「乱筆乱文」は「下手な文字や文章」のこと。多くは自筆の手紙などをへりくだって表現するフレーズとして使われます。手紙を書く習慣がほとんど失われてしまった現代においては、この言葉を実際に使用する機会はあまりありませんが、“大人語彙力”としてぜひ、基礎知識を頭に入れておきたいもの。今回は「乱筆乱文」の詳しい意味や使い方のわかる例文、英語表現まで解説します。

【目次】

謙譲表現としても使われます。
謙譲表現としても使われます。

【「乱筆乱文」を正しく理解するための「基礎知識」】

■「らんひつらんぶん」ではありません!読み方

「乱筆乱文」は「らんぴつらんぶん」と読みます。「らんひつらんぶん」は誤読ですよ。

■意味

それでは、「乱筆乱文」を「乱筆」と「乱文」に分けて考えてみましょう。「乱筆」は「文字を乱雑に書くこと。また、その文字」を表し、手紙などで自分の筆跡を謙遜していう表現としても用いられます。「乱文」は「乱れて、整わない文章」のこと。「乱筆」同様、自分の手紙などの文章を謙遜する際に用いられます。「乱筆乱文」と合わせて用いることで、「乱雑な文字や整わない文章」、つまり「下手な文字や文章」を意味し、自分の書いた手紙などを謙遜する、謙譲表現としても使われます。

■「手紙が下手」という意味になる?  

誰が見ても下手で読みにくい字や、わかりにくい文章を詫びるために「乱筆乱文」が使われた際は、意味合いとして「手紙が下手」ということになりますが、実際には流麗な字と文章であっても、謙遜して使われます。

■「乱文乱筆」は間違い?

「乱筆乱文」は漢字4文字で作られた熟語、「四字熟語」ではありませんので、「乱文乱筆」でも間違いとは言えません。ただし、一般的に多く用いられているのは「乱筆乱文」です。


【「使い方」がわかる「例文」6選】

「乱筆乱文」は、対面の会話ではほとんど使われません。また、「乱筆」は手書きの文字を形容する言葉であることに加え、「乱文」も手紙などの文章に対して使われますので、PC(パソコン)で入力した文章やメールには使用しませんので注意してくださいね。つまり「乱筆乱文」は、現在のビジネスシーンにおいては使われる頻度の低いフレーズです。

ビジネスシーンで使うとすれば、手書きの御礼状などで、文頭、多くは文末で使われます。ただし、手書きであっても「あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。」といった定型文に終始する年賀状などでは使いません。

■手紙の文頭で、相手を気遣う言葉として

・拝啓 乱筆乱文にて失礼いたします。ご無沙汰しておりますが、お健やかにお過ごしでしょうか。
・謹んで一筆さし上げます。乱筆乱文にてご容赦くださいませ。○○さまにおかれましてはますますご健勝のことと存じます。

手紙の基本的な構成として、①前文②主文③末文④後付があります。前文冒頭に頭語(「こんにちは」にあたる、手紙独特の挨拶)である「拝啓」「前略」などがある場合、「乱筆乱文」のフレーズは頭語のあとに書くことになります。

■手紙の文末で、結びの言葉として

・まずは書状をもちましてご挨拶申し上げます。乱筆乱文にてご容赦くださいませ。敬具
・取り急ぎご報告させていただきます。乱筆乱文失礼いたしました。かしこ
・略儀ながら御礼申し上げます。乱筆乱文のほど、お詫び申し上げます。敬白
・まずはご挨拶まで。乱筆乱文お許しください。敬具

手紙の冒頭で乱筆乱文のフレーズを使わなかった場合、文末で結びの言葉として用いることができます。頭語「拝啓」「謹啓」「前略」などを用いた場合は、それに呼応する結語「敬具」「敬白」「草々」「かしこ」などで締めましょう。


【「類語」「言い換え」表現】

■「乱筆」の類語・言い換え表現

・悪筆
「悪筆(あくひつ)」は字が下手なことを意味する言葉で、謙遜のニュアンスはありません。反対語は「麗筆」です。

・殴り書き

・書き散らし

■「乱文」の類語・言い換え

・悪文
・拙文
・駄文

「乱文」「悪文」「拙文(せつぶん)」の中で、もっとも一般的なのが「悪文」。「拙文」は、自分の書いた文章をへりくだって言うときに、「乱文」は、自分の書いた手紙の文章をへりくだって言うときに用いられます。「悪文」の反対語は「名文」です。「駄文」も自分の文章をへりくだって言う場合に用いられますが、「下手でくだらない文章」というニュアンスが加わります。

■「乱筆乱文」の「口語表現」は?

・拙筆
「拙筆(せっぴつ)」とは、拙(つたな)い文字や文章を表します。また、自筆の文字や文章をへりくだっていう場合にも使います。対面の会話でも使える表現ですが、いきなり「せっぴつでお恥ずかしい限りです」と言われても、相手はピンとこないかもしれません。次にご紹介するような言葉のほうが、意図が伝わりやすいですね。

・「私は手紙を書くのが苦手で…」

・「稚拙な文章で恐縮ですが…」

・「昔から字が汚くて恥ずかしいのですが…」

・「わかりにくい文章で申し訳ありません」

・「とりとめのない文章で…」


【「英語」で言うと?】

謙譲表現としての「乱筆乱文」に相応する英語表現はありません。謙遜でなく、実際に「汚い文字」には[bad (poor) handwriting][ hasty scribble(走り書き)]が、「下手な文章」には[poor writing]があてはまります。

・His handwriting is very poor.(彼の書く字はひどい)

・I hope you will be able to read this hasty scribble.(乱筆ご判読ください)

・He writes poorly.(彼は悪文を書く)

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「乱筆乱文」は「下手な文字や文章」を表し、自筆の手紙をへりくだるフレーズとして使われます。一方で、謙譲表現ではありませんが、「乱筆乱文」と反対の意味をもつ言葉に「流麗」があります。「流麗」は、「詩文・音楽などがよどみがなく美しいさま。麗しい様子」を表す言葉で、文字そのものの美しさを表す際にも使えます。メールやSNSが一般化し、自筆の文字を見る機会が減った今だからこそ、さらっとペンを走らせた流麗な文章には、その人の知性や生きる姿勢が反映されているようで、はっとさせられますね。謙遜の気持ちで「乱筆乱文失礼いたします」…と書いてみたいものです!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) /『心が通じる 手紙の美しい言葉づかい ひとこと文例集』(池田書店) :