でも使われます。「申し子」のほうが肯定的なニュアンスが強い言葉です。

■化身

「化身」は「神仏などが姿を変えてこの世に現れること」を指す言葉です。超越した存在が現実に人となって表れた、という意味で「申し子」と似た言葉となります。

■寵児

「寵児」にはふたつの意味があります。ひとつは「特別に愛される子ども。いとし子」。ふたつ目が「世間でもてはやされている人」という意味です。「社会や世情を反映した人」という意味が「申し子」と共通しています。

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いかがでしたか? 「申し子」は本来、「神仏へ祈願して授かった子ども」のことでした。意味の誤用から派生して、現在では「世相を色濃く反映する人」「素晴らしい才能やセンスに恵まれた人」という意味で使われています。ちなみに「申し子」の対義語はなんでしょうか? 厳密な意味での対義語はありませんが、「普通の人。ただの人」という意味では「凡人」と言えるかもしれません。

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