よい意味でも悪い意味でも、なぜか頭にこびりついて離れない言葉ってありますよね? これが「パワーワード」です。「インパクトの強い言葉」という意味ですが、SNSで広く拡散される以前は、少し違う使われ方をしていたようですよ。ということで今回は「パワーワード」の意味や使い方、類語について解説します。

【目次】

内容に関わらずインパクトが強ければ「パワーワード」です。
内容に関わらずインパクトが強ければ「パワーワード」です。

【「パワーワード」とは「名言」のこと?「意味」など「基礎知識」】

■意味

『現代用語の基礎知識』によれば、「パワーワード」は「人にインパクトを与える強い言葉」を指す言葉です。もともとはSNSで広まったネットスラングでしたが、今ではネットを利用しない人にも広く浸透し、「頭から離れない言葉」「破壊力のある言葉」といった意味で使われています。

「パワーワード」の特徴は、「よくも悪くも印象に残る強い言葉」である点です。なるほど…!と納得させられる含蓄のある言葉もあれば、挫けそうになったときに励ましてくれる言葉や、自分の中のネガティブな感情をかき立てるような言葉も含まれます。内容に関わらず、インパクトさえあれば「パワーワード」です。そのため、どんな言葉を「パワーワード」だと感じるかは、人それぞれ。つまり、万人に共通した「パワーワード」は存在しない、とも言えます。

■語源は「英語」なの?

「パワーワード」は、「Power(力)」と「Word(言葉)」という、ごく一般的な英単語を組み合わせた言葉であるため、語源は明確には特定できません。「インパクトのある言葉」という意味であれば、英語でもそのまま[power words]で通じます。履歴書や面接など、自己PRが重要な場面でも効果を発揮します。

■いつから、なぜ流行った?

「パワーワード」は2010年代から広く使われるようになったと言われ、「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語 2017』」においては、大賞の「忖度」、2位の「インフルエンサー」に続く、3位に選ばれています。

もともと「パワーワード」は、「説得力のある言葉」や「自分を励ましてくれる言葉」、「深い意味を感じさせる言葉」といった意味で使われていましたが、SNSにより一般に広く浸透した過程で、「インパクトのある言葉」としての「パワーワード」が拡散されたため、現在のような使われ方になったようです。


【使い方がわかる「例文」5選】

SNSでは、「○○がパワーワードすぎる」「それってパワーワードじゃない?」のように使われています。一方でビジネスシーンで使われる「パワーワード」は、「力を与えてくれる言葉」「鼓舞してくれる言葉」という意味で使われることが多いですね。あるいは「相手の心に訴えかける力をもつ言葉」という意味ももつようです。

■1:「仕事で行き詰まったとき、大好きなアニメのパワーワードが背中を押してくれた」

■2:「新人の○○さんの履歴書を見たけど、△△大学密教学科卒というパワーワードがカッコよすぎる」

■3:「広告のキャッチコピーには、消費者の購買欲をさり気なく喚起するパワーワードが必要とされている」

■4:「あまりにも有名な、『パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない』というマリー・アントワネットのパワーワードは、実は彼女の発した言葉ではないそうだ」

■5:「誰の心にも届くパワーワードって、実は昔からみんな知ってるシンプルな言葉だったりする」


【「漫画」や「アニメ」から出た有名な「パワーワード例」】

■「あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」

1990年から1996年まで『週刊少年ジャンプ』にて連載された『SLAM DUNK』。2022年に公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』は国内観客動員数1000万人を突破し、さらに記録を伸ばしています。この漫画の中で湘北高校バスケットボール部顧問の安西先生が発した言葉はまさにパワーワード。多くの人の記憶に残る名台詞です。

■「俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった」

ご存じ『鬼滅の刃』の主人公、竈門炭治郎のセリフ。大けがを負いながら、鬼と戦うことになったときに発しました。家父長制や長子相続が根強かった大正時代を舞台とした作品であることが前提としてありますが、生真面目な長男キャラの炭治郎の性格をよく表しているセリフでしたね。なんとなくユーモラスでもあります。ほかにも煉獄杏寿郎の「心を燃やせ」など、『鬼滅』はパワーワードの多い漫画でした。

■「だが断る」

こちらはSNSでよく見かける言葉ですが、元ネタをご存じですか? こちら、『ジョジョの奇妙な冒険 』に登場する岸辺露伴のセリフです。敵に囚われ、味方を裏切れば助けてやると持ちかけられた露伴は、1度は要求をのむフリをしますが…「だが断る」と、敵に毅然と「NO」を突きつけます。つまりこのパワーワードは、「○○して!」「○○したら△△してくれる?」「もちろん!」「だが断る」という会話の流れの中で使うのが正解です。

■「アムロ、行きまーす」

『機動戦士ガンダム』に関するパワーワードと言えば、アニメを観ていない人でも知っている「アムロ、行きまーす」が有名ですが、実はこのセリフは決め台詞として多用されていたわけではなく、アニメでは一度しか出てこないそうです。モノマネやパロディなどで多用されたために広がった言葉の典型です。


【「類語」「言い換え」表現】

■名言

■金言

■格言

「名言」「金言」「格言」のいずれも、「人生に関わる真理や指針、戒めを短く言い表わした言葉」という意味です。「パワーワード」とは少々意味合いが違いますが、結果として、時代や国を超えて語り継がれるような言葉は「パワーワード」でもあると言えます。

■「キャッチコピー」

「キャッチコピー」は「人の注意を引く広告文、宣伝文」を指します。広告業界において、消費者への訴求力を高めたり、商品への興味を惹きつける言葉は、間違いなく「パワーワード」です。

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「パワーワード」は有名なアニメや映画の中だけに存在するのではなく、誰もが経験する何気ない日常にも潜んでいます。若者世代は、そんな「パワーワード」をSNSに上げ、仲間内で共有することで楽しんでいるようですよ。彼らにとっては「パワーワードの共有」はすなわち「価値観の共有」であるのかもしれませんね。

この記事の執筆者
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参考資料:『イミダス』(集英社) :