「毎日がエブリデイ」という言葉を知っていますか? 主に若者世代が使うネットスラングですが、まじめに考えるほど、「毎日が毎日???」と、意味がわかりませんよね! 城山三郎さんの小説を思い出した人は…当たらずといえども遠からず。ヒントはここに隠れていました。今回は「毎日がエブリデイ」の意味や元ネタ、使い方を解説します。
【目次】
【「毎日がエブリデイ」の「元ネタ」は?「意味」など「基礎知識」】
■「意味」は?
「毎日がエブリデイ」の「エブリディ」は[everyday]。つまり直訳すると、「毎日が毎日」。さっぱり意味がわかりませんね! 現在、この言葉はふたつの意味で使われているようです。
・「何気ない日常」や「なんの変哲もない日々」
「毎日がエブリデイ」を直訳すると「毎日が毎日」となります。「毎日が毎日なのは当たり前」なことから、「何気ない日常」や「変哲もない日々」といった意味で使われるようになりました。また、ここから発展して「充実した毎日」や「毎日が楽しい」といった意味で使われることもあるようです。
・「ニート」や「無職」「ヒマ」
ネットの掲示板やSNSでは、「毎日がエブリデイ」は「ニート」や「無職」という意味で使われていることが多いようです。これは難易度が高いですね! ちょっと想像がつきません…。でも、「毎日がエブリデイ」が、なぜこうした意味をもつようになったのかは、次に説明する「元ネタ」を読めば、理解できますよ。
■「由来」は?「元ネタ」はあるの?
「毎日がエブリデイ」という言葉が使われるようになったのは1990年代、インターネットが普及して間もないころだと言われています。実は、当初「毎日がエブリデイ」は、「無職」「ニート」という意味でだけ使われていました。
明確な「由来」や「元ネタ」は不明ですが、有力な仮説として知られているのは、「『毎日が日曜日』というフレーズを誤訳したのでは?」というものです。本来であれば、「毎日が日曜日」の「日曜日」にあたる英訳は「ホリデイ[holiday]」や「ウィークエンド[weekend]」が正解。従って、「毎日が日曜日」と表現するのなら、「毎日がホリデイ」や「毎日がウィークエンド」が適切なフレーズのはずです。ところが、ネット掲示板に、誰かが誤訳した「毎日がエブリデイ」を投稿し、その間違い方がウケて拡散されたことで、「毎日がエブリデイ」というフレーズがそのまま、多くの人に使われるようになったのではないか?と言われているのです。
「毎日が日曜日」というフレーズが世に知られるようになったのは、1975(昭和50)年。「読売新聞」に連載された、城山三郎さんのベストセラー小説『毎日が日曜日』(新潮社)がきっかけです。この小説には、50代で窓際族となった商社マンの日常と悲哀が描かれ、「これからは毎日が日曜日だな(=毎日ヒマだな)」というセリフが小説のタイトルになっています。当時は週休二日制が一般的ではなかったので、「日曜日=休日」という意味合いが現在よりもはるかに強かったと考えられます。
「毎日がエブリデイ」は、「毎日が日曜日」の誤訳のまま拡散し、広く使われるようになりましたが、その意味だけは本来の「毎日が日曜日」の意味を踏襲し、「無職」や「ニート」のことを指していたのではないかといわれているのです。では、「毎日がエブリデイ」は「どんなとき」に使われるのでしょうか。具体的な使い方を例文でみていきましょう。
【「例文」でわかる「使い方」】
■「何気ない日常」や「何の変哲もない日々」という意味で
・「毎日がエブリデイすぎて刺激がないな」
・「毎日がエブリデイ。日々の暮らしを大切にしたい」
「何気ない日常」だから退屈、あるいは反対に「だからこそ丁寧に暮らそう」といった意味合いで使われます。ブログのタイトルなどにも見られますね。
・「仕事が楽しくて毎日がエブリデイ」
こちらは「毎日が充実している」という意味で「毎日がエブリデイ」を使った例文です。
■「ニート」や「無職」という意味で
・「来週映画行く時間ある?」「毎日がエブリデイだからいつでもいいよ」
・「毎日がエブリデイみたいな生活してるけど、卒業に単位足りてる?」
「毎日がエブリデイ」を自分自身について使うときには、「自虐ネタ」のニュアンスが含まれていることが多いですね。一方で、友人などに対して使う際は、「まるでニートみたいだね」「ヒマそうで羨ましい」といった皮肉や呆れの意味に受け取られることがありますので、仲のよい間柄限定での使用にするのが無難です。
【「類語」「言い換え」表現】
「毎日がエブリデイ」の言い換え表現をいくつか挙げてみましょう。
■何気ない日常
■何の変哲もない日々
■平凡な毎日
■当たり前の毎日
■毎日が楽しい
■平凡な日常が大切
■ニート
■無職
【毎日がエブリデイ」と「似た言葉」はほかに何がある?】
「毎日が毎日」のように、同じ意味の言葉を重ねた表現を「二重表現」あるいは「重言」(じゅうげん)といいます。「頭痛が痛い」「馬から落馬する」などは、明らかに避けたほうがいい「二重表現」ですが、ネットの世界では言葉を重ねて意味を強調することが目的で、あえて「二重表現」が用いられているようです。そのため、「毎日がエブリデイ」をはじめ、単に日本語を英語にしただけの、わざわざ言葉にする必要もないような言い回しがネットスラングとして定着しています。
■力こそパワー
「力こそパワー!」とは、1989年~90年に放送されたTVアニメ『新ビックリマン』(テレビ朝日系)に登場する、ブラックゼウスという人物の口癖です。「どんな手を使っても、最後は実力」といった意味で使われています。
■スタートの始まり
「スタート」は「はじまり」「開始」という意味ですが、4月になると「新しいスタートの始まり」といった言葉を目にしますね。
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「毎日がエブリデイ」は、1990年代にはすでに「ニート」や「無職」といった意味で使われていました。意外に古い言葉で驚いた人も多いのではないでしょうか。その後、拡散と変遷を経て、「何気ない日常」や「楽しい毎日」といった意味でも使われるようになりました。今回ご紹介した元ネタには、残念ながら確実な裏付けはありませんが、誤訳が誤訳のまま広く受け入れられ、時代とともに意味が変化していくネットスラングは、おもしろいものですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部