2023年秋冬の流行、大人のGo & Through

クラシカルやエレガンスなど、プレシャス世代にうれしいキーワードがモード界のトレンドに! でも、だからこそ、「前と同じ気分」で取り入れるのはNG。何を、どう取り入れるか、ケティ・ヨークとファッションプロが教えます。

座談会のメンバーは

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■N.Y.在住ファッション・エディター:ケティ・ヨークさん(イラスト中央)…イラストと辛口トークで人気の高いN.Y.在住のケティ。「大人はモードに振り回されるな」、と言いつつも、トレンドには目がないファッションヴィクティム。

■スタイリスト:押田比呂美さん(イラスト左)…『Precious』でもおなじみのベテランスタイリスト。レオパード柄をこよなく愛するマチュアなスタイルは右に出る者がいない。流行にも強いエレガンスの伝道師。

■『Precious』編集長:守屋美穂(イラスト右)…『Precious』の敏腕編集長。ヨーロッパ出張も数多く、真のセレブリティと触れる機会もしばしば。流行を自分らしく取り入れた辛口のスタイルは若手スタッフの憧れ。


秋冬トレンドを前にしておなじみ、おしゃれ番長たちの辛口トークが始まります!

ケティ「ハーイ! みなさん」
守屋「お久しぶりですケティさん。N.Y.からいつ日本へ?」
ケティ「この夏はタイでバカンスを過ごそうと、その途中に3日間だけ東京に寄ったわけ。でも、なんてこの街は蒸し暑いの?! これじゃ、ファーやカシミアコートの話なんて、できないわ(笑)」
押田「相変わらず辛口ね。久しぶりに3人で集まることができたんだから、今日はクーラーの効いた部屋で、秋の流行について、とことん話をしましょう!」
ケティ「比呂美、今日もヒョウ柄のヘッドアクセがお似合い、揺るぎないわっ」

「クラシック復活」を鵜呑みにしては危険

守屋「では、さっそく始めましょう。今シーズンは、原点回帰、クラシック復活!といわれていますが…」
押田「Y2Kやストリートファッションの勢いがようやく収まって、上質な素材や丁寧な服づくりが目立ったコレクションだったわね」
ケティ「私、スポーティなシャカシャカ系アイテムやスニーカーには、少々飽きてきたところだったの」
守屋「ようやく、大人を満足させる、ラグジュアリーなラインナップになってきましたね。買い物欲が止まらない(笑)」
ケティ「私が注目しているのは、“エルメス” や “ザ ロウ” の、これ見よがしじゃないラグジュアリーなスタイルね」
守屋「一見して、どこのブランドかわからないけれど、上質であることはひと目でわかる…。うっとりしますね」
ケティ「際立つ特徴はないベーシックなファッションだけれど、旬のシルエットを捉えて、アップデートされているから、決して古臭くない。すごくエレガントよね。N.Yでは最近、この手のおしゃれを楽しむ人が増えてきたみたい」
押田「イタリアブランドお得意の、レザーやファーの復活も見逃せないわ」
守屋「“フェンディ” や “ボッテガ・ヴェネタ” などのスーチングの提案にも、ワクワクしましたね。服そのものの完成度が高いことがわかります」
ケティ「でもね、『クラシックが復活した』からって、ワードローブにある服を引っ張り出して、若い頃のままに着ていたら “昔の人” になっちゃう。プレシャス世代の人には、ありがちな失敗ね」
押田「クラシックという本質は取り入れながら、選びはもちろん、着こなしや小物使いで、今年らしいアップデートが必要ということね」

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「ドルチェ&ガッパーナ」(C)DOLCE&GABBANA
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「エルメス」(C)Filippo Fior

(写真左)​「ドルチェ&ガッパーナ」怖く見えない優しい黒はこのブランドの得意分野

「黒が得意な、そしてテーラリングにも定評のあるこのブランドだから、オーバーサイズのジャケットも美しく見えるのね。インナーにクロップ丈のジレという提案もさすが」(押田)。
「胸元のVと、チラ見えのおなか、そしてヌーディな足元。計算された肌は美しい。まずは体を鍛えなきゃ」(ケティ)

(写真右)「エルメス」控えめなのにほかにはない圧倒的なオーラを放つ:

