「ありがたくて後光が差して見えた」「あまりにも美しくて後光が見える」などと使う「後光」は、そもそも仏教的な意味合いの言葉ですが、日常的にも用いられています。今回は、この「後光」を理解していきましょう。
【目次】
【まずは「後光」を正しく理解!】
■読み方
「後光」は「ごこう」と読みます。
■意味
実はいくつか意味があります。順番に見ていきましょう。
(1) 仏や菩薩の体から発するという光。また、仏像の後ろに表した金色の光のこと。「後光が差して見える」という使い方をする場合は、「仏さまが放つ光のように輝いて見える」ということです。
(2)遊女などの笄(こうがい)や簪(かんざし)といった、豪華な髪飾りをたとえていう語。大きく盛り上げて結った髪に、仏さまの後光のように放射状に笄を差した様子を、「花魁道中での衣装や後光は、さすが天下一と言われる高尾太夫だな」などと時代小説に書かれます。
(3)高山や水田で、霧が出ているときに光源や陰影のまわりに円形に見える色のついた光のこと。大気中の水滴により、太陽光線が回折して生じる。また、一般的に光線が放射状に広がって見える現象をいいます。
【「後光」の使い方がわかる「例文」3選】
今回取り上げているのは前章の(1)の意味での「後光」です。本来の意味は聖人などの尊い人や、神仏の背後から放たれる光のことですが、一般の会話で私たちが使用する際の使い方を見てみましょう。
■1:「後光が差して見えるほど、先輩のプレゼンは完璧でした!」
■2:「言葉遣いや話し方、仕草や表情まで、彼女の美しさは後光が差していた」
■3:「一気にブレイクしたのは、広告の後光効果によるところが大きいだろう」
3の「後光効果」とは、先入観が公平な評価に支障をきたすという心理現象のこと。これを利用して、広告などで先入観を植え付けることがあります。例えば、「清潔感があって穏やかで外見のいい人は信頼できる」という思い込みも「後光効果」です。これは、ハロー効果、とも言います。
【「後光が差す人」の具体的な「特徴」は?】
■何かに秀でている
■人柄がいい
■親切
■信頼できる
■心が清らか
■穏やか
■美しい(容姿だけでなく、所作や言葉遣いなども)
■実力がある
■立派
■尊敬できる
【「後光」と「背光」は同じ?「類語」「言い換え」表現】
■光背(こうはい)
「後光」を辞書で引くと、「仏像の後ろに表した金色の光。光背。背光」といった記載もあります。この「光背」は「後光」と同じ意味です。仏さまの超人さを形容して、神仏が光り輝くさまを仏像の背後に光明として表したものが「光背」なのです。「光背」にも、仏像の頭の後ろに用いる「頭光(ずこう)」と、体の後ろに用いる「身光(しんこう)」があります。要するに、光り輝くさま(後光)を目に見える形にしたものが「光背」というわけです。
■光輪(こうりん)
「輪」は円満を意味し、煩悩を砕く働きをたとえ、仏さまや菩薩の体から発する「円満の光」を意味します。「光輪」は、衆生(しゅじょう/生命のあるもの、特に人間を指す)の煩悩を鎮める「慈悲の光」のことです。
■円光(えんこう)
仏さまや菩薩の頭の後方から放たれる光の輪のことです。
■オーラ
人体から発散される霊的なエネルギー。転じて、ある人や物が発する独得な雰囲気のこと。「オーラを発する」などと使いますね。
【「英語」ではなんと言う?】
後光は[halo]という英単語で表すことができます。これは、「聖像の光輪」や「理想化された人物の栄光」といった意味をもちます。例文3の説明で少し触れた「ハロー効果」は英語では、halo effect. と言います。
■a halo
The saint has a halo around his head.(聖者の頭に後光が差している)
The halo light is coming from behind him.(彼の背後から後光が差している)
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大谷翔平選手のような超人的なスターに後光を感じる人は多いでしょうが、ほかに並ぶもののない、特別に秀でている人以外にも「後光」を感じるシーンがあります。例えば大ピンチに陥ったときや、絶望的にしんどいときに、そっと寄り添ってくれたり、実務的に助けてくれる人が現れたとき。神さま降臨ー!という感激のなか、その人に「後光」を感じること、ありますよね。むしろ私たちが「後光」を感じるのは、そういったシーンのほうが多いのかもしれません。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :