日本の接遇といえば「おもてなし」による細かな配慮。海外からの旅行客にも評判が高いといわれています。何かしら印象的なサービスを受けたことのある方も多いのではないでしょうか。

けれど、質の高い接遇とはどのようなことを指すのかは、素人ではなかなか分からないもの。高級ホテルに滞在するラグジュアリーな憩いの時間をよりいっそう素晴らしいものにするために、もう少し客観的に、冷静に、より質の高い「おもてなし」とは何かを見極めてみませんか?

そこで、日本を代表するホテルでの接客を指導する「おもてなし接遇講師」の直井みずほさんに、高級ホテルの「おもてなし」の質のポイントを教えていただきました。

高級ホテルの「おもてなし」のポイントとは?
高級ホテルの「おもてなし」のポイントとは?

高級ホテルの「おもてなし」の質を見極める5つのポイント

「高級ホテルには、日本が世界に誇る接遇、おもてなしがあります。高級ホテルのおもてなしには、Only、Option、Nature、Amazing、Shareの5つが必須条件です」

この5つのおもてなしが行き届いているかどうかを確認することで、高級ホテルを「見極める目」を持つことができそうです。5つそれぞれの詳しいおもてなしの内容を教えてもらいましょう。

高級ホテルのおもてなしには、Only、Option、Nature、Amazing、Shareの5つが必須条件
高級ホテルのおもてなしには、Only、Option、Nature、Amazing、Shareの5つが必須条件

■1:Only「あなただけ」

「Onlyは『あなただけのおもてなし』。高級ホテルには、手厚いサービスがあります。おもてなしは、相手を喜ばすこと。人はおもてなしを受けるとき『大切にしてもらいたい』『損をしたくない』『優越感を味わいたい』という心理を持ちます。接客において『大切にしてもらえる』『損をしない』を感じていただくのは当たり前ですので、高級ホテルではいかに優越感を感じていただくかが大切です。

Onlyは「あなただけのおもてなし」
Onlyは「あなただけのおもてなし」

特別感を感じさせるおもてなしには『ネームコール』があります。例えば、チェックインをしたときや館内でホテリエ(ホテルの支配人、もしくは従業員)とすれ違ったとき、客室からフロントへ電話をしたときなどに、ホテリエから『○○様』と名前を呼んでもらえます」

特別感を感じさせるおもてなしに「ネームコール」がある
特別感を感じさせるおもてなしに「ネームコール」がある

■2:Option「一歩踏み込んだ対応」

「高級ホテルのおもてなしには、標準仕様のおもてなしだけでなく、Optionがあります。『プラスアルファ』『選択権』『柔軟性』のようなものです。プラスアルファのおもてなしには、ホテリエによる挨拶の後のひと言があります。『おはようございます。今日は、一段と寒いですね』など。そしてあなたが『そうですね。ちょっと風邪気味で』と返せば、客室に戻るころには加湿器がそっと置かれているかもしれません。ひと言添えることで、顧客の心を察しているのです。一般的、表面的な対応から一歩踏み込んだ対応、それがOptionです」

「プラスアルファ」のおもてなしがOption
「プラスアルファ」のおもてなしがOption

■3:Nature「自然的なおもてなし」

「ホテルにあふれるおもてなし、ホスピタリティーの語源は、客人を『もてなす』ことです。おもてなしの原点には、人と人との触れ合いがあります。そして高級ホテルには、顧客との豊かな接触があります。ホテルは休息するところである以上、機械的でないNature(自然的)なおもてなし、心温まるおもてなしが欠かせません。高級ホテルに行けば、温もりを感じる笑顔に始まり、何か困ったときなどにはすぐに手を差し伸べてくれるおもてなしがあります。すぐ手を差し伸べられるのは、一人ひとりの顧客の状況、状態を観察しているからこそできる技です」

おもてなしの原点には、人と人との触れ合いがある
おもてなしの原点には、人と人との触れ合いがある

■4:Amazing「さすが!」

「Amazingは『さすがのおもてなし』のこと。私が海外来賓を迎える迎賓館、日本初の西洋式ホテルで学んだのは『基本ができてこそ、高品質の接遇ができる』という考え方でした。高級ホテルには接遇の基本の徹底があり、接遇を『ながら』で行いません。例えば、挨拶の基本。ホテリエは顧客とすれ違うときに挨拶をしますが、歩きながら挨拶やお辞儀をするのではなく、しっかり立ち止まり、顧客へ身体を向けて会釈をします。一つひとつの基本を忠実に丁寧に行う所作が、細部まで手抜きのないきめ細やかな、『さすが』と感じるおもてなしです」

■5:Share「情報の共有」

「最後は、Share。『情報共有のおもてなし』です。一流のホテルにはコンシェルジュがいて、さまざまな顧客のリクエストに応えています。コンシェルジュにはおすすめのレストランや文化施設はもちろん、その他にも限りなく幅広い情報までもが求められます。顧客から何か聞かれた際、柔軟かつ迅速に、親身な対応をするのはもちろん、顧客の要望を積極的に引き出す質問をします。また顧客から聞かれたこと以外を引き出す質問、『何か他にご不明な点はございませんでしょうか』と、もっとお手伝いさせていただくことがないか、という利他の心であふれたおもてなしがあります」

Shareは情報共有のおもてなし
Shareは情報共有のおもてなし

高級ホテルには、感嘆してしまったり、思わずほっと心が温まったりするような心に響くワンランク上のおもてなしがあるようです。次回、高級ホテルに訪れたときには、ぜひこの5つのポイントがあるかどうか探してみてはいかがでしょうか。

直井みずほさん
おもてなし接遇・マナー講師、おもてなしの専門家、NPO法人日本サービスマナー協会認定講師
(なおい みずほ)御三家ホテル、航空会社にて多くのVIPをおもてなし。現在、講師として11年になる。日本を代表するホテル、企業、病院を中心に活躍。OMOTENASHIの10カ条を定義。「もっとOMOTENASHIを面白く!」おもてなしをつなぐひろげる活動をしている。
おもてなしの専門家
NPO法人日本サービスマナー協会
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
EDIT&WRITING :
石原亜香利