「しなやかなムートン、カシミア、スエード…極上の素材をふんだんに重ねた、“エルメス” にしかできない贅沢は私好み」(ケティ)。
「赤は流行色だけど “エルメス” の深い赤は別格」(押田)
「この秋注目、主張しすぎない “クワイエット・ラグジュアリー” の代表。膝丈のパンツスタイルも新しい」(守屋)。

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「CHANEL」(C)CHANEL
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「GUCCI」(C)Gucci

(写真左)「CHANEL」レディライクなツイードの高揚感はやっぱり王道:

「“シャネル” のコレクションは、いつもエレガンスの原点に立ち返らせてくれる。その象徴ともいうべきルック。落ち着いた色使いも大人ね」(押田)
「ハウンドトゥースのセットアップなんて、重厚な印象になりそうだけど、バミューダパンツの攻めの合わせ技で新鮮に。コートも合わせて、3点揃えるのがラグジュアリーね」(ケティ)

(写真右)「GUCCI」メロウなシャーベットカラーはシックな秋に着映えを約束:

「肌に溶け込む淡いクリームイエローに、ミントグリーンの先細シューズ。スイーツのような配色は枯れた色の多い秋冬だから、逆に新鮮に感じるわね。ボディにフィットするシルエットで、甘さを排除しているのもいいわ」(ケティ)
「膝丈タイトの復活を予感させるルック。セットアップなのに、小物使いで若々しい印象」(守屋)


しばらく忘れていたジャケットの美フォルム

ケティ「秋いちばんに、私が絶対に手に入れたいのはテーラードジャケット! ツイードやフランネルのようなメンズスーツに使っている上質素材で、ウエストもシェイプされた、仕立てのよさが伝わってくるジャケットがいいわね」
守屋「ウエストのくびれがポイントですね。ストンとしたボックスシルエットのジャケットはまだまだ主流だけれど、バランスを考えないと、おしゃれに着こなせないアイテムかもしれない」
ケティ「確かに…。去年、私が買ったものは、かなりオーバーサイズで、肩に羽織って、フォルムを無視して着ていたわ。もしかしたら、腕を通して着たことがないかもしれない!(笑)」
押田「だからよけいに、本来のフォルムの美しさに回帰した今年のジャケットに惹かれるのね」
ケティ「美しくジャケットを着る…しばらく忘れていた感覚だけれど、腕を通して、フロントのボタンも留めてエレガントに…ここは譲れないポイントだわ」

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ケティ・ヨークさん(N.Y.在住ファッション・エディター)

GO! 知的な大人に見せてくれる王道テーラード:「オーバーサイズすぎない美フォルムのジャケットは、この秋に私が狙っているいち推しアイテム。インは黒の艶のあるランジェリー、ボトムはとろみ素材の膝下丈スカートで、マチュアに着こなしたいわ。仕上げは細ベルトと先細のスリングバック靴。先端を華奢にするのがエレガントに魅せるコツね。バッグは『チビケリー』をコンサバ持ちで。もうクロスボディの気分じゃないわね」(ケティ)

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押田比呂美さん(スタイリスト)

GO!レディライクなミックスツイードのコート:「私がひと目惚れしたのは、クラシカルなミックスツイード。ぱっと周囲まで華やぐグリーンの複雑にメランジされたニュアンスカラーが、気分を盛り上げてくれそう。王道のジャケットよりも、膝丈くらいのコートを選んで、同色のフレアパンツを合わせて、スーツ感覚で着こなします。フレアパンツは脚長効果抜群だから、さらに太めヒールで、底上げ。深めに開いたインナーで襟元はすっきりさせつつ、ジュエリーを重ね付け」(押田)


パワーショルダーは丸い体を救ってくれる?

