「さしずめこんな予算感でOKだろう」「さしずめ彼しかいないというわけか」というように、ビジネスシーンでもよく使われている「さしずめ」という言葉の意味を正しく理解していますか? 実は、この例文のように副詞として使う場合と、名詞や形容動詞としての「さしずめ」には似ているようで大きな違いがあります。今回は「さしずめ」についてスッキリ解決します。

【目次】

「さしずめキミが適任だ」と言われたら?
「さしずめキミが適任だ」と言われたら?

「さしずめ」の「意味」「漢字」は?】

■意味

まずは「さしずめ」の意味について、しっかり把握しておきましょう。名詞や形容動詞としての「さしずめ」は、「(1)直接関わること、またそのさま」「(2)行き詰ってしまうこと、またその状態」を表します。そして、副詞としての「さしずめ」になると、「(3)結局、詰まるところ」「(4)さしあたり、今のところ」という意味に。冒頭でご紹介した「さしずめこんな予算感でOKだろう」は(4)、「さしずめ彼しかいないというわけか」は(3)の意味で使われています。

■漢字

「さしずめ」を漢字で書くと「差し詰め」となります。ここで、漢字からも意味を把握しておきましょう。

「差し」は「差す」の連用形で、動詞の前について意味を強めたり、語調を整えたりします。会見などでよく「差し控えさせていただきます」や「差し支(つか)えなければおうかがいできますか?」というように使われていますね。「詰める」にはたくさんの意味があります。「容器に物を詰める(=ぎっしり入れる)」「ズボン丈を詰める(=短くする)」「営業所に詰める(=待機する)」などは日常的に使っているでしょう。「上り詰める」「追い詰める」「問い詰める」「通い詰める」「張り詰める」などは、「最後・限界まで~する」という意味ですね。


【「さしずめ」と「さしづめ」どっちが正解?】

漢字で「差し詰め」なら仮名表記では「さしづめ」なのでは?――と疑問に思った人もいるでしょう。実は「さしづめ」は「歴史的仮名遣い」や「旧仮名遣い」といわれる、平安時代中期以前の文献をもとにした表記です。現代語を書き表すための表記として昭和21年に成立した「現代仮名遣い」では「さしずめ」となるわけです。一般的には「さしずめ」でも「さしづめ」でも問題ありませんが、新聞や書籍などでは現代仮名遣いの使用が慣例化しています。また、公文書では「さしずめ」とすべきなので、どっちを使うか迷うなら、これを機会に「さしずめ」表記に統一するのがいいでしょう。


【ビジネスでの使い方がわかる「例文」4選】

■1:「部長から、さしずめキミが適任だと言われた」

■2:「さしずめ予算は決済されそうだ」

■3:「A社のプランはさしずめあの程度か」

■4:「百点満点の出来ではなかったが、さしずめ企画は通るだろう」

1は「やはり」とも、暫定的な意味での「今のところ」とも取ることができてしまいます。2と4は「結局」という意味、3は「結局」とも「今のところ」とも取れますね。1と3のような、受け取り手によって解釈が異なるような使い方は“大人の語彙力”的にはあまりよろしくありません。自分が使う際には誤解がないよう言葉を足したり、別の言葉を使うのが得策です。


【「さしずめ」を言い換えると?「類語」

誤解されそうなシーンでの言い換えに使用したい、類語表現を確認しておきましょう。

■結局 ■いずれにしても ■つまるところ ■要するに ■つまり ■挙句 

■ひとまず ■とりあえず ■今のところ ■当面 ■当分


【「さしずめ」を「英語」ではどう言う?】

「今のところ」や「とりあえず」「当分」といった意味の「さしずめ」は[for the time being]があります。

・This will do for the time being.(当分はこれで間に合うだろう)

「結局」「やはり」といった意味の場合は[after all]で表すことができますね。

After all, he was smart.(結局、彼は賢かった)

・ I can't go with you after all.(やはりご一緒できません)

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「さしずめ」にはさまざまな意味がありました。言葉は相手とのコミュニケーションにとても重要です。迷ったり、本意が伝わりにくそうなシーンや相手のときには、言い換えをしたり、言葉を補ったりしてみてくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『日本国語大辞典』(小学館)/『心理学的に正しい! 人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社)/ 『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :