「戒め」は「いましめ」と読み、「過ちを犯さないように前もって注意すること」などの意味があります。日常的にはあまり使わないため、シリアスな意味合いの言葉であることは知っていても、正確な意味はあやふやになりがち。今回は「戒め」の正確な意味や使い方、英語表現を解説します。

【目次】

少々極端なふたつの意味で使われます。
少々極端なふたつの意味で使われます。

【「戒め」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「戒め」は「(いまし)め」と読みます。

■意味

「戒め」にはいくつかの意味がありますが、頻繁に使われているのは、「過ちを犯さないように、前もってする注意」「同じ過ちを犯さないようにする懲らしめ」のふたつです。「注意」と「懲らしめ」、両極端のようにも思える意味ですね。

「戒」は音読みで「カイ」。「戒(カイ)」は仏教用語で「在家や出家が過ちを防止するために守らなければならない禁制」を意味していました。「禁制」とは「法律や規則」のことです。在家した人や出家した人が「過ちのないように、前もってする注意」が「戒」であり、その「戒」を破ったときには「同じ過ちを犯さないようにする懲らしめ」が行われたのです。今でも仏教で守るべきことを「戒律(かいりつ)」といいます。


【「誡め」との違いは?】

「いましめ」の漢字表記は「戒め」のほか、「誡め」「警め」「縛め」があります。『明鏡国語辞典』によれば、「誡め」には「教え諭すこと」という意味はありますが、「懲らしめ」の意味はもちません。「警め」は「警戒」の意味で使われます。これらすべての意味をもつのが「戒め」であり、一般的に使われています。また、「いましめ」が「しばること。また、その縄」という意味で使われた場合は、「縛め」の表記となります。「誡め」は新表記で「戒」に書き換えられました。


【「例文」で使い方をチェック!】

■1:「今後への戒めとして、先生から頂いた言葉を胸に刻んだ」

■2:「その失敗は、浮ついた私を戒める、まさに警告だった」

「戒め」が「過ちのないように、前もってする注意」の意味で使われた例文です。

■3:「子どものころの想い出といえば、宿題を忘れた戒めに廊下に立たされたことだ」

この例文では「同じ過ちを犯さないようにする懲らしめ」の意味で「戒め」が使われています。


【「類語」「言い換え」表現】

■訓戒

「訓戒」の「訓」には「教え導く」という意味があります。「物事の是非、善悪などを教え諭して、戒めること」という意味の「訓戒」は、「戒め」の類語です。また「訓戒」は「会社、学校などの懲戒処罰の一種で、最も軽いもの」という意味ももち、多くは上司からの口頭での注意や指導にとどまりますが、まれに始末書や誓約書の提出が求められることもあるようです。

■諭す

「諭す」は「言い聞かせて、納得させる。教えて飲み込ませる」の意。「懲らしめる」という意味はありません。

■忠告

「忠告」の意味は「真心をこめて相手の欠点や過ちを戒め諭すこと」。「戒め」と似た意味ですが、「忠告」には「相手への気遣い」がありますが、「戒め」にはありません。

■自戒

「自戒」は「自分の言動を自分で戒め慎むこと」です。「おごり高ぶらないよう自戒する」のように使われます。


【「英語」にすると?】

意外かもしれませんが、「授業」や「稽古」といった意味の[lesson]には「教訓」という意味もあります。

・The failure taught me a good lesson.

・I learned a valuable lesson from that failure.

上記ふたつの例文はいずれも「その失敗は私にとってよい戒めとなった」という意味となります。

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「戒め」は仏教用語に由来する言葉ですが、映画のタイトルでも有名な『十戒』は、「旧約聖書で、神がモーゼに与えた十か条の教え」のことです。「戒め」は「事前の忠告」であり「過ちを二度と犯さないための罰」でもあります。いずれにせよ、厳かで心が引き締まるような重々しさを感じさせる言葉です。「戒め」を真摯に受け止められるか否かは、その人のその後の人生に大きな影響を与えそうです。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『明鏡国語辞典』(大修館書店) :