「言外」とは「言葉では表されていない部分」という意味の言葉です。言葉としては理解していても、自分では使ったことのない人も多いのでは? 今回は「言外」の意味や言い換え表現、そして悩ましい「二重表現」についても解説します。

【目次】

「ごんがい」は誤読です。
「ごんがい」は誤読です。

【「言外」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「言外』の読み方はふた通り。「げんがい」と「いいはず(づ)し」です。「ごんがい」と誤読する人も多いので、気を付けてくださいね。

■意味

「言外(げんがい)」とは「言(言葉)」の「外」、つまり「言葉にしていない部分」という意味をもちます。直接、言葉では表現されていない、気持ちや事実などのことです。一方、「言外(いいはず(づ)し)は「言いそこない」という意味ですが、現在使われることはあまりないようです。


【「例文」で使い方をチェック!】

「言外」が使われるシーンでは、「言葉と本心」は一致していません。あえて「言葉」にはしていない気持ちや事実を仄めかしたり、言葉とは裏腹に本心が滲(にじ)み出てしまったときに「言外」が使われるのです。

■1:「私は彼の表情から、言外の意図を必死に読み取ろうとした」

■2:「彼女はSNSに思わせぶりな写真をアップすることで、言外に彼の存在を匂わせていた」

■3:「互いに言外の気持ちを汲み取りコミュニケーションを取るのは、日本人が得意とするところだ」

■4:「優勝者をハグで祝福してはいたが、彼女の悔しさは言外に滲(にじ)み出ていた」

■5:「彼女は『あー、忙しい忙しい』と、わざとらしく大声で口にすることで、言外に『行きたくない』という気持ちを周囲に示していた」


【「類語」「言い換え」表現】

■「言葉にしていない部分」という意味での言い換え表現

・余情
「余情」は「よじょう」と読みます。「あとまで残っている、印象深いしみじみとした味わい」と「詩歌などで、表現の外に感じられる趣」というふたつの意味があり、近世までは「よせい」とも読まれました。「余情」は特に、和歌や連歌、俳諧などで尊重されることで知られています。

・暗示
「暗示」とは「物事を明確には示さず、手がかりを与えてそれとなく知らせること」。

■「言外に示す」「言外に匂わせる」などのフレーズの言い換え表現

・仄めかす

・含みをもたせる

・示唆する

■「言外の気持ちや意図、事実を汲み取る」の言い換え表現

・空気を読む

・表情を読む

・行間を読む


【二重表現や誤用など、使う際の「注意点」】

「二重表現」とは、同じ意味の言葉が重なった表現のことで「重言」とも言います。「頭痛が痛い」「馬から落馬する」などがわかりやすい例です。「二重表現」がすべて間違いとは一概に言えませんが、「頭痛が痛い」のように明らかに奇異に感じるものは誤用と言っていいでしょう。

「言外」に関して言えば、上記に挙げた「類語」「言い換え表現」を、「言外」と一緒に使った場合、理屈の上では「二重表現」となります。

■NG:言外の余韻

■NG:言外の暗示

■NG:言外の含み

確かに上記の言葉はいかにも意味が重複して、違和感がありますね。では、次に挙げるフレーズはどうでしょう。

■言外に仄めかす

■言外に含みをもたせる

■言外に暗示する

上記の3つはどれもシンプルに「言外に示す」としたほうがすっきりする「二重表現」です。とはいえ、「言外に仄めかす」が「二重表現だから誤用」であれば「言外に匂わせる」も同様に誤用となりますし、辞書では用例として挙げているものもいくつもあります。国語辞典編纂者の飯間浩明さんは著書『日本語はこわくない』(PHP研究所 )の中で、「重言は、珍しくて奇異に感じるものから、誰が使っても気にならないものまで段階があります」としたうえで、「考えてみると、『歌を歌う』『踊りを踊る』だって、重言と言えば重言です。重なっていればすべて悪いわけではありません」と書いています。「重言」の境界線は曖昧ですから、明らかに誤用とわかるもの以外は、あまりシビアに考える必要はないのかもしれません。

■NG:言外に言う

こちらは言葉として矛盾がありますね。「言外」は「言葉にしていない部分」という意味ですから、それを「言う」のでは意味が通じません。


【「英語」で言うと?】

「言外」に相当する英単語は「表現されていない」という意味の[unexpressed]や、「言外の、暗黙の」という意味の[implied]が挙げられます。

「言外の意味をくみ取る」は[catch the implied meaning]、「行間を読む」は[read between the lines]と表現できますよ。

***

「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。大切なことは目に見えないんだよ」。サン-テグジュペリの『星の王子さま』(岩波書店 他)に出てくる言葉です。目に映るものが必ずしも真実ではないように、言葉にした気持ちだけが真実であるとは限りません。コミュニケーションにおいても、むしろ「言外」にこそ、本心や真実は隠れているのかもしれませんね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『日本語はこわくない』(PHP) :