「卑しい」はもともと、「地位や身分が低い」ことを表す言葉でした。現在では主に「下品だ」「金品に関して貪欲だ」といった意味で使われており、相手を蔑(さげす)んだニュアンスが含まれています。あまり使いたくはない言葉ですが、今回は「卑しい」の正確な意味の他、使い方のわかる例文や類語、対義語をご紹介します。

【目次】

地位や身分の低さを表す言葉でした。
地位や身分の低さを表す言葉でした。

【「卑しい」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「卑しい」は「(いや)しい」と読みます。「(さも)しい」とも読みますが、今回とりあげるのは「いやしい」です。

■意味

『デジタル大辞泉』によれば、「卑しい」には複数の意味があります。

1)身分・社会的地位が低い。
2) 品位に欠けている。下品だ。
)貧しい。みすぼらしい。
4)飲食物や金銭に対して貪欲である。さもしい。
5)つたない。とるに足りない。

現在では、主に2や4の意味で、他者を軽蔑するようなニュアンスで使われることが多い言葉です。もともと「卑」という文字には「低い」「劣る」「見下げる」「へつらう」などの意味があり、連想される熟語も、「卑劣」「卑怯」「卑屈」など、ネガティブな意味合いの言葉が並びます。


【古語「卑し」の意味は?現代と違う!】

「卑し」もしくは「賤し」と記し、主として「身分が低い」ことを意味します。元々は「身分的・経済的な低さ」を表わし、人格とは関わりのない言葉でしたが、やがて貴賤とは直接関係のない、人格や美意識面での価値をも表わすようになりました。それにより、対象者のさまざまな特徴を「下品である」、「けちである」、「みすぼらしい」などと形容する言葉としても使われるようになりました。


【「使い方」がわかる「例文」3選】

■1:「貴様のような卑しい身で、うちの娘に近づくとは!」

「身分が低い」という意味で「卑しい」が使われるのは、時代劇か、せいぜい昭和初期を舞台にした映画やドラマくらいでしょうか。身分の違いが今よりも明確な時代であったからこその用法です。

■2:「自分は人に何も与えず、むやみに他人のものばかり欲しがる人は、品性が卑しいと思われても仕方がない」

■3:「彼に関するあらゆる批判や悪口の中でも、特に『金に卑しい』という評価は、とりわけ強烈な印象として残っている」


【「類語」「言い換え」表現】

■下品だ

■みすぼらしい

■浅ましい

「浅ましい」は「さもしい」「下劣だ」といった意味の言葉です。「みすぼらしい」のニュアンスも含まれます。「卑しい」との違いは、「浅ましい」には「内面の下品さ」という意味はあっても、「身分が低い」の意味は含んでいない点が大きく異なります。

■ゲスい

「ゲス(下種)」には「身分が卑しい」「下品」「下劣」「悪趣味」「あくどい」などの意味があり、これが形容詞化されて拡がった俗語が、「ゲスい」です。

■下賎

「下賎」は「社会的な地位や身分が低い」ことを表す言葉ですが、現在ではあまり使用されません。同様の言葉に「卑賤(ひせん)」もあります。

■意地汚い

「意地汚い」とは、特に飲食物や金銭、品物などに対して、人前でも欲望を隠そうとせず、慎みがない様子を表します。


【「対義語」は?】

■尊い

■貴い

■高貴だ

上記3つの言葉には「優れて価値があり、敬うべき様子」という意味があります。使い分けとしては、「尊い」は、尊敬する気持ちを起こさせるような様子に対して。「貴い」は、価値や身分が高く、貴重な様子に対して。また「高貴」は、身分、位などのほか、人柄や行為の内容が特に俗でなく気高い場合にも用い、崇高なの意を含んだうえで使用されます。

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「卑しい」という評価は、その人の全人格を否定するようなインパクトをもっています。理不尽にも自分がそう評価されたらもちろんショックですし、誰かに対しても、決して安易に使っていい言葉ではありません。取り扱いには十分注意していただきたい言葉です。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :