「体裁」は「外(他人)から見たときの様子」を表した言葉ですが、いくつかニュアンスの異なる意味をもっています。ビジネスシーンでは、「ざっくり仕様書書いといたから、悪いけど体裁整えてくれる?」のように使われますね。使われる状況を理解しやすい例文や言い換え表現、英語のフレーズまでさくっと解説します!

【目次】

「過度に気にしても…」とは思います。
「過度に気にしても…」とは思います。

【「体裁」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「体裁」は「ていさい」と読みます。「たいさい」ではありませんよ!

■意味

「体裁」には4つの意味があります。
1)外から見た感じ・様子。外見。外観。
2) 世間の人の目にうつる自分の格好。世間体。見栄。
3) それらしい形式、あるいはしっかりとした形式。
4) 相手を喜ばせるような振る舞いや口先だけの言葉。

 1〜4 まで、どれも「外(他人)から見たときの様子」という前提は共通しています。ビジネスシーンでは、多く3の意味で使われ、企画書や請求書など、書類の形式やレイアウトを指します。4は、顔つきや口先だけで他人の気に入るような振る舞いをすることで、多くは「お体裁」として使われますよ。


【「例文」で使い方をチェック!】

まずは上記1〜4の意味で使われた例文をご紹介します。

■1:「手の込んだ料理は作れないが、体裁よく盛りつけるのは得意だ」

■2:「見栄っ張りな母の判断基準は常に“体裁が悪くないかどうか”だ」

■3:「企画書として内容が甘いのは否めないが、体裁だけは整えて提出した」

■4:「気の小さい人ほど、体裁ばかりを飾りたがるものだ」

ほかにも「体裁を保つ」「体裁を取り繕う」などと使われます。

■5:「父にとっていちばんプライオリティが高いのは、体裁を保つことだ」

■6:「彼女はいつも体裁を取り繕うことばかりしていて、人生を無駄使いしている気がする」


【「類語」「言い換え」表現】

■1:「外見」「外観」の意味での言い換え

・見かけ

・見た目

・うわべ

■2:「世間体」や「見栄」の意味での言い換え

・体面
「体面」とは「人が世間に対してもっている誇りや面目。世間体」を意味します。

・面目
「世間や周囲に対する体面・立場・名誉。また、世間からの評価」を「面目」といいます。

・見栄え

■3:「形式」の意味での言い換え

・フォーマット

・レイアウト

■4:「 相手を喜ばせるような言動」の意味で

・お世辞


【「対義語」は?】

「外から見たときの様子」という意味での「体裁」の対義語はなんでしょう。

■実質

「実質」とは「実際に事物に備わっている内容や性質」のこと。「見た目はまったく異なるが、実質的には両者は同じと考えられる」のように副詞的用いられることもあります。

■正味

「外装の部分などを除いて実際の中身」を「正味」といいます。


【「英語表現」は?】

■1:「外見」「外観」の意味なら[appearance]

・Don't judge a person by his appearance.(見た目で人を判断するな)

■2:[appearance]は「世間体」や「見栄」の意味でもOK

・This is no time for worrying about appearances.(体裁なんて構っていられないときだ)

■3:「一定の形式」の意味なら[form]

the form of a dissertation(論文の体裁)

■3:「 相手を喜ばせるような言動」の意味で[glibly]

・Don't talk so glibly.(お体裁を言うのはよしなさい)

***

世間体を重んじる両親に育てられた人は、大人になっても「体裁」を気にする傾向にあるようです。「体裁を取り繕う」ことと「見栄を張る」のは、ほとんど意味が同じです。あまりポジティブなニュアンスでは使われない「体裁」という言葉ですが、「マイナスな部分は人に見せたくない」のも人情。日本には「武士は食わねど高楊枝」という美意識もありますし、「体裁」を整えているうち、いずれ「中身」が追いつくことがあるかもしれません。前向きに捉えましょう!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :