雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、「ブラインドライターズ」代表、和久井香菜子さんの活動をご紹介します。

和久井香菜子さん
「ブラインドライターズ」代表
(わくい かなこ)就職情報誌編集などを経てフリーランスの編集・ライターに。少女漫画研究家としても活動。著書に『わたしたちもみんな子どもだった 戦争が日常だった私たちの体験記』『首都圏 バリアフリーなグルメガイド』ほかがある。

耳で聴き、適切に文字に起こす視覚障がい者のこれぞプロ!な仕事

「ブラインドライターズ」は、視覚障がい者を中心にしたスタッフによる音声の「文字起こし」のプロ集団。「文字起こし」とは録音した音源内の会話などをテキストにしていく作業で、取材や講演、セミナー、会議の記録になる。

「’15年に、私が急ぎの仕事で困っていたとき、知人が紹介してくれたのが、視覚障がい者の女性でした。その仕事の速さとクオリティに驚嘆したことをきっかけに、事業を開始。障がい者問題に目が向くようになりました。当事者との接点も増え、ブラインドライターズの仲間も広がっていき、法人化したのが’19年のこと。現在は視覚障がいのほか、下肢障がい、過敏症など何かしらの障がいをもつ約40名で運営しています」

スタッフは全国にいて、データのやり取りも打ち合わせもすべてリモート。ハードルのひとつとなる移動の必要がない。和久井さんも「PCひとつでみんなとつながりながら仕事をしています」。

「目が見えないからといって、全員が耳がいいわけではない。逆に、障がいがあるからといって、働くことすべてが難しいわけでもない。健常者にだって得手不得手があるわけですからあたりまえなんですが、身近に障がい者がいないと、なかなかそういう想像ができないんですよね。すべてをひとくくりにせず、それぞれの特性を見極めながら、プロフェッショナルの仕事をしていく。それが、誇りにも喜びにもつながる」

AIにはできない仕事を目指す。

「文字起こしの先、企業の『社外編集部』として冊子などの制作を請け負うプロダクション業を始めました。この事業を続けていくためにも、進化することが必要だと感じています」

【SDGsの現場から】

●バリアフリーな交流を企画

サステナブル_1,インタビュー_1
児童クラブで子供たちが視覚障がい者と触れ合うイベントなども開催。点字もレクチャー。

●冊子や書籍の編集も手掛ける

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編集プロダクション業務にも力を入れる。文字校正や取材・執筆を得意とするメンバーも活躍。

※視覚障がい者の文字起こしとは…文字情報を音声にして読み上げるスクリーンリーダー(音声読み上げソフト)を使用することで、テキストにした後の校正もできる。

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PHOTO :
篠原宏明
EDIT :
正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
取材・文 :
剣持亜弥(HATSU)