守屋「美フォルムといえば、ランウェイで多く観られたパワーショルダーはどうでしょう? 挑戦してみます?」
ケティ「極端すぎてウソでしょ? って思う服もあったけれど、デザイナーたちの意志は伝わってくるわね」
押田「若い頃に着ていて、一度見切ったものだから、まだ抵抗があるけれど…。本来肩パッドの入ったシルエットって、すごくきれい。年齢を重ねて体が丸くなってくると、この肩の直線的なラインが、とても助けてくれるのよ」
守屋「なるほど、顔も小さく見えるし、姿勢もぐんとよく見える。ジャケットじゃなくてブラウスだったら、私も思い切ってトライしてみたいですね」
ケティ「だんだん、目に慣れてくると意外にイケる? 今度は肩パッドのない服が、間が抜けて見えるかもね。肩をいからせる準備はしておきましょう(笑)」
守屋「ところで、ジャケットの着こなしに話を戻すと、かっちりまじめに着ると、私たちって、怖く見えませんか?」

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守屋美穂(本誌編集長)

GO! 旬のバランスを叶えるスペンサージャケット:「いつもはパンツ派の私ですが、この秋、体にフィットするフルレングススカートかワンピースに挑戦したい。素材はニットかとろみかな、ボリュームがあまりないしゅっとしたラインのものがイメージです。合わせるのは、スペンサージャケット! トップスをミニマルに見せるこのジャケットは、下をボリュームあるワイドパンツにしてもOK。少しラメ感のあるロングワンピースなら、食事会やパーティシーンにも!」(守屋)


怖く見せない…ためにセンシュアルなひと匙を!

ケティ「そこが問題! 年齢だけの問題じゃないかもしれないけど(笑)、堅すぎて隙がないのは確かにNG。頑張りすぎるのもOUT」
押田「今年だったら、ベルトを加えてバランスをとるのはどうかしら? 例えば “ルイ・ヴィトン” は、細いひものようなベルトをコートやジャケットの上から長く垂らしていたわね」
守屋「“着崩す” というのとは違う方向で、ジャケットに余裕が生まれますね。ぜひ、このテクニック、取り入れたい」
ケティ「カマーベルトのような太ベルトでウエスト位置を強調するのもいいわね。前を開けて着ても、ポイントになるわ。ただし、実際につけてみると、おなかが苦しそうで、邪魔かもしれない(笑)」
押田「素肌にジレを着たり、見えても大丈夫なレースのキャミソールを着たり…。今年はインナーで、ジャケットをエレガントに見せるのもいいですね」
守屋「それ素敵! センシュアルな味付けだったら、ボトムをロングスカートにするのは? 体につかず離れずのフィット感のあるものや、スリットの深いタイトにもギリギリ挑戦してみたいですね」

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「MIU MIU」Courtesy of Miu Miu

「MIU MIU」目を疑うような意外性がベーシックの未来を予感:

「えっ、ボトムはどうしたの? とうなったけれど、ベーシックを刷新するモード感はあっぱれね。ショートコートとパーカのレイヤードもお気に入り」(ケティ)
「真似はできないけれど、このグレー×キャメルベージュの配色は、いろいろな着こなしのヒントになりそうね」(守屋)


年齢を重ねた女性たちの肌は “見え隠れ” が限界ライン

ケティ「ところで、今年の流行のひとつ、“肌見せ” はどう思う?」 
守屋「クロップドトップスは、1年前はあり得ない! と思っていたけれど、だんだん麻痺してきて…。TPOを考えたうえですが、肌が見えるか見えないかのギリギリのクロップド丈は、実はすごく今年らしいバランスだと思います」
ケティ「動きによって肌が見えたり、見えなかったり…。ボリュームあるワイドパンツも、ハイウエストパンツも、フルレングスのロングタイトも、どんなボトムを合わせても、一気に着こなしが一新されるわね」
押田「私はシアーな素材の透け感で、さりげなく肌を意識させたいわ」
守屋「部分的にカットアウトされているものも! 背中があいていたり、サイドが透けているのも使えますね」
押田「肌見せは本来、エレガントなんだから、効果的に取り入れるのはGOね」
ケティ「そして、どうしても気になったのが、“ミュウミュウ” のランウェールック! ベーシックなコートとパーカーのレイヤードに、ボトムはショーツで思い切り脚を出していた!」
押田「ありえない! っていうコーディネートだけど、すごくかわいいですね」
ケティ「これって、ベーシックをベーシックのまんま着ちゃダメっていう、メッセージよね。クラシックを自分らしく工夫するのは楽しい作業。自分の感性を信じて、秋のおしゃれを存分に楽しみたいわ」

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ILLUSTRATION :
齊藤木綿子
EDIT :
兼信実加子、竹市莉子(HATSU)、喜多容子(Precious)