雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、企業弁護士、ソン・スヨンさんの活動をご紹介します。

ソン・スヨンさん
企業弁護士
ソウル大学法学部卒業後、弁護士に。’03〜’04年サムスン証券リサーチセンター金融チームの研究員に。現在は法務法人セジョン所属、社内ESGセンターの副センター長。金融、ESG経営を中心に幅広い業務を行う。

韓国金融界に新風を吹き込むESG経営を専門とする女性弁護士

韓国の大手金融機関「ウリ金融証券」の’23年度持株総会社外理事に、女性としては初めてスヨンさんが選ばれ、話題を呼んだ。昨年改正された資本市場法により、「総資産額2兆ウォン以上の上場企業は理事会を単一の性で構成することはできない」とされたことによる人選ではあるが、とはいえ、40代で大企業のトップたちと自由な意見交換を行う彼女の存在は、韓国社会ではまだまだ希少だ。

「金融証券の持株理事会に私のような女性が来たら、全体の雰囲気も変わるだろう、ということで選ばれたようです。緊張はしましたが、私が専門とするESG経営(※)への助言が求められていたこともあり、自信はありました」

スヨンさんは、大手弁護士事務所のパートナー弁護士として活動するかたわら、複数の企業からESG経営関連プロジェクトの諮問を任されている。ESG経営とは、環境・社会・ガバナンスの3要素を重視する経営方法のことで、韓国でもここ2〜3年の間に急激に浸透してきた。スヨンさんも、3年前に担当した顧客から、「炭素排出量の多い企業への投資はできない」という話を聞き、ESG経営を学び始めたという。

「炭素排出量の測定と削減に関連するプロジェクト、経営における人権尊重の取り組み、そして女性リーダーシップの向上。男性社会の金融業界にあって、こうした目標を達成するための効果的な経営への助言をすることには、とてもやりがいを感じています」

所属する弁護士事務所でも、ESG経営分野で存在感を発揮している。職場のあちこちに飾られた小学生の娘ふたりの写真が微笑ましい。法の立場から韓国社会を変えていく新たなリーダーである。

【SDGsの現場から】

●50名近くの弁護士のリーダー的存在

サステナブル_1,インタビュー_1
社内のESGセンター副センター長として、50名近くの弁護士と共に、業務と情報交換を行う。

●ESG経営の専門家としてイベントにも登壇

インタビュー_2,サステナブル_2
金融業界ではまだまだ女性の発言権は小さい。スヨンさんは専門家としてイベントでも発言。

※ESG経営とは…環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった用語。企業価値を高め、長期的発展に重要な要素に。

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PHOTO :
Zhi Xiang
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT :
正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
取材 :
大瀬留美子