「目は口ほどに物を言う」は、「たとえ言葉がなくても、目を見ればその人の人となりや思いがわかる」という意味のことわざです。「目は多くを語る」からこそ、うしろめたい人ほど、人と目を合わせたがらないのでしょうね! 今回は「目は口ほどに物を言う」の使い方がわかる例文や類語、英語表現を含めて解説します。

【目次】

「目は心の鏡」とも言われます。
「目は心の鏡」とも言われます。

【「目は口ほどに物を言う」を理解するための「基礎知識」】

■読み方

「めはくちほどにものをいう」と読みますね。

■意味

「目は口ほどに物を言う」は、「情のこもった眼差しは、口で話すのと同じように気持を相手に伝える」ことを意味することわざです。目は、言葉こそ語りませんが、ときに言葉以上の想いを相手に伝えるものです。「物を言う」という言葉は「言葉を発する」という意味をもちますが、ほかに「効力を発揮する。役に立つ」という意味もあります。つまり、「思いのこもった目つきや眼差しは、口と同じように(意志や思いを伝えるのに)効果がある」という意味でもあるのです。

怒りに満ちた眼差しや、恋する想いが溢れ出しそうな切ない瞳、あるいは冷ややかな侮蔑の視線…。その人の喜怒哀楽や想いを、眼差しが寡黙にして雄弁に語ることを、「目は口ほどに物を言う」と表現します。裏を返せば、口先の言葉で飾り偽ったとしても、目を見ればその真偽がわかることも意味しています。

■由来

このことわざの由来となる具体的な文献や出来事は、特定できません。ただ、日本には「目が肥える」「目力がある」「目から鱗(うろこ)」「目の色が変わる」「目が泳ぐ」「恋は盲目」などなど、「目」という単語を使って、その人の状態や気持ちを表すフレーズやことわざが数多くあります。つまり、「目」は人の喜怒哀楽の感情や思惑を顕著に表すパーツであることが、とても古くから認識されていたのです。ここからやがて「目は口ほどに物を言う」ということわざが生まれたとされています。


【「使い方」がわかる「例文」3選】

■1:「彼の、彼女を見る目に気付けば、誰だって彼が彼女に対しどんな感情を抱いているのかわかるはずだよ。まさに“目は口ほどに物を言う”だよ」

■2:「“目は口ほどに物を言う”と言うが、彼の怯えたような瞳を見た瞬間、私は彼が嘘を言っているとわかった」

■3:「どれほど優しく、きれいな言葉で飾ろうと、私は彼の目が少しも笑っていないのに気付いていた。目は口ほどに物を言うというが、本当だね。結局、彼の行動はすべて打算だったということだ」


【同じ意味の「四字熟語」は?「類語」「言い換え」表現】

■以心伝心

「以心伝心」は仏教用語に由来する言葉で「仏法の奥義を、言葉や文字を使わずに、師の心から弟子の心に伝えること」を意味しています。ここから「無言のうちに心が通じ合うこと」を表すようになりました。「言葉を使わずに思いを伝える」という意味で、「目は口ほどに物を言う」と共通した意味をもっていますね。

■目は心の鏡

「目は心の鏡」は、「目はその人の心の中を映し出す鏡である」という意味。目を見れば、その人の心の在りようがわかることのたとえです。これは、中国の儒学者「孟子」の言葉が由来となっています。「目は口ほどに物を言う」と、とてもよく似た言葉ですね。

■目は心の窓

「目はその人の心の中を覗かせる窓である」という意味の言葉で、「目を見れば、その人の善悪がわかる」ことを喩えています。「目は心の鏡」と同じ意味で使われます。

■なるか成(な)らぬか目元で知れる

「承知、不承知は相手の目元でわかる」という意味のたとえです。恋愛の場面で使われることも多いことわざですね。


【「対義語」は?】

「目は口ほどに物を言う」の対義語はありません。


【「英語」のことわざはある?​】

では、「英語」のことわざに同じような意味のものはあるのでしょうか? ふたつ、ご紹介します。

■The eyes are as eloquent as the tongue.(目は舌ほどによくしゃべる)

■The eyes have one (or a)language everywhere.(目は万国共通の言葉)

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「鬼滅の刃」に出てくる上弦の鬼「玉壺」は、本来なら目があるべき場所に口のある鬼でした。とても饒舌に、俗な言葉で芸術を語る「玉壺」は、その奇異な風貌で自らが中身のない存在であることを表してしていたのかもしれません。小倉百人一首の中でとても人気のある歌に「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで」があります。秘めた思いは、それが真摯なものであればある程、語らずとも眼差しやちょっとした仕草から、溢れ出てしまうものかもしれません!

